Radiohead ‐‐Review‐‐

現在の音楽界をリードするUKの革新的かつ巨大な存在の5人組。『OK Computer』、『Kid A』といった代表作が全世界に与えた影響は計り知れない。


ザ・キング・オブ・リムス

The King Of Limbs(2011)

 前作の『In Rainbows』から3年半ぶりとなる通算8枚目のフルアルバム。前作に引き続いてダウンロード先行配信→CD/LP発売という流れを踏襲している。

 ロックへの揺り動かしが行われた前作『In Rainbows』からすると、また大胆にエレクトロニカ/ブレイクビーツ方面へと舵を切った作風になっていて、アトモスフェリックかつ鈍色の光沢を放つサウンドスケープに奇妙に引き込まれていく。近年、隆盛を誇るダブステップも咀嚼した上での鈍色の憂げた空間を創り上げているといえようか。低く太いベースラインと精微なドラミングがリードし、うす暗く明滅しながら鳴り響いている様な電子音とトム・ヨークの物憂げな唄声が絡んでいく事で、仄暗い哀愁を漂わせる深遠な世界を構築。生楽器と電子音の有機的な溶け合いを淡々と、物静かに繰り返している。さらに影を引き延ばした静謐なムードで全体を覆っていて、一定の温度で作品を保っている印象。ミニマルな展開が多いのも特徴といえるだろうが、唄声にエフェクトをかけたり、絶妙なストリングス&ホーンのアレンジを差し色として用いて細かな変相を心がけている辺りはさすがで、催眠的な効能をより高めている。また、全8曲で約38分とコンパクト(彼等の作品の中でも一番短い)にすることでスムーズな流れを生みだしている辺りも巧妙。

 ピアノのループからダブステップ的なリズムに映り、トムの唄声にハッと全身が醒める#1に始まって、小刻みなビートに揺さぶられ続ける#2、異国の薫りも漂わせながら陶酔を運ぶ#3と序盤は特にクラブ/ダブステップの影響を強く臭わせる。そして、不穏なサイケ感を忍ばせながら重なり合う音のレイヤーと唄が印象的な#5から徐々にポップな領域へも足を延ばしていく。決して不穏な色合いと緊張感は落ちないが、不思議と心を開かされていく感じを味わえるのではないかと思う。厳粛に響くピアノの旋律の上をトムの歌声が泳ぎ、途中でホーンの音色が加わっていく事で視界を潤していく#6というバラード・ナンバーは聴き入ってしまうし、穏やかで美しいエンディングを選択した#8は随分と胸に響いてくる。全部を聴き終わってみると、この深遠な空間に自分の感性が取り込まれているようで、やっぱり“さすがだなあ”と唸ってしまう結果に。

 自分はレディオヘッドの信者でも何でもないが(聴いてない作品あるし)、熟練した手捌きと尖鋭的な姿勢の融合によって、他社の一歩先の輪郭を描こうとする創作性/構造性を示した貫禄の一枚であると思う。いつの作品だって賛否両論別れるバンドだし、アトモスフェリックで静やかで色数も少ない本作は間違いなく地味な部類に入るが、個人的にはコンパクトさも手伝ってかなり好み。ダブステップを柔軟に取り込みながら、自らの流儀は決して崩さないその姿勢に感服します。

この記事が気に入ったら
いいね!しよう

最新情報をお届けします

Twitter でGrumble Monsterをフォローしよう!

スポンサーリンク


▼ フォローする