Pianos Become The Teeth ‐‐Review‐‐

USバルティモアのポストハードコア・バンド5人組。新世代の激情系ポストハードコア・バンドとして世界的にその名を轟かせている存在。現在までに3枚のフルアルバムをリリースしている。

レビュー作品

> Keep You > The Lack Long After


Keep You

Keep You(2014)

  まさかの名門・Epitaphに移籍しての約3年ぶりとなる3rdフルアルバム。激情系ポストハードコア/スクリーモ的なサウンドで強い支持を受けてきた 彼等だったが、ここにきての大胆なモデルチェンジ。歌とメロディにフォーカスを当て、聴かせるアルバムを作り上げている。トレードマークであった叫びを一切入れない、初期衝動で突き破らないとは驚きだ。衝撃度でいえば、サッカーで交代枠を使いきったのにGKに退場者が出たため、フィールドプレーヤーがGKやらされるあの感じ。しかしながら、この大きな変化は決して退化などではない。まるでUKロックのような気品と煌めきをまとう#1「Ripple Water Shine」、遠くの海を眺めるような哀愁漂う#2「April」とつかみの段階で、じっくりと聴き込める作品に仕上がっているのが伺える。BRAIDや CIRCA SURVIVE等を手がけるWill Yipがプロデュースしたことが大きく影響しているのだろうが、以前からのポストロックやシューゲイズの要素がさらに磨かれて、大人びた歌と融和することで”叙情派”としての新しいバンド像を確立。#5「Repine」や#10「Say Anything」を聴いていると、「これは求めたものじゃない」という意見を優しく洗い流す。間違いなく、彼等のターニングポイントとなる重要作。


The Lack Long After

The Lack Long After(2011)

 バルティモアのドラマティック激情エモ/ポストハードコア・バンドの2作目。デビュー作でも話題をさらった彼等の新作は、変わらずに蒼いエモーションが迸る。聴き手の心に火をつける悲痛な絶叫が次々と炸裂し、驚くほどに美しい旋律と地をグッと踏みしめる様に力強いリズムが呼応しながら壮絶さを極めていく。凄まじい感情の激流に飲みこまれるような激情エモ/ポストハードコア。

 挨拶代わりの#1での激しさと美しさの両極端な振れ具合、続く#2のドラマティックな衝動にもってかれる。しかもこの手のバンドにしては驚くほど叙情性の表現にかなり気を払っていて、強烈なスクリームのみならずそのインスト・パートの美麗さにも耳を引き寄せられてしまう。時に若者らしい瞬発力で爆撃を聴かせてくれる事もあるのだが、基本はポストロックのようにゆったりとしたテンポと美旋律でドラマティックに楽曲を彩っていくのが大きな特徴。全身から一的残らず絞り出して放出する情熱と絶叫が有無を言わさずに印象に残るのだ。静寂の淵から激情的轟音を解き放つFuneral Diner、扇情的なエモ/スクリーモで一時代を築いたThursdayといったバンドの要素から、EITS等のポストロック勢に迫る叙情的なインストを噛み合わせて、静と動のダイナミックな落差を上手く生みだしているといえるだろうか。envyと共振している部分は多いかも。その叫びだけ聴いてると荒削りで若いという印象を受けるんだけど、楽曲自体は繊細かつ丁寧に綴られている。

 前述の#1、#2のみならずツインギターのクリーンなフレーズを中心とした静から怒涛の爆発を見せる#4、本作随一の激しい展開に振りまわされる#6に昂揚し、さらにはエモ/スクリーモ~激情ハードコア~ポストロック・ファンにまで訴えかける泣きまくりの締めくくり#8は特に感動的。その一瞬が全てクライマックスと言わんばかりの燃え尽きるようなテンションで叩きつけていく様はとにかく圧巻だ。美麗だが鋭利に心を捉えてくる音塊、それがあまりにもエモーショナルでやっぱり心に火をつけられる。聴いていると本当に過剰なほど熱くなれる一枚だ。

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