Red Sparowes ‐‐Review‐‐

NeurosisとIsisという二つのバンドのメンバーが中心となって結成したバンド。前述の2バンドとはまた違ったサウンドスケープを聞かせ、そのインストゥルメンタルミュージックは心酔するほど美しい。本家の忙しい合間を縫って発表された3枚のアルバムにもはやただただ感動。本家をも超越しそうなこのバンドも聞き逃してはいけない存在だと俺は思う。

レビュー作品

> Fear Is Excruciating But Therein Lies the Answer > Every Red Heart Shines Toward the Red Sun > At The Soundless Dawn


The Fear Is Excruciating, But

Fear Is Excruciating But Therein Lies the Answer(2010)

   Isisのクリフ・メイヤー率いるインスト集団の3年半ぶりとなる3作目。トゥール、メルヴィンズなどを手掛けている在米日本人プロデューサーのトシ・カサイ氏がレコーディングを担当している。また、ニューロシスのジュシュは08年1月をもって脱退。新たな5人編成での新作でもある。

 万物の深い部分にこびりついた哀しみや憂いを拾い上げながら、コンセプチュアルに音に反映させていくかのようなインストゥルメンタル。レッド・スパロウズの代名詞といえば、間違いなくそれだと思う。ジョシュという核は失えど、本作でもその方向性から大きな変化はない。暗く沈みがちな雰囲気を湛えた中でも、透明感に溢れた美麗なサウンドスケープを紡ぎだし、不思議と意識を吸い込まれるような引力を持つオーガニックな深き音世界へと聴き手を誘う事にいつも通りに成功している。その中で特徴的なのは作品自体の明度や彩度が高くなり、音のひとつひとつをとっても柔らかい質や温かみを持って奏でられていることだろうか。それに伴って、楽曲から伝わるドラマティックな響きと緊張感もより深まっている。この叙情性の高まりは、ポストロックという範疇にさらに近づいたといえる音像かもしれない。それでも、ただ単に同一にできないシリアスな暗さと真摯なこだわりを持ち合わせているのはレッド・スパロウズらしく、確固たる世界観を築き上げている。

 アイシスという出自だから成立する威圧的なヘヴィネスを効果的に盛り込みながら、リリカルなメロディと精微なアンサンブルで広大な世界を丹念に綴っていく。クリアなギターに儚げなシンセのレイヤーが重なり、力強いリズムが涙腺崩壊もののクライマックスへゆったりと牽引して行く様には有無を言わさず呑まれてしまう。特に#2、#4辺りはまるで物憂げな寒い夜に朝日が優しく差し込んでいくかのような歓喜に満たされる。静かな中にそびえたつ巨大なスケール、絶望の先にある救いと幽玄の響きは、先鋭的なセンスを持っているからでこそ。聴きやすさ(あくまでインスト好きにとって)も奥深さも備えた一枚に仕上がっていると思う。Daymareから発表されている日本盤にはさらにボーナスディスクとして08年に発表された配信&アナログ限定の3曲入りEP『APHORISMS』を全世界初CD化して封入。繊細に練り上げられた本編との共通項も多々あるが、こちらではマッシヴで鋭いバンドサウンドの応酬が印象に残る一枚となっている。


エヴリ・レッド・ハート・シャインズ・トゥワーズ・ザ・レッド・サン

Every Red Heart Shines Toward the Red Sun(2006)

    意外に早いスパンで届けられた2ndアルバム。今作のテーマとなったのはずばり1958年からの“中国における大躍進時代”である。ただ、作品内容は前作の延長線上にあるといえるので音の方は安心して欲しい。美しい情景を彩るそのメロディや波のように広がりをみせる音は健在なのだが、その暗喩として悲劇が前作以上に詰まっている。儚さ、無力さ、絶望感といった陰のエネルギーが放出され、美と悲劇の融合ともよべる何ともいえぬ陰鬱感が絶え間なく続く。全てが計算尽くされ、また全てがレッドスパロウズの世界に満ちているといってもいいこの世界観。それはまさしく魔法のようなものでもあり、不思議と意識を浸食していく。柔らかい透明感のある音、だが人々を揺り動かす大きな力を裏側で持っており、気付かぬうちに支配されていくのだ。現在のミュージックシーンに対するレッドスパロウズが鳴らす警鐘に耳を傾ける必要があると思わせるほどのメッセージ性の強さには脱帽だ。


At the Soundless Dawn

At The Soundless Dawn(2005)

   ハードコア・ヘヴィメタルなどのヘヴィ・ミュージックシーンにおいての90年代に従来の壁を突き破ってまた異形の新音楽を次々に創造し、革新的な存在のカリスマであるNeurosisとその流れを汲んでっポストメタルと呼ばれる新たな潮流の先駆者となったIsisのメンバーが中心となって結成されたのがこのRed Sparowesである。

 前述の2バンドの凄さから期待という感情を持たない人間の方がおかしく思われると思うが、その期待はもちろんいい意味で裏切られた。Red SparowesはNeurosis、Isisの双方とはまた違った形のアイデンティティを示している。“種の絶望”というのが今作の大々的なコンセプトだそうだが、どこまでも続く包容力に瞳を潤ませるようなドラマには思わず言葉を失ってしまう。繊細で透明感のある美麗なサウンドスケープを軸に濃紺のヘヴィネスを所々で振りかざし確固たる世界観を造り上げている。絶望の荒野に次々と花を咲かせていくような美しい広がりをみせるその流麗な音。美学・・・いや哲学とも言うべき音色の世界には心から酔ってしまう。柔和でたおやかな音が非常に印象的だが、触ると簡単につぶれてしまいそうなほど繊細で、儚い一面も感じるような音だ。メランコリックなフレーズの連続と深遠なる世界の連続にすぐに彼等の虜になってしまった俺。神秘ともいう言葉すら超越してしまったこの極限の地は魂の眠る場所かもしれない・・・。

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