Protest The Hero ‐‐Review‐‐

カナダから出現したプログレ系ハードコア・バンド(元々はパンク畑に在住)。2005年に発表した『Kezia』が軒並高評価を経たことで人気が加速。ここ日本でも2007年に同作の国内盤がリリースされて火がつく。2008年に「Fortress」、2011年に『Scurrilous』をリリースし、確かな地位を築いている。

レビュー作品

 > Scurrilous > Fortress > Kezia


Scurrilous

Scurrilous(2011)

 08年のBullet For My Valentineとの来日公演(見に行ったなあ)を挟んで、約3年ぶりとなる3rdアルバム。テクってますなあ、ピロってますなあ。ということで安心して変態を堪能してくださいといわんばかりの内容。急展開に次ぐ急展開と多彩なアプローチで持って畳みかける。リフの扇情性は十分だし、変拍子もものともせず優雅さすらも感じさせるリズムも強みで、滑らかな歌メロからスクリームまでを自由に操るヴォーカルもカオスの花の咲き乱れに加担。穏やかなメランコリー、過激なアグレッションが交錯して奇抜さと変態性に富んだ世界を創り上げている。しかも緻密に。パンク、エモ、カオティック・ハードコア、プログレを培養して己の音を力強く打ち立てている様には変わらず惹かれるものがある。ただ本作では、芯の強さと滑らかさを持った歌メロや厚みのあるグルーヴが印象的で、楽曲自体が整合性のあるものになった印象も。もっと変則的なものを期待していた人からすると肩すかしをくらう可能性は大きい。展開の器用さはさすがだけど、芸域が拡がっているように感じないのも物足らない要因かも。とはいえ、こねくり回しながらも爆走して突っ切っていく様は痛快ではある。多ジャンルのリスナーを巻き込む引力も有しているとも思う。ただ、個人的には1stのインパクトを2ndも3rdも上回っては無いです


Fortress

Fortress(2008)

 去年、日本盤「Kezia」が発売され旋風を巻き起こしたProtest the Heroの2ndアルバム。  今作のテーマは“女神崇拝”だそうな。聴いた感じでは全然わからないけど(苦笑)

 前作同様、他ジャンルをクロスオーヴァーさせて生み出されるカオスの逆襲・暴発は相変わらずインパクトが高い。ミクロ単位の細かな設計は隙の無い緻密な音の嵐を巻き起こし、小技を幾重も交えて、勢いは衰えることなくそのまま全速力で爆走する。前作で限界だった地点を軽く乗り越え、よりプログレやテクニカル至高が強まり、楽曲の重厚感も増した今作にあっけに取られる人も多いだろう。前作同様に拳をつき挙げる人間も多いのではなかろうかと思う。10曲約40分起こり続ける音の氾濫に、災害注意報が必至である。『一瞬でもって物語りを語りきってしまうような刹那の積み重ね。すなわち、細部が既に全体である』というライナーにある表現は非常に的を得ているなあと思う。

 前作「Kezia」の奇天烈で度肝を抜くようなインパクトからすると、その免疫ができてこの「Fortress」を聴く人間に対してはもうちょっと意表をついた曲で攻めて欲しかったというのはあるかな。組曲形式の曲が多いらしいのだが、その連続性がわかりにくいのも少々マイナス。楽曲の変態具合(もちろんいい意味で)は自他共に認めるほどのセンスを要すのだから、次はもっと極端な変化を期待したい。


Kezia

Kezia(2006)

 カナダ出身のProtest the Heroのメジャーデビュー作。

 スクリーモ、パンク、プログレ、エモ、メタル、クラシック・・・etc様々なジャンルをクロスオーヴァーさせた彼等のサウンドは圧巻の一言。例えるならば、Dillinger Escape Planのようなバンドといえばわかりやすいだろう。予測不可能なマス的設計で構築されたカオティックハードコアだ。そんな先鋭のカオティックサウンドをしっかりと血に取り込みつつも、Dragonforceなどのメロスピ勢にありがちなメロディアスなギターリフ、ダイレクトに感情をぶつける叫びからわかりやすい歌メロ、果てはファルセットまで聴かせるヴォーカル、Dream Theaterばりのプログレッシヴさはこの系統のバンドではあまり聴くことのできなかった新鮮さを感じる。美と混沌を前面に出しながらも、エッジを効かせて弾丸のように駆け抜ける。しかしながらその他のカオティックバンドなどと比べるとかなりキャッチーでメロディーラインがよい。

 詰め込み主義の今作であるが、パンク畑出身らしく聴き手を刺激し、興奮させる仕様になっており、熱さと同時に我らのハートを打ち抜く衝撃も兼ね備えている。CDというフィルターではあるが、バンド自身の勢いというものが強く感じられ、初期衝動という言葉では片付けられない完成度の高さもやはり評価されている一因になっているだろう。まだ20歳そこそこのバンドとは思えないような様々なアイデアとトリックが施されている今作は、末恐ろしさも感じさせ、バンドの序章を飾るのには十分すぎるほどの名作だ。

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