Muse ‐‐Review‐‐

“過剰の美学”と評されるエポックメイキングなロック・サウンドでUKから世界を制圧した無敵のロック・トリオ。プログレのやクラシックの素養を存分に生かしたとてつもなくスペクタクルでドラマティックなサウンドは、エレガントな詩情と炎が上がるような激しさを纏って聴き手の本能を揺り動かす。

レビュー作品

> Resistance > Black Holes & Revelations… > Absolution > Origin of Symmetry > Showbiz


The Resistance

Resistance(2009)

 約3年ぶりとなる5thフルアルバム。前作でUKのみならず、アメリカをも制圧にかかったこの無敵のロック・トリオは本作でもまた己の美学を突き詰めている。それも初の完全セルフ・プロデュースということで作品の濃密度が半端ない。

 マンソン風の妖艶なグラム・ナンバーでの幕開け#1「Uprising」には驚かされたが、幻想的な闇夜を流麗なピアノが駆け抜けるイントロから美しく刺激的なロックをぶつけてくる#2「Resistance」でミューズの世界が劇的に花開いていく。クイーンばりの仰々しい一大オペラ、今まで以上のクラシック的要素の掛け合わせ、キャッチーな表面の裏で暗躍するプログレの素養、シンフォニックな趣を加算するストリングスの響き・・・etc。それらの諸要素を強く打ち出すことで、豊かな音世界に多彩な光と潤いをもたらしている。とてつもない臨場感や立体感を伴ってスケールはさらに肥大化しているのだ。オペラチックなエネルギーが集積した#4を聴けば、この仰々しい表現っぷりを思い知るだろう。

 その分、重厚なギター・サウンドはこれまでと比べると抑えられていて、クラシックの高貴さやシンフォニックな壮大さを作品として主張したいという意向も伝わってくる。だからこそ、ここまでジャンルのふり幅が凄まじい11曲のラインナップを揃えて、新しい地平へと向かっているのだろう。激しく美しく心を動かすロック・スペクタクルは、どこまでもどこまでも肥大化の道を辿っている。奥行きと立体感のあるシンフォニックでクラシックなロックを聴かせるラストの組曲#9~#11のやりすぎ具合は、ミューズがこれから目指すべき形なのかもしれないと思ったりも。マシューの底知れぬ才能を存分に発揮した本作は、またひとつ個性をミクロレベルに集積した期待の一枚であった。


Black Holes & Revelations

Black Holes & Revelations…(2006)

   孤高を極めた前作から3年を掛けて練り上げた4thフルアルバム。ロックを力強く集積した前作と比べると、今までにない様々な仕掛けを取り入れることで豪華絢爛に作品をビルドアップしているように思う。豊かなセンスと重厚なアンサンブルに、メタル、ゴシック、クラシック、ソウル、エレクトロなどのありとあらゆるジャンルをハイレベルに融合させ、耽美で激情的な世界観を現出してきた彼等。ここにきてゴシック調でダンス・ビートが効いた#3を先行シングルに持ってきたことでの変化への渇望が見られる。

 けれども、前々作や前作を踏まえた上で、そういった新たな要素を貪欲に吸収してサウンドを深めてきたご様子。数多の感情や誇大なアイデアを思いのままに挟みながらも、それを効果的なパスとして昇華させ、全体として明確な画を描いている。アナログシンセのループが今まで以上の世界を予感させる#1、今までにない瑞々しくポップなメロディと燦燦とした太陽の光が降り注ぐ#2、ワルツを踊るピアノと重厚なサウンドが劇場体質ともいうべきロックを表現している#4、メタリックな轟音が飛び交う迫力の#7、爆音と叙情のコントラストと勇猛なグルーヴに昂揚の彼方へと飛翔していく#11など、彼等の揺ぎ無い個性と曲の完成度の高さを本作でも実感すること間違いなし。ポップという言葉からかけ離れているようで離れてない明快なキャッチネスが存在するし、プログレシッヴな難解さと展開の妙をみせながらも、豊かなフィーリングに彩られた音色が連鎖することで高まる求心力は他のバンドと比べても随一。美意識の高い、そして過剰にドラマティックな楽曲群には恐れ入る。

 ミューズは前作を最高傑作に挙げる人が間違いなく多いけど、確信犯的な仕掛けの数々が彼等の核となっている部分を鮮やかに輝かせた本作が個人的には一番好きかな。一応、補足として全英NO.1を獲得したほかにもヨーロッパ全土、アメリカでもTOP10入りを果たし、不動の地位を築いた作品でもあることを述べておきたい。


Absolution

Absolution(2003)

   約2年ぶりとなる3rdフルアルバム。前作で過剰の美学と評された音楽性は、本作でロックとしての肉体性を強めることでさらに芸術の花を咲かせている。

 華やかさやポピュラリティを堅持した中で、メタリックな重厚さを伴ったギター・リフが炸裂、骨太いリズムが肉体性を助力し、勇壮なメロディが雄叫びを上げていく。このように遥かにパワーアップしたのが本作の特徴だろう。激情的なロックをかき鳴らす中でメロディの美しさや透き通るような世界が横たわっているのは相変わらず。透徹とした美と嵐の如き激しさが狂おしく鬩ぎあいながら螺旋を描き、天空へと突き刺さるその様は圧巻だ。オーケストラと多重コーラスを導入したことも、荘厳かつ華麗なドラマを一段と引き締まる要因で、この過剰なドラマ性とダイナミズムが天空へとミューズの孤高のスケール感を広げていくのだ。

 本作を語る上で、絶対に欠かせないのが#5「Stockholm Syndrom」だろう。うねりをあげるリフと重厚なリズムに支えられて、ワルツ踊るような美しいピアノや華麗なサビが一気に盛り上げていくその息つく暇も無いスペクタクルな展開に全身が震え、感動の嵐が心を掻っ攫っていくミューズ史上に残る珠玉の名曲のひとつ。クラシカルな趣を響かせるピアノを入り口にして荘厳で激情的なロックを展開する#2、ヘヴィなグルーヴが押し寄せたかと思うと開放感あるサビが広がっていく#8なども好み。静と動、光と闇、希望と絶望が交錯し、未曾有のスケールの世界を描いてみせるその才覚はやはり秀でている。またそれを雄弁に語るこの凄まじい完成度の高さには脱帽だ。彼等の音楽がひとつの頂点へと行き着いたことを証明する傑作で、聴き手の本能に揺さぶりを掛けるような素晴らしさが詰まっている。


Origin of Symmetry

Origin of Symmetry(2001)

   1年半というスパンで発表された2ndアルバム。地鳴りを呼ぶヘヴィなサウンドと艶やかな叙情性が豊かな起伏を描くオープニング「New Born」がこの三人の個性の爆発を物語っている。この作品でレディオヘッド・フォロワーという批評を吹き飛ばし、”過剰の美学”というミューズのサウンドの礎を築き上げることに成功。

 1stでもどこか陰を引き摺った退廃的で耽美な世界観を現出させていた彼等だが、それを屋台骨にしつつもヘヴィメタリックな強靭さや重厚感、クラシカルな美の飛散、ゴシカルな妖艶さ、エモの狂おしい情熱が密に結合することで、彼等は完璧な世界を創り上げてしまった。それはあまりにも激情的でメランコリック。前半の曲なんかは特にその特徴が顕著に表れていて、美意識を多分に含んだ中に空気を裂く破壊力が同居している。その音の厚みと拡がりは地球を越えて宇宙へ。ド派手に音を連鎖させ、ドラマを一段と盛り上げていくその展開美は、本作のキャッチコピーとなった「過剰の美学」に収斂する。その引き出しの多さもそうだが、それを具現化する豊かな感性と高度な技術も凄まじい。多様でありながらも理知的、それでいて大衆にわかりやすく伝える”わび・さび”もしっかりしている。それも日本人の琴線に確実に触れるような歌謡メロディを有していることも嬉しい限り。故にそのドラマに引き込まれ、鼓動が弾む。

 希有壮大、そして華麗で劇的に展開するミューズのサウンドは、本作を持ってロック・シーンの中でも異彩となって輝きを放つことになった。聴き手のイマジネーションを直接的に引っ張り出してくるかのようなこの音楽は、聴けば聴くほどに濃厚である。


Showbiz

Showbiz(1999)

 当時はレディオヘッドのフォロワーと評されるにとどまっていたという、ミューズの記念すべきデビュー作。確かにレディオヘッドの影響はどこか陰を帯びながらもインテリジェンスな音世界が繰り広げられていること、トム・ヨークへの敬愛が伺えるマシューのVoから感じられる。

 だが、本作は陰鬱で耽美なオーラが全編をくるむ中で、鋭く激しいロックの醍醐味をもしっかり感じさせてくれる作品だ。現在ほどに多種多様の音粒子が自由自在に連鎖していく過剰な表現には至ってないが、シャープな演奏の中に柔らかで優しい光のようなのを放っている。そして、狂おしいほどにエモーショナル。ピアノやシンセサイザーを使ったアレンジもこのデビュー作から実践されている。その繊細なギターフレーズが幽玄な空気に同調するかのように鳴らされた時には切なさがじわっと広がり、そこに重なっていくマシューの甲高くエレガントな艶のある歌声は、悲しみの底から希望へと突き動かすかのような魔法の力を持っているように思う。ハードロッキンなエッジの立ったギターが空間を切り裂くこともあって、3人とは思えない厚みのあるアンサンブルを聴かせてくれたりもするのだが、この世界の根底には静けさと美しさがやはり横たわっている。それが何よりも本作で惹かれる点だろうか。

 憂いを帯びたピアノの調べから統制されたロック・サウンドが顔を出す#1、レディオヘッドの影響が垣間見れる#2などは本作を物語っているし、彼等の激情的なサウンドが自在の緩急に乗せられて襲い掛かる#3、#5といった力強い佳曲も存在。現在ほど、スペクタクルに音が詰め込まれてはいないが、シンプルに徹しつつも音の連なりが過剰な音塊に発展していく様子はこの頃から伺える。既にこの頃から神秘の薫りを放ち、他のバンドにない審美眼で濃密な世界を描いていたのだ。

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