mudy on the 昨晩 ‐‐Review‐‐

2006年1月に結成された名古屋のトリプルギターを含む5人組インスト・バンド。残響レコードに所属し、フジロックのルーキーステージに出演するなどのキャリアを持つ。現在もマイペースに活動中。

レビュー作品

> Pavilion > Kidnie > VOI


pavilion

Pavilion(2010)

 名古屋の若手トリプルギター・インストロックバンドの初のフルアルバム。本作からギターが1名交代し、新体制でのスタートとなっている。

 ようやく10曲も収録した1stフルアルバムがお目見えしたわけだが、基本的に路線は変わってない。マスロックを軸に変態的に組み立てられたスリリングで衝動性の強いインスト・ロック。複雑に絡み合う三本のギターがささくれ立った荒々しさを伴いながら鳴り響き、変拍子をものともせずごろごろと転げまわるドラムが加速力を与えていく。プログレ的な構築性すらも見せ付けるなかで、親分であるte’譲りのロックとしての衝動を強く感じさせるスタイルは全くもって不変だ。今も初期衝動を保ち続けているといえるだろう。

 初っ端の#1″Moody Pavillion”~#2″YOUTH”の流れはまさに彼等の音楽性を端的に物語っている。変拍子や不協和音を変態的かつ鮮やかなコンビネーションで纏め上げ、緊迫した空気の中を火花散らしながら突っ走って行くような感じ。しかしながら今までと比べるとどの曲も組み立てに静・動のメリハリがつけられている印象を受ける。時にメロディアスな旋律が凪いだ瞬間を与え、歌心のあるフレーズが懐っこく絡んで、センチメンタルな風景すらも脳裏に焼き付けることに成功。前述の#2にしても静謐とした引きの部分がより疾走感と焦燥感を際立たせている。

 ただ、その中で疾走感を伴った曲の威力は十分であるのに対して、#6や#9といった聴かせるタイプの曲が弱い印象も受けてしまう。しかしながら、ハードロック調の硬質なギターが妖しげなうねりを聴かせる#3といった新境地、各種のポストロックを取り込みすぎて混沌としすぎた#7といった曲でおもしろさをみせている。メンバーチェンジから”再構築”を掲げた作品だそうだが、確かな幅の広がりを示した1枚になっていると思う。


kidnie

kidnie(2009)

 名古屋の現役大学生(リリース当時)5人組の10ヶ月ぶりとなる2ndミニアルバム。既にライブでも披露している楽曲が多くて、本作に納められている曲も実は半分くらいは聴いていたりする。

 3本のギター、ベース、ドラムから繰り出される鮮やかな旋律と炸裂する轟音、多彩なコンビネーションを駆使して描かれる自由な音絵巻は本作でも健在で、実に彼等らしい。作品としては前作の延長戦上といえるものだろう。変拍子等を絡めてコロコロと表情を変えるマスロック的展開を軸に、叙情身のあるメロディが切なさを掻き立て、ごうごうと轟く爆音が所狭しと力強く暴れまわる。前作では荒削りの初期衝動が強かったが、本作ではそれは薄まった変わりに、複雑極まりない曲展開がなめらかになった印象がある。妙にメロディがキャッチーになっている点もそれに影響しているだろう。難解で変質な割りに聴かせることのうまさを所々で感じさせる。とはいえ、5者のベクトルが一つとなったときに牙を向く爆裂衝動には痺れるし、予測不可能な展開の連続に刺激は止むことなし。前作に惹かれた者に対して十分に応える内容になっている。程よい疾走感を保ちながら所々で衝動を炸裂させる#1「Ozis」と#7「ZITTA」、どんどんと表情を変えていく千変万化の如し#4「ASAI」辺りは個人的にも好み。決して派手ではないが、ツボをつくような楽曲が揃っており本作もおもしろい作品だ。


VOI

VOI(2008)

 表現するならば“アヴァンギャルド・マスロック”とでもいえそうな音の潮流。ポストロックにありがちな静と動という制約はあると思うのだが、ここに収められている6曲は比較的に自由な楽曲構成で、時に静謐で時に獰猛で時に穏やかに・・・と楽曲の感情が様々に移ろい流れ出す。変拍子を多用し、サイケな雰囲気と程よいポップさ、今にも弾けてしまいそうなアヴァンギャルドサウンド。輪郭はポストロックよりもマスロックの方をイメージした方が彼等の音楽を掴みやすいと思う。例えるならば、彼等の音楽は雲ひとつ無い大空へ向かって音符が飛翔し、自由に踊り戯れているような感じ。まるで空に自由なラフスケッチを描いているかのようなのだ。

 サイケで穏やかな雰囲気から一気に猛威を振るう#1「パウゼ」、騒擾と静謐の狭間を突き進む#2「ヒズミ・タカコ」、エレガントな質感から暴れ狂うパートへの転換が印象的な#3「ニュータイプ理論」、踊り狂う喧騒乱舞な#4「POLICE」、バンドの代名詞ともいえる変態ロック#5「kau’s」、ムーディーな雰囲気が時間と共に深みを増していく#6「205」。既にインディーズで発表していてお馴染みの曲も多いのだが、6曲どれもがなかなかに印象的。トリプルギターがうまく活かせていないという感じ(もうちょっと立体感が欲しいね)も受けるが、楽曲の色彩を豊かにするようなサウンドは新人らしからぬと思うし、既にある程度のオリジナリティを確立できているのは残響レコードが認めただけあります。

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