Mastodon ‐‐Review‐‐

元TODAY IS THE DAYのメンバーを中心に2000年に始動したアメリカの4人組カオティック・メタル・プログレバンド。2004年発表の「リヴァイアサン」で一気に飛躍を遂げる。2006年メジャー契約を果たし「ブラッドマウンテン」をリリース。そしてLOUD PARK06で再来日を果たす。起伏の激しいその音楽性はプログレッシブ・ロックにも通ずるものがあり、そちらの方面の方からの支持も多い。

レビュー作品

> Once More Round The Sun > The Hunter > Live at the Aragon > Crack the Skye > Blood Mountain > Leviathan > Remission


 

Once More 'round the Sun

Once More Round the Sun(2014)

 

 こんなふざけたジャケットをおそらく大真面目に「オレたちのセンスやべー」と自画自賛してそうなバンド、Mastodonの約2年9ヶ月ぶりとなる通算6枚目。全米初登場10位を記録する快調な売上とは裏腹に、”俺達の新世代メタル”と看板背負わされた?感のある、ややポップ&売れ線に走ったとして割りと不評だったのが前作。今作はどうかといえば、かつてを思わせるような剛球ロックンロールに回帰しており、漢どもよ拳を挙げろ!と言いたげな勇壮かつ骨太な作風になっている。「このジャケットに負けない音楽をつくろう」、これが間違いなく本作のテーマだろう(多分)。ヘヴィロックとロックンロールのつばぜり合いに、プログレやサイケが侵食して轟くクセの強い重厚なサウンド。歌メロもやけに饒舌な感じであり、#2「The Motherload」におけるナイーヴなヴォーカリゼーションには少しばかり驚かされた。

 2nd「Leviathan」や3rd「Blood Mountain」期のような荒くれた勢いや衝動的な感触はそこまで感じ無い。けれども、年取って落ち着いてきた分は、いぶし銀の哀愁で魅せる術も身につけてきているように思える。特に#6「Asleep In The Deep」はその叙情性もさることながら、サイケかつスペーシーなアプローチに拍手。プログレッシヴ・ジェットコースターなる形容をしたくなる#7「Feast Your Eyes」や#10「Helloween」も個人的には好み。テクニカルで饒舌、そしてダイナミックな揺さぶり。これこそ彼等の持ち味だろう。

 NeurosisのScott Kellyとかいう怪人オッサンが参加したラスト曲#11「Diamond In The Witch House」が、Mastosis or Neurodon的なフュージョン・剛力粘着ドゥーム・メタルで重厚壮大な締めくくり。ジャケのセンスに関しては大いに疑うのだが、Mastodonはこうでなくっちゃと思える着地点にまで持っていってるのでファンはひとまず安心だろう。時代のキーマンとして彼等には究極を目指してもらい、これからも最前線で活躍し続けてもらいたいものだ。

 


 

Hunter

The Hunter(2011)

   数々のメディアで話題をさらった4thアルバム『Crack The Skye』に続く2年半ぶりとなる5thフルアルバム。Maroon 5やエミネムを手掛けたことでも知られるマイク・エリゾンドをプロデューサーに起用し、「伝統を破壊し続ける」コンセプトのもとで自らを磨き続けている事を証明する作品だ。さらに本作はビルボードTOP10入りのセールスを記録し、もはやアメリカを代表するバンドという評価もふさわしくなってきた。

 内容としては散々言われている通りで、卓越したテクニックとプログレッシヴな構成力の基でコンセプチュアルで独創的世界を切り拓いた前作『Crack The Skye』の路線では無くて、3rd『Blood Mountain』のようなバラエティさを押し出したもの。これも前作での破格の完成度と成功による余裕からなのか、それがさらに洗練という言葉のもとで、サウンド全体が軟化してコンパクトな曲尺も手伝って聴きやすいと言えるレベルにまで落とし込まれている。獰猛なロックンロールを猛々しく掻き鳴らしながらもそのヘヴィネスにはまた一段上の叙情性が注ぎ込まれ、緩急・起伏に富んだ展開と共に本作を支えている。テクニカルな演奏を下地にドライヴしていく#3や#5辺りでのあまりにもキャッチー過ぎる歌メロは、彼等の前進を物語っているにも思う。”自然体で臨んだ、新しい試みに挑戦した”という彼等自身の言葉も残るのだが、その新しいサウンドの中で随所に染みわたるMastodon節ともいえるフレーズの数々にはニヤりとしてしまう人も多いことだろう。タイトルトラックの#7では彼等らしい深淵たる世界観を構築している。

 ただ、これがMastodonに求めるものかといえば違うということもあって個人的にはあまりしっくりきていない。さすがにMatodonらしく全体的に85点レベルの高い精度を誇る楽曲を取りそろえてきているし、前述したように彼等らしい情感が貫かれているんだけど、今一歩のところで収まっている印象。しかし、自らの強みを効果的に盛り込みながら育んだこの変化はあり。ここからさらなる勇ましく雄大でプログレッシヴな深化をさらに期待したいところ。


 

Live at the Aragon

Live at the Aragon(2011)

   USのメタル界隈で押しも押されぬ大きな存在にのし上ったマストドンの初となるライヴ作品(CDとDVDは同内容を収録)。本作は、2009年10月17日のシカゴの由緒正しき“Aragon Ballroom”でのライヴを収録しており、目玉は世界を揺るがした名作『Crack the Skye』の完全再現にあるといってもいいだろう。

 粗暴でスリリングなテクニカル・メタルから懐古的70’sプログレへと逆進・親和することで、己の知名度をエクストリームメタル・フィールド以上の領域に広げる事に成功したのはみなさんもご存知の事だろう。本ライヴ盤はそれこそ大きな支持を得た事に対しての証明であり、決定打。複雑な構成で成り立っている楽曲をとてつもない緊張感と安定感のある演奏で持って再現していく様が単純に凄い。ヘヴィに波打ち、切れ味あるフレーズから叙情的な色合いまで自在に操るギターはさすがだし、ベースも巧者っぷりを発揮。そして、このどっしりとした安定感を生むドラミングの素晴らしさ、マストドンのバンドとしての演奏力の高さが窺い知れる。勇ましい歌&コーラスワークは4人それぞれが担当していて、不安定になる部分もあるのだが(もともと余り歌が上手くないというのもあるが)、楽器との連携面も含めると十分に許容範囲だ。

 選曲は前述の通りに『Crack The Skye』が大半をしめているのだが、あの現代的なプログレッシヴ・ロックを印象付けた感のある名作を見事に再現しきっていて、ファンならずとも必見といいたくなる。ライヴではステージのバックで映像も使っているらしく、作品の持つファンタジーを視覚を通しても楽しめる内容(むしろ、メンバーの演奏する姿を追うだけでも満足するけど)。完全再現後の後半では1st~3rdまでから各1,2曲ずつ収録しているのだが、強烈なスクリーム&アグレッシヴな演奏が乱れ飛ぶのでこちらの方が血が騒ぐ確率は高い。そして、ラストは我等がメルヴィンズのカヴァー『The Bit』という締めくくり(結構、忠実なカヴァー)。本家メルヴィンズでもラストを締めくくる事が多い、妖しくも激ヘヴィなこの曲はヘヴィロックのゴッドファーザー・メルヴィンズへの敬意に溢れている。

 映像を見ていて思ったのは、当然ながら生で体感したいということ。09年のサマソニで来日して以降はご無沙汰となっているが、今年リリースされると噂になっている新作発表後の来日はあるのか?期待して待ちたい所である。


 

Crack the Skye

Crack the Skye(2009)

   2年半ぶりとなる4thフルアルバム。初聴のインパクトからすれば、全作品の中で最も薄いといえるかもしれない、まず最初にそんな事を思ってしまった作品だ。

 その理由として彼等の持つ野蛮な殺気と獣性が本作においてはかなり控えめだったから。「The Wolf Is Loose」や「Blood And Thunder」に象徴されるようなテクニカルな磁場と激情が絡み合いから成る破壊への激走は鳴りを潜め、代わりに10分以上の大曲を2曲もつぎ込むなどの造り込んだ構築美学と理知性を曝け出して勝負に出ている。激情に満ちたスクリームは劇的な歌へ、また猛烈なドライヴ感は大海を想起させる壮大なうねりへ、そして瞬間瞬間の破壊から腰をすえた物語の組み立てへと変化を遂げ、そこにこれまで以上のメランコリーを滴らせたサウンドが本作においては象徴的だ。瞬発力が落ちたため、目まぐるしいまでのスリリングによる躍動と興奮は味わえないが、その中でハードコアのキメやエッジを最低限残し、据わりのあるメロディで厳かな雰囲気を助長していく。そして、起伏と落差を大きくした展開美と明確な聴かせどころで深層に働きかけて覚醒を促していく辺りはさすがである。

 端的に言えば、メジャー感が増したということなのだが、カオティック・プログレ・ハードコアからクリムゾン辺りを思わせる古のプログレへと変貌しており、70’sへの懐古的なアプローチでの攻めやドラマティックな景色を眼前に運んでくる部分も含めて、やはり密度の濃い作品であるかと思う。象徴的な#4、#7の10分越え2曲がやはり白眉であるが、幻想を纏いながら猛烈なドライヴ感をかます#3もかっこいい。いつも通りのやかましい性急感と汗臭さが感じられないのは寂しいのだが、これはこれで全然アリかと。個人的には前作や前々作のほうが好きだけれども、新たなリスナーを開拓する確かな説得力が備わっている。


 

Blood Mountain

Blood Mountain(2006)

   いつもどおりに2年ぶりとなる3rdアルバムは待望のメジャーデビュー作となった。とはいえ、やってることは相も変わらず。変拍子の雨霰に激走と跳躍を繰り返してスリリングに暴れまわるプログレ・ハードコア。変則的なリズムを主体とした超絶ドラミングが勢いを加速させ、多彩な音色を響かせるリフが独自の世界観を抽出していく。基本的には前作の延長線上と考えても差し支えないが、複雑に入り組んだ曲の構築美がさらに推し進められた格好。一寸先すら見えない怒涛の展開が次々と鼓膜を襲う様は痛快、痛快。それでいて体に伝わってくる衝動はこねくり回しているとは思えないぐらいにストレートなものなのに驚かされる。衝動性はこれまでよりも減退しているものの、クセになりそうなメロディや効かせまくったフックなど嵌ってしまう要素は多い。また、#7辺りで顕著だが以前よりも歌への比重度がアップしているところも味噌だ。メジャーへの迎合がこういった場面で見受けられる。そういった所も含めて以前にも増して芳醇な音楽性を示した作品といえるだろう。

 血管が浮き上がるほど体が燃え上がる爆走ロックンロール#1「Wolf Is Loose」、#2「Crystal Skull」のかっこよさには痺れるし、70’sプログレを現代的にアップデートしたような世界観を叩き付ける#3、複雑精微な展開とキレのあるグルーヴで頭のネジを飛ばすインスト#6の魅力もまた格別。後半に進むにつれて不穏でダークな湿り気を増していく辺りも独特の世界観をより濃いものにしており、前半の猛烈ロックンロールな姿勢との対比もまたおもしろく感じられる。個人的にはやっぱりマストドンといえば、出会いともなった本作が一番好きです。


 

Leviathan

Leviathan(2004)

   前作より約2年で発表されたマストドンの2ndアルバム。『血と雷』という単純な和訳で済ませていいのかわからないが重厚なビートとリフによって雷鳴の居合い抜きを実演する#1「Blood And Thunder」で早くも全身に電撃が駆け抜ける。この苛烈なアンサンブルからは禍々しい混沌の火照りに、全身がビクつく猛烈な衝撃が生み出され、聴き手の鼓膜を斜めに切り裂く。そして、秀でたテクニックを駆使しての予測不可能な展開と目まぐるしいまでの変則リズムで大波小波を変幻自在に操ってしまう。聴いた感じだとこのように設計と構築が前作よりも遥かにしっかりしている印象だ。しかしながら、殺伐とした味付けとカオティックな炸裂感はこれまで同様に凄まじく、そこに時折ゾクッとするような妖しげなフレーズもしのばせて不穏さを助長している辺りに、世界観の造り込み具合がより深まっていることを印象付けている。めくるめく複雑な展開が約13分にも及ぶ#9「Hearts Alive」においてそれは象徴的だ。他の曲にしてもヘヴィなグルーヴを絡み付ける#5「Iron Tusk」、海獣というタイトルそのものの妖しい雰囲気と威圧感を放つ#3「Seabeast」など魅力に溢れている。特に#6「Megalodon」のわけわかんなさには卒倒。爆撃のような激しさを全面に出しつつも、所々で秘蔵の知性をひけらかしている辺り、奥底知れずで強烈に怖い存在です。


 

Remission

Remission(2002)

   元TODAY IS THE DAYのメンバーを中心に結成されたカオティック・プログレコアバンド・マストドンの1stアルバム。長い年月、眠りについていた伝説の恐竜が本作にて覚醒した、聴いた瞬間に駆け巡るインパクトはそんな感じ。混沌を巻き上げるようなウネリと闘争本能むき出しの雄叫びが続く約2分の#1のインパクトは凄まじく、続く#2,#3,#4ではそれはさらに全てを飲み込むような超巨大な竜巻へと発展していく。ハードコアよりの破壊的な色ととてつもなく重量感たっぷりのリフがずんずんと内臓に響いてくる様はかなり惹かれる。そんな前半部は発狂しそうなぐらいでかなりニンマリとする内容だけど、後半に一気に勢いがそがれてしまってるのが惜しい。けれどもマストドンの独特の緩急をつけた展開やグルーヴの感などこれ以降の作品で形となって現われた要素の礎が詰まっていると思う。既にこの頃から独自のヴィジョンを持っており、ただのカオティック・ハードコアバンドで終わる気は無さそうだ。そりゃあ聴いてれば、ただもんじゃない展開力と構成力持ってるし、プログレの感触もするし、何かと期待してしまう存在感をみせつけてくれている。

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