ROTH BART BARON ‐‐Review‐‐

東京出身の2人組フォーク・ロックバンド。フォークやインディー・ロックを主体に多彩な楽器で彩られた音楽は、柔らかなリリシズムと哀愁を感じさせ、高い評価を得ている。


ATOM

ATOM(2015)

 約1年半ぶりとなる2ndアルバム。アーケイド・ファイアやオーウェン・パレット等が利用したカナダ・モントリオールにある「Hotel2Tango」で録音・ミックスされています。作品は80~90年代のSF映画がモチーフになっているという。

 聴いていてパッと思い浮かぶのは、Bon Iverでしょうか。アコースティック音楽を中心にホーンやストリングス、シンセサイザーなどの多彩な楽器を投下(レコーディングには、現地のミュージシャン達が助力)。フォークらしい静けさをある程度保ちつつポップス感覚に富み、軽やかなリズムが暖かく柔らかい風を運びます。そして、特徴のひとつであるハイトーンで揺らぎのある歌声は、サウンドになびきながら心の内側に浸透。日本語詞で綴られるその詞は時に日常に寄り添い、時にメッセージ性と文学性を帯び、日本人ならではの情緒や哀愁を強く感じさせます。

 序盤を飾る#2「電気の花嫁」や#3「England」といった曲は様々な楽器がカラフルに彩り、心地よいテンポで作品に良い流れをもたらし、中盤の要として君臨する#5「ショッピングモールの怪物」ではストリングスやピアノがワルツを躍るように歌と絡み合って昂揚感を誘う。なめらかな展開を持つがゆえの聴きやすさ、童話にも似た親しみやすさがまた良く、じっくりと彼等の音楽と向き合える要因のひとつになっています。

 小さなオーケストラが華やかなハーモニーを奏でる#7「フランケンシュタイン」は天にも昇る心地で、わたくしの本作の1番のお気に入り。そして作品は彼等流のムーディーなAOR#9「X-MAS」から、#10「Atom」にて優しい陽光が差しこむような鮮やかなエンディングを迎えます。10年代のインディ・フォーク勢と重なる面はあるけれども、日本人ならではの感性で紡がれるROTH BART BARONの物語は、聴き手の心に静かな火を灯すもの。この誠実で奥行きの深い世界は格別です。

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