M83 ‐‐Review‐‐

2001年のにデビューして以来、世界をセンチメンタルに甘く包み込むフランス人のアンソニー・ゴンザレスによるソロ・プロジェクト。エレクトロ/シューゲイザーの領域からエレポップを柔軟に取り入れ、幻想的なポップ・サウンドを鳴らして人々を魅了し続けている。


Hurry Up We're Dreaming

Hurry Up, We’re Dreaming(2011)

   高樹千佳子さんの2011年ベストアルバム第1位を始め、各誌で軒並み高い評価を獲得したM83の3年ぶりとなる6枚目。ギタリストに元メディシンのブラッド・レイナー、ゾーラ・ジーザスがゲスト・ヴォーカルに参加してこの集大成ともいえる2枚組全22曲の大作を彩っている。

 前作『Saturdays=Youth』も良かったし、09年のフジロックのパフォーマンスも記憶に残っているが、代名詞ともいえるエレクトロ・シューゲイザーと呼ばれる音響に、80年代エレポップの要素や柔らかな幻想性がさらに強化されて、頬がゆるむ甘酸っぱさとセンチメンタリズムが増した。霧のような深いリバーヴにきららかなメロディが瞬き、力強さも感じさせる様になったアンソニーのヴォーカルが琴線に触れ、壮大なビートが駆け巡る。青春の想い出が詰められたかのような淡い淡い前作を一回りも二回りも大きくしたのを実感する内容だ。#1「intro」から彼の代名詞ともいえるシューゲ/エレクトロニカ風の音像にゾーラ・ジーザスが声で光を灯していく。そして、世界をときめかせた#2「Midnight City」では力強いビートが躍動しつつも、キャッチーなシンセがエレガントで煌びやかに彩る。最後にはサックスが加わって伸びやかに音をどこまでも外へ外へと押し広げていく。

 そこから彼の夢物語はますますメランコリックさと壮大さを帯び、ユニークなシンセのループに子どものサンプリング・ヴォイスが重なる#6、疾走感のあるドリーム・ポップが何とも心地よい#13、しっとりとした曲調ながら有機的なコーラスワークが色味と温かみを加える#16と佳曲を挟んで突き進み、ラストの#22「outro」までトータルでしっかりと聴かせて、感動的に完結する。まあ、時にやり過ぎ感を覚える事もあるんだけど、緩急をつけた練り込まれた流れと構成、それにキャッチーさを貫いている点がとても聴きやすい。それ故にやっぱりみながいうように2枚組で22曲もあるけどトータリティが高い。宇宙まで拡がっていくようなファンタジックな本作はPitchforkでも9.1点がついてたけど、熟練した彼だからこそこんなに魅惑的なものがつくれんだなと実感する作品だ。

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