LOSTAGE ‐‐Review‐‐

奈良県出身の3人組ロックバンド(2009年末までは4人編成として活動)。オルタナティヴの洗礼を受けたカミソリのような鋭さをもった轟音サウンドと文学的な詩で描く世界は蒼い衝撃となって聴き手に襲い掛かる。

レビュー作品

> CONTEXT > LOSTAGE > GO > 脳にはビート 眠りには愛を > DRAMA > PLAY WITH ISOLATION > P.S.I miss you


CONTEXT

CONTEXT(2011)

   奈良のオルタナティヴ・ロックトリオのミニアルバム。新たに立ち上げた自主レーベルからのリリースで録音は地元のライヴハウス、奈良ネバーランドに機材を持ち込んで作り上げた意欲十分な作品だ。気持ち的にも吹っ切れたのを感じさせる鋭利さと殺傷力が備わった一枚である。感触として初期の頃に近くて、ざらついた感触と退廃的な雰囲気が強いので原点回帰と思った人も多いかも。初期の作品にも通ずるだろう重い切れ味を持つリフが炸裂し、タイトなリズム隊と共に尖ったグルーヴを形成。そこに喜怒哀楽の感情が生々しく乗る五味兄の歌は、時に刺さるように、時に包み込むように重なっていく。だけど、ポジティヴに視界が開けて行くような風通しの良さ、それに年を重ねてきた漢たちが生む温かい優しさみたいなのも肌で感じ取れると思う。また6曲入りのミニアルバムというフォーマットながら、これまで積み重ねてきた諸要素が強く結晶化された印象を強く受ける。研ぎ澄まされた鋭さと重厚さがサウンドに完璧に反映されたキラーチューン#1「Hell」、焦燥感を叩きつける唄と演奏が凄まじい#2「12」、ダブっぽいアプローチを見せる新境地の#3「楽園」、等身大のままでこれまで以上にポジティヴで優しい音色を鳴らす#6「NEVERLAND」にいたるまで内容は非常に凝縮されている。鋭いオルタナティヴ・ロックやサイケデリックな嵐による殺傷力と中毒性、それに情緒的なメロウさによる吸引力は幾多の困難に打ち勝って来たからこその結果だ。


LOSTAGE(DVD付)

LOSTAGE(2010)

   昨年末をもって2人目のギタリストが脱退したことで、トリオ編成へ移行し、バンド表記も大文字に改め、さらにはレコード会社も移籍、環境を大きく変化させることで完全に決意を新たにした約1年4ヶ月ぶりとなる4thアルバム。

 これは、聴けば聴くほどにLOSTAGEの芯の強さ、根幹の丈夫さを感じさせてくれる作品であると思う。本作を制作するにあたって、今までの”lostage”を全て捨て去るぐらいの外的変化をし、相当な決意をもって臨んだことを伺わせるが、そのリスクをも恐れぬ挑戦的な姿勢が見事なまでに形になっている。3人となった、”LOSTAGE”となったサウンドはこれまで通りのオルタナティヴ・ロックの色合いが強いし、少し古色めいたハードロックの手触りやUKロックの差し色もそのまま健在。だが、人数の減少がそのまま音数の減りにつながっているものの、シンプルかつ強靭に練り上げられたグルーヴは鋭く尖っていて悶えるような威力をもって迫り来る。かつてのような大鉈でぶったぎるような鋭い切れ味が身を切り、殺伐とした空気と張り詰めた緊張感が神経をじわりと侵食する。1st辺りにも通ずる初期衝動がガシガシと骨肉に響く一方で、寂寥感がこみ上げるメロディがまたこれまでには無いぐらい虚無感を浮かび上がらせており、荒涼とした風景に陰鬱な雨が降り注いでいるようなイメージすら頭の中に瞬く。ストイックな激しさの中で感傷的なムードにも流される、そんな効用がこの作品にはあると思う。これまでよりも痛いほど感情を露にした五味兄のVoも起伏を大きなものとしている印象で、喜怒哀楽が顕著に楽曲へと反映されている。

 鍛え上げた重厚なアンサンブルが鋼のグルーヴを叩き出す#1~#2のスタートに、鈍色のオルタナティヴを風通しよいロックとして聴かせる#3、サックスを導入してモダンなムードを強めた#4、70年代辺りのサイケデリック・ロックのような佇まいの#7、8ottoのヴォーカルと共に渋くモダンに染め上げた#8、寂寥感が染み渡る中で前作のようにオープンに開けたポップネスが染みる#6や#9、どれもが決意と覚悟を持って鳴らされていることがわかる。三人の悲しみや哀愁が全体に滲んでいるのだが、いかなる困難でも乗り越えるたくましさと勇気がまた感動を誘う。悲劇のストーリーを力強く乗り越え、三人で築いた渾身の再出発作。


GO

GO(2009)

   フルアルバムとしては1年半ぶりとなる3rdアルバム。新体制となった半年前のミニアルバム「脳にはビート 眠りには愛を」は新たな方向性の模索・実験が如実に感じ取れる内容であったが、本作ではそれをさらに昇華。バンドしての裾が広がり、閉塞的な世界から飛び出して自由を謳歌している、そんなイメージが浮かぶ。王道といえるツェッペリン風のハードロックを随所に轟かせ、前作以上に叙情性を加味した美しいメロディを鳴らしている。それは言うならばバンドとしての表情が豊かになったともいえるだろう。違う表現を使うならば程よいスリム化が図られたといってもいいかもしれない。ただ当然のことながら、変質的に絡み合うツインギターの妙や陰鬱でダークな詩情、グランジ・オルタナティヴな感性は健在。いつ爆発するかわからないキナ臭さはギリギリのラインで残っている。

 今までのような火花を散らす音の炸裂感やビリビリとした刺激は薄いが、本作はバンドの芳醇な音楽性・懐の深さを示す内容になっているといえるだろう。前述したようにハードロック魂が炸裂して鼓動が高まる#1「SF」、中盤のユニゾンリフがカオスな#2「サーカス」は迫力満点であるし、UK風のほのかな柔らかさを覚える#3「SUNDAY」、ユニークな展開をみせる#5「あめんぼ」、シャッフルを効かせたパーティチューン#7「路地裏」といった挑戦も機能的。その中でも前作の「母乳」以上に大人の哀愁を漂わせる#8「SURRENDER」の美しさが際立っている。これまで以上にメリハリがついたことで、ドラマティックなカタルシスと昂揚感を誘発する点は惹かれる部分が多い。

 相手を刺し違えてでも倒すかのような殺気が収斂と爆発を繰り返した1st「PLAY WITH ISOLATION」の頃の途方も無いソリッドな凶暴性・身が軋むような緊迫感をもう一度味わってみたいことに変わりはない。だが、新たな方向性を磨き上げ、いい意味でのラフさが機能している本作もファンの間ではきっと受け入れられることだろう。個人的にもこれはこれで結構好き。初回盤付属のライブDVDも10曲43分のヴォリューム満点の内容で非常に満足度の高いものだった。


脳にはビート 眠りには愛を

脳にはビート 眠りには愛を(2008)

   本作からギタリストが交代して新体制となった6曲入りの2ndミニアルバム。それが大きく影響しているのか、かなりこれまでとは毛色の違う作品に仕上がっている。マッシヴなグルーヴ感が酩酊を助長する#1「AMPLIFIED TEENAGE STRESSES AND STRAINS」はまだ理解の範疇にあるのだが、次の#2「母乳」では風通しの良いメロディが爽やかに流れ、バンドの持つポップな魅力を全面に押し出しているのが驚き(この曲かなり好きですけど)。捻くれたサウンド構築をする彼等からするとずいぶんと真っ直ぐな印象を受ける#5「PURE HONEY」も新鮮で、従来にない開放感が漂っている。バンドとしての岐路に立ったということで、これまでを見つめなおし、新たな方向性を模索・実験に当てている作品だというのがよくわかる内容だ。その中でも前作の影響下にあるだろう#3「DIG」や#6「脳にはビート 眠りには愛を」が全身の毛が逆立つような狂気の破片を散りばめてくれているし、#4「テレピン、叫ぶ」では中盤でドラムソロを取り入れるなど、やはり今時のギターロックとは違ったカラーを持っていることを印象付けてくれる。やさぐれた男の色気や艶がサウンドの端々から感じられる無骨さも実にらしい。#2、#4、#6ではマスドレなつこさんをコーラスとして招くなどの試みもあり、そういった事も含めてバンドとしての新たな扉を開け、一歩踏み出した作品といえるだろう。


DRAMA

DRAMA(2007)

   メジャーデビュー盤となる2ndフルアルバム。聴いてみた印象は、サイケデリックな妖気を浴び、ひたすら退廃的な闇の中へとズブズブと沈んでいくかのような殺伐としたオルタナティヴ・ロックといったところか。妖艶に絡み合いながらどす黒い煙幕で覆っていく2本のギター、激しくうねるリズム隊、妙にナルシスティックな甲高いヴォーカル。それらが複雑に入り組み、激情と焦燥を増していって凄まじい轟音の嵐へと発展していく。その轟音の前に神経をぶった切られたかと思うと、端々では癖のある毒素をしのばせたり、感傷的でドラマティックなメロディを挟んだり、やるせない感情を鬱々と叫んだりと過敏に感情を逆撫でする刺激も満載。その辺りもまた”彼等にしか出せない色”をもの濃く感じられる大きなアピールポイントとなっていると思う。闇夜を焦がす爆撃のような激しい音にカタルシスを感じたり、肉感的な強烈なグルーヴ感に堕ちることも可能だ。プログレライクな味を感じさせるところも惹かれている要因になるかもしれない。スティーヴ・アルビニが録音したかのようなざらついた質感もまた耳を引く。前作よりも男らしさとナイーヴな色気が出ているヴォーカルの成長もよろし。どす黒く渦巻く轟音と共に闇底へと堕ちていく#1「RED」、グランジ臭いギターと甲高くやるせない歌声がひりひりと胸に響く#2「こどもたち」辺りは非常に気に入ってます。


PLAY WITH ISOLATION

PLAY WITH ISOLATION(2006)

   奈良出身の4人組lostageが自身のレーベルqoop musicよりリリースしたデビュー作。#1「Television City」からして挨拶代わりなんて気安い言葉で表現するのが恥ずかしいぐらいの衝撃。ささくれだった刺々しいリフに獰猛なリズムがガシガシと絡み、特徴的なハイトーンヴォーカルが狂熱をさらに高めていく様に圧倒される。さらに#2「人間ロボット」でも感傷を掻き立てながら鋭く切り込んでくる姿勢にやられるという始末。冒頭2曲にして早くも降参必至の内容になっていて脳天を揺さぶられ、ただならぬ興奮に陥った一枚。

 グランジ、パンク、ポストハードコア、オルタナティヴ等々を縦横無尽に横断して極限まで研ぎ澄ませたサウンドは再び言うが衝撃的である。不穏なグルーヴは意識を追い込み、封じ込められた狂気がどこまでも渦を巻いて覚醒を促し、飲み込む。それにどことないニヒリズムと強烈な殺伐感も凄まじい。じりじりと音圧を高めていく轟音を放ち、鋭く尖れた音の太刀によって真っ二つに切り落とされるかのような感覚は中毒性抜群だ。#8「○か×か」なんてもはや聴いた瞬間に叩き上げた剛性に完璧にやられ、横っ腹を抉られた1曲。しかしながら、どことなくその激情を突き放すかのような平熱も持ち合わせ、安息的ムードで殺伐とした空気を切り取るかのように演出したりする場面も。また、洋楽志向の強いサウンドではあるが、甘美なノイズや叙情味溢れるメロディを随所に織り交ぜており、日本人の波長に合う情緒をしっとり染み込ませている辺りも抜け目ない。その狡猾ともいえる構成力、ダイナミックなアンサンブルは痛快。脳味噌をぶった切るような衝撃力は何度も聴けば聴くほど高まる、そんな魅力を兼ね備えた作品に仕上がっている。フルアルバム1枚目にして申し分の無い内容で、これ以上無く心身共にもっていかれました。


psimissyou

P.S.I miss you(2004)

   自身のレーベルqoop musicより発売された5曲入り1stミニアルバム。さすがに最初に発表する作品ということでエネルギーに満ち溢れている。まさにそれは蒼い初期衝動そのもの。グランジの臭みや毒素を漂わせていたり、オルタナの退廃さであったり、エモの激情的な感じであったりの旨味を取り入れて自分達のものへとしっかりと昇華しており、確かなオリジナリティを感じさせる。狂気を衝突させ、妙な艶を出しながら絡むツインギターは耳を強く刺激し、そこに乗ってくる太いリズムとハイトーンのヴォーカルのアンマッチな感じがソリッドな暴力性を生んでいて、随分と猛々しい。それに和の色めきを豪快な爆音の中にひっそりと取り入れている所もまた耳を引く。退廃的なリフを主体にキナ臭い不協和音と不穏な轟音グルーヴを生み出していく#1「Dailynews」、ハードロックっぽいエッジの立った演奏が印象的な#4「Mindjive」に、代表曲として君臨する#5「手紙」といった曲が並ぶ本作は、近寄ったものをしっかりと仕留める威力は備わっている作品といえるだろう。初期衝動の裏にある麻薬めいた中毒作用もまた惹かれる魅力の一つとして存在しているのも頼もしい。

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