My Bloody Valentine ‐‐Review‐‐

1984年、アイルランドのダブリンにて結成された男女4人組のロックバンド。1991年に発表した2ndアルバム「Loveless」は現在もなお、色褪せないシューゲイザーの金字塔として語り継がれている名盤である。ところがそれ以降は目立った活動もなく、バンドとしての時計の針は一向に進まなかったが、2008年に入り16年ぶりに活動再開して同年7月にはFUJIROCK FESTIVAL’08にて来日公演が実現。2012年には本格的に活動を再開し、アルバム2枚のリマスターが話題となった。2013年にはまさかの新作「m b v」をリリースし、同年2月には来日公演も開催した。

レビュー作品

> Loveless > Isn’t Anything


Loveless: Expanded Remastered Edition

Loveless(1991)

   シューゲイザーという当時ムーブメントになりかけていたジャンルの最盛と終焉の役目を果たしたともいえる不朽の超名作が彼等の2ndアルバム「Loveless」だ。完璧な作品を作り上げるために費やした膨大な制作費によって所属レーベルが破産寸前にまで追い込まれたという事も、この作品が生み出された逸話としてここで紹介しておきます。

 止むことのない狂乱怒涛の轟音フィードバック・ノイズ、凄艶で甘美なメロディ、幽寂で囁くような柔らかいヴォーカル。それらが摩訶不思議に溶け合って生み出される恍惚へのハーモニー。我々が今まで見た事も感じたこともない官能的な美しい世界を創り上げている。脳髄も心も彼等のサウンドの魅力に抗うことはできず、抜け出すことはできない中毒症状に陥ってしまう。ノイズに導かれるままに辿り着いてしまった桃源郷は、あまりにも不思議な夢の世界であり、この世界から醒めないように、このまま「Loveless」の音に酩酊し続けるのが幸福を感じていられることへの最良の選択。「Loveless」は前人未到の地へ踏み入れた最初の作品である。これ以降、誰もがこの至高の頂を目指したが未だに辿り着いたものはいない。シューゲイザーのみならず世界を揺るがした、ロックのマストアイテムといっても過言ではない。

 この完璧な作品を創り上げたことによって、ほぼ活動休止状態に陥ってしまったMy Bloody Valentineは伝説的な存在になったのでありました。


Isn't Anything: Remastered

Isn’t Anything(1988)

   これ以前にも編集盤やEP等でリリースしている作品はあるが、世間一般に彼等の1stアルバムといわれるのはこの作品だ。次作の「Loveless」が世界を震撼させた作品ということもあり、あまり本作を手に取る方は少ないみたいだが、こちらも羽化していく前のマイブラを聞くことができるので抑えておいて欲しい。

 しかし、まあこうして聴き比べると別のバンドのようにも思える。轟音サイケ・ギターの荒波や甘いヴォーカル、不確かなノイズが平衡感覚を失うような幻を創り上げているのは確かなことは確か。けれどもロックの力強さがダイナミックに表現されていて、ヒリヒリとした焦燥感と荒々しい疾走感が本作特有の色を出しているところも確かである。ガレージロックっぽさもアコースティックの音色も残しつつ、実験的にシューゲイザーに踏み込んだものだといえるかもしれない。#2では次作への伏線とも取れる幻想的で甘美な世界が表現されているし、#7,#10,#11のように狂乱と甘美が融合した曲はここでしか聴けない。シューゲイザーの結晶ともいえる完璧な「Loveless」に対して、様々なロックの魅力が凝縮されているような感覚を覚えてしまうのが本作であると思う。独自の美学はこの頃から既に萌芽を始めており、伝説を築く礎となったのは言うまでもない。

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