Mutemath ‐‐Review‐‐

“ポリス meet レディオヘッド”とも言われているらしいアメリカ・ニューオリンズ出身の4人組。サマソニ08,09に連続出演するなど評価が鰻上りの旬の勢いを感じさせるバンド。

レビュー作品

> Odd Soul > Armistice > mutemath


Odd Soul

Odd Soul(2011)

   ギターの脱退を経て制作された2年ぶりの3rdアルバムだが、隙はどこにもない。まさに変幻自在。UK出身じゃないけどUKロックからファンク、R&B、エレクトロニカまで自在に料理して振る舞う感性が相変わらず冴えわたっている。リズムだけで持っていくあのグルーヴ感は流石の仕事なんだけど、ギターの比重が落ちたために今回はよりファンクっぽくなっている印象。さらに今回は音が60年~70年代風味でかなりレトロな感触があって、ガレージやブルースっぽい音色も聴こえてくる。よくここまで振りきったなあとは思うが、この辺は好みが分かれる点だろうと思う。ただ懐古な味わいとモダンな感触が絶妙なバランス感覚で共立。シンセやエレピで鮮やかな装飾を施して、親しみやすいメロディラインを保ち、あのソウルフルな歌唱と凄まじいグルーヴにどこまでも昂揚させられる。作品を通しても軽やかに表情を変えていく変幻自在さ、その玄人好みのアレンジの妙はやはり見事である。絶妙なうねりを聴かせる#1に始まり、軽やかに駆け抜けていく心地よい#2、美しいメロディと歌声を添えた#5、縦・横のグルーヴを使い分けて揺さぶり続ける#12など挑戦的な楽曲が揃った全13曲。本作もまた聴いてて楽しく昂揚できる1枚。先日の来日公演でも凄まじい熱狂を味あわせてくれたのも印象深い。


Armistice

Armistice(2009)

   約3年ぶりとなる2ndアルバム。前作では一撃必殺の『Chaos』を中心にスリリングな衝動性と上質な歌のケミストリーに個人的にはもっていかれたものだが、多彩な曲調でもって繊細なロマンチシズムと奥行きを広げた本作もまた魅力的な作品に仕上がっている。

 アゲアゲ必至な#1からダンサブルなノリでガツンと揺さぶるが、次からはR&Bっぽい#2やリリカルなピアノとヴァイオリンが蒼い炎のように揺らめく#3と繊細なメロディを主体にした楽曲を並べ、落ち着いた雰囲気を早くも漂わす。作品全体を聴き通しても、昂揚感溢れる動・繊細な叙情性を打ち出した静をバランスよく配した曲順になっており、曲のバリエーションを広げると共に、自在に緩急を操りながら刺激を常に提供する手口を見せている。もちろん、凝りに凝った強靭なリズムセクションをベースに、煌びやかなエレクトロニカの空間装飾とエモな熱情も湛えた伸びのある歌声など、そのひとつひとつのパーツを練りこむことで、美意識と煽情性を備えたマジカルなサウンドスケープが一層の説得力を増しているのはいうまでもない。聴き手に様々なジャンルを横断した難解さやマニアックな側面を悟られないための、シンプルでキャッチーな表面塗装も見事で、要所要所で独創性を出しつつも、ポップというベクトルへ向かってのそぎ落としの巧さが伝わってくる。楽曲単位で見ても、映画に使われたという#4は躍動感に満ちたキラーチューンだし、サビの艶やかなヴォーカリゼーションに惹かれる#7、ファンキーなリズムにホーンが絡む#10、サイケデリックな浮遊感を醸す#12など佳曲はズラリ。全編じっくりと耳を傾けられる内容になっている。

 美しいメロディと骨太なアンサンブル、随所に光る独創性がバンドの懐の深さを物語る良盤であり、今時のバンドと決して侮れないだろう作品だと思う。


Mutemath

MUTEMATH(2006)

   アメリカ・ニューオリンズ出身のミュートマスの1stアルバム。まず思うのが、アメリカという土壌から生まれた音楽に思えないところ。ColdplayやRADIOHEADに影響されたというようにUKロックからの影響の強さを伺わせるのだが、それでいて前述のバンドにはない前衛さを持った音楽という印象を受ける。

 肝であるうねりまくりのグルーヴにUKらしいポップ・エッセンスを凝縮したサウンドがなんといっても耳を惹くのだ。グルーヴィなベースとパーカッシヴなドラムによる強靭なリズムを土台として、キーボードの光沢と美メロを鳴らすギターが舐めあうように彩度を高めて、広がりと奥行きを持ったサウンドスケープを構築。そのハイブリッドなサウンドには、端正でスタイリッシュな歌声を乗せることで、キャッチーなポップネスとマニアックな独創性を自然に同居させている。驚くぐらいのリズムの凝り具合と微妙にプログレを思わせる展開を仕掛けたりと己の引き出しを見せ付けてくるが、サウンドの表面だけ取ればあくまで聴きやすいように調理しているのがこのバンドの凄みかなと思う。聴いていてもアクの強さは感じさせず、音の抜けが実に爽快。美しいメロディひとつとってもエレガントな艶やかさがあり、若者らしいエモな部分も時には顔を出してくるのも面白い。ハイライトは繊細な光の粒とリリカルなメロディに彩られた中を疾走していく#4「Chaos」。これからを期待させる、ポップミュージックの新たな萌芽といえる作品かも。

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