Pantera ‐‐Review‐‐

泣く子も黙る俗悪で凶悪バンド、Pantera。ギターコンテスト荒らしとして名をはせたダイムバック・ダレルを中心に猛威を振るった90年代を代表するHR/HMバンドの一つ。

レビュー作品

> 激鉄 > 狂獣~LIVE~ > 鎌首 > 悩殺 > 俗悪 > Cowboys From Hell


Reinventing the Steel

Reinventing the Steel -激鉄-(2000)

 4年ぶりとなる9作目はPanteraのオリジナルとしてはラストとなった作品。一聴した印象を言えば、以前のようなアグレッシヴさが戻ってきたような気がする、激しい! 聴いてしまったら、まあ大変! 人間が炎に身を焼かれているジャケットでもお分かりの通り、獄炎で形成した火の海で火炙りの刑に処されることだろう。空中分解寸前の本作でバンドを支えたのは激烈という己のスタイル。特徴的だった男臭いバラードの曲もあえて外し、残りのパワーを全部振り絞ってとにかく10曲全部叫び通す。もちろん、パンテラらしい超重低音ヘヴィグルーヴは健在で、豊かなリフワークも随所に光を放っている。このときはもう仲は悪かったらしいのだが、このグルーヴ感はやっぱり彼等独自のものだなあと素直に思う。それが何だか痛々しく伝わってくるのがよい。#2でケリー・キングがゲスト参加してソロを弾いていたりもするけど(笑)。これまで培ってきたものはしっかり表現されているが、もうこうなりゃあヤケクソにつくっちまおうぜ的なノリがなんだか好感が持てて、世間的には評価は低いけど個人的にはまあまあ好きな作品。既にダイムバック・ダレルはこの世にいないので、本当にこれが最後の作品なのです、ああ哀しい。


オフィシャル・ライヴ

Official Live: 101 Proof -狂獣 ライブ-(1997)

 パンテラで唯一のライブアルバム。メジャーデビュー以降の4作品からセレクトされているライブ14曲+新曲2曲の計16曲からなる構成。「A Mouth For War」が入っていないことを除けばベストといえる選曲でかなり楽しめる内容になっている。ギタリストが一人とは思えないほど迫力のある重低音を主体に狂獣どもが所狭しと暴れまわる。ダイムのソリッドなギターは強烈だし、ベース・ドラムの硬質っぷりも言わずもがな。その中でも特にフィルの狂気に満ちた野生の雄叫びが凄まじい。とにかく叩きつけられる生々しいパワーというものが半端ではなく、アドレナリンが異常分泌してしまうほど。こいつらのライブって死人が出るんじゃねえのか(実際はステージの上の人が死んでしまったけど)と思ってしまうぐらいのぶちキレっぷりがとんでもなくヤバイ。 体がいくつあっても足りねえ!ってのはこんな凶悪なライブを最前で見るときのセリフにふさわしいかと。#1「New Level」のイントロが始まった瞬間から殴りあいなんだろうなあ、嗚呼怖い怖い!んでもってラストの#14「Fuckin Hostile」では血まみれなんだろうなあ、嗚呼怖い怖い! とまあそんなわけでメタルというよりはハードコア精神に溢れた本作は最高。ベストアルバムよりもこれを買えと高らかにいいたい。

 #15、#16はスタジオ音の新曲ですが、これまでのパンテラらしい音を出しているけどもやや大人しいという印象を持つので蛇足だと思う。食後のデザートみたいな感覚で聴けばわりとイケるかもしれないがね。


Great Southern Trendkill

Great Southern Trendkill -鎌首-(1996)

 おいおい、どうしたんだ。ついに理性が壊れたか?と思えるぐらいに、人を人と思わない凄まじい突進振りが最凶な#1で始まる本作だが、そんな暴走も最初だけ。これまで通りの重低音グルーヴ重視の作風に変化は無い。けれども様相が違うのはその憎悪と怒りの大きさからだろうか。ヒリヒリと生々しい感情の訴えが心に突き刺さってくる。フィルの咆哮の凄まじさはもはや説明の必要が無いぐらいに強烈。だけど、その裏でダレルのギターリフはかなり多彩で知的なフレージングで変化をつけている。前述の#1に続き、激烈ヘヴィネス#2、#3に不穏な色を滲ませる#4と前半だけでも表層の違いがわかるだろう。緩急・メリハリがばっちりつけられており、前作ほどのミドルテンポの兵糧攻めでは無い。むしろワンステージ進んで己のサウンドを追求していると言えるだろう。全体的にもなかなか味があるように思う。そんな本作のハイライトは組曲形式の#6・#7、情感豊かなバラードから一変して怒号が余韻を台無しにしては、破滅へと導くという天と地を両方見せられて悶絶。まあ、だけども前作同様に地味という印象ではあるのだけども・・・。


Far Beyond Driven (20th Anniversary Edit

Far Beyond Driven -悩殺-(1994)

 前作より2年ぶりとなるメジャー3作目。前作で完成されたパワーグルーブをより推し進めてもっとヘヴィにもっとグルーヴィにと破壊性よりも肉体に響く感覚を重視した作風だ。衝撃という観点で言えば間違いなく劣るのだが、タイトル通りに鉛のように重い鉄槌が嫌がらせのように脳を圧殺してくれる。ただ、それがいいかというと個人的にはあんまり。というのもずっしりとしたミドルチューンの楽曲が前作のものほど良さを感じないから。そりゃあ「Walk」よりいい曲はそんな簡単に生み出せないのはわかるのだが、#2、#3辺りのテンションを後半も持続してくれればもっと印象はよかったように思う。猪突猛進の爆裂疾走チューン#1による幕開けは痛快。前述の#2、#3辺りでも全身を殴打するヘヴィな音塊の前には無条件降伏。#7にしても十分にPanteraらしいエナジーが感じられる。ただ、やっぱり前2作がシーンに多大なる影響を及ぼした傑作であったためにどうしても本作は地味な印象を持ってしまうのは否めない。リフ自体はさすがに練りこまれて革新性のあるダレル節が効いているし、ヘヴィなのが好きな人にはこの上ない至福のときを味わえる作品だとは思うのだが・・・。でも、実際のところ本当のパワーグルーヴを完成させたのはこの作品であると思っている。その中で確信犯的に意表をつくBlack Sabbathのカヴァー#12「Planet Caravan」の美しさがなぜだかとっても身に沁みる。


Vulgar Display of Power-Deluxe Edition (CD/DVD)

Vulgar Display Of Power -俗悪-(1992)

 2年ぶりとなるメジャー2作目は、前作と並んでパンテラのカタログの中で最高傑作と評される作品だ。バンド自らも“パワー・グルーヴ”と呼んでおり、迫力のあるヘヴィな音が漆黒の大海の如く荒れ狂う。ジャケの通りの猛烈に襲い掛かる音の暴力が半端なく、立ち上がっていることさえ困難になってくることだろう。余りにも壮絶すぎて高校生のときに初めて聴いた時は、今までに感じたことも無い衝撃が身体中に走ったものだ。特に前半#1~#5まではどれもが異色の出来。重戦車のようなリフが衝動を抑えられなくする#1に、ラウドに畳み掛ける#2、クソ重苦しいのになぜかキャッチーな#3、パンテラ最凶を証明した#4、そしてクリアなサウンドから突如として地獄の鉄槌を振り落とす#5と緩急・メリハリをばっちしとキメている。ヤケクソ気味に爆走する#6から始まる後半の楽曲も前半ほどではないのだが、強烈という言葉がよく似合う。最後を男臭いバラードで締める辺りもなんだか心憎い。徹底的に重低音にこだわっているものの、肝である楽曲構成はしっかりとしているし、繊細に気を遣っているだろうメロディも光る。その辺りはバンドのテクニックの高さが伺えるし、キャッチーな部分もきっちりと残しているのはさすが。凶暴な音楽だけど親しまれたのはそういった要素がしっかりしていたからだと思う。

 Pantera以降に音楽の流れは変わったとよく言われるが、俗悪だからこそ時代を創ったのかなあと今となっては思う。やっぱり最強!空耳アワーでジャンパーも獲得した#4を映像で楽しむだけでなく、手にとって聴いてみて欲しいものである。


Cowboys From Hell

COWBOYS FROM HELL(1990)

 メジャー移籍第1弾となる通算5枚目の本作「Cowboys From Hell」は次作と並んで90年代の HR/HMを代表する作品。彼等の登場が無ければ、モダンヘヴィネスやニューメタルなんてジャンルの確立が遅れていたと言われたほど。とりあえずそれは#1「Cowboy From Hell」を聴けばご理解いただけるだろう。ヘヴィで切れ味の鋭い扇情的なギターリフに激しきシャウトの連続が強烈なインパクトを残す。猪木にビンタされるよりも気合が入る曲である。

 サウンドは荒削りで野蛮(見た目もヤバイ)なんだけど、どこか計算された構成には知性も感じる。それでも4人が吐き出す音の破壊力といったら脳天をスコーンとかち割るほど。攻撃性はとにかくピカ一である。だが、叙情的なバラードだったり、渋いアコースティックな曲などで時たま夢を見させるという一面もあり、引き出しは多い。パンテラサウンドの完成系である次作に比べると重さという観点では及ばないのだが、スラッシュメタルのアグレッションとNWOBHM的哀愁にアメリカンの中庸という印象を自分は受けた。それがこれ以降の作品には無い味で凄くそそられる(これ以前の作品はもっとハードロックだったらしい)。この斬新で凶悪な音楽に加えて、フィルとダレルという2人のカリスマを要していたのが、時代を変えた要因かなと思う。ドスの効いた声が特徴的なフィルは多彩なヴォーカルワークで攻め、このときはロブ・ハルフォード並のハイトーンスクリームも披露。稀代のリフメーカーであるダイムの凄さは、後の大量フォロワーが物語っている。驚異的なリズムをコントロールするリズム隊の凄さも聴き逃せない。

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