サカナクション ‐‐Review‐‐

“魚”と”アクション”の2単語を組み合わせた造語をバンド名に冠した北海道出身の男女混成5人組ロックバンド。

レビュー作品

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sakanaction (初回生産限定盤CD+DVD)

sakanaction(2013)

 ドラマ主題歌となった「僕と花」「ミュージック」を収録し、初のオリコンチャート1位を獲得した1年半ぶりとなる6thアルバム。弛まぬ深化は続く。これまでもテクノやダブ・ステップ、アンビエントなどを柔軟に取り入れ、自らの音楽の可能性を広げてきたバンドであるわけだが、本作は今まで以上にテクノ/ダンス・ミュージックに傾倒している印象を受ける。水が滴り、水面に波紋が広がっていくような1分少々の「intro」から、大仰な合唱とクールな4つ打ちが冴えるAOKI takamasaとの共作曲「INORI」からして挑戦的。時代と共振しながら自身の音を巧みに洗練させ、説得力のある音楽を鳴らしている。ただ、前作ほど華やかさがあるわけではないし、ロックからも距離を置いた感はあり。彼等の作品の中では取っ付きにくいとも表現できるかもしれない。それでも抑制されたトーンで描く内省的な世界観には強く惹かれる。色のイメージで言えば、『kikUUiki』以上に藍色だろうか。盛り上がる部分は多少なりともあるし、強烈なグルーヴは健在だが、非常に落ち着いた美しいサウンド・デザインが見事だ。スマッシュ・ヒットを飛ばした「ミュージック」や「夜の踊り子」のインパクト、また壮大なアンセムとなりそうな「Aoi」の勢い、生活音を組み込んだデリケートな#10「映画」、2ndアルバム頃の感触を覚える優しく懐かしい#14「朝の歌」等の全14曲。ますます今後が楽しみになる充実作です。


DocumentaLy(初回限定盤A)CD+DVD+豪華ブックレット

DocumentaLy(2011)

   約1年半ぶりとなる5thフルアルバム。冴えわたるバンドサウンドと打ち込みの親和はさらに密となり、開かれたポップ性とメランコリックな色調を重ね、細やかな技巧を加える事で己のスタイルをより強固にしている。初めてシングルを3曲収録したとのことだが、そういった大衆に向けての親しみやすさをしっかりと据えつつ、丁寧に造りこまれた精微なサウンドデザインで音響へのこだわりを如実にみせる辺りがやはりこのバンドの凄い所だと思う。

 本作では序盤から中盤にかけてはかなりダンサブルなロックを展開。幕開けのシングル#2「アイデンティティ」から4つ打ちのリズムにパーカッシヴな音色が厚みを加え、洗練されたシンセや伸びやかな歌唱が昂揚感を高めていく。#4「ルーキー」や#6「仮面の街」でもその流れは加速。ここにきて「アルクアラウンド」を飛び越えるパワーを獲得してきたことは単純にうれしいもので、大波のように揺れるフロアが簡単に想像できる。ロックとエレクトロの完璧な融合化、それに伴う華やかさとダイナミズムの実証が如実に楽曲から表れているのだ。中盤から後半では多彩なアイデアを投下してまた違う表情を見せており、スペーシーな音響の揺らぎを聴かせる#7「流線」からその流れは顕著。細部にまで意識を払ったテクノチックなインスト#9では技巧派としての力量もみせつける。また、4つ打ちのダンサブルなロックに切ない感傷やセンチメンタリズムを投影する巧さも抜群で、ドラマティックな展開で魅せる#8「エンドレス」、どこか牧歌的で優しい#12「ドキュメント」は流石のできといえるだろう。アイデアが凝縮されてフックが効きまくってるのにこんなにもベッタベタでわかりやすい#10「『バッハの旋律を夜に聴いたせいです。』」には思いっきりハマってしまったし。そんなフロア・ミュージックとしての機能性からJ-POP/J-ROCKとしての機能性まで備えた高クオリティな楽曲の数々、個人的には十分すぎるほど楽しめた作品。


kikUUiki

kikUUiki(2010)

   シングル”アルクアラウンド”がチャート3位というスマッシュヒットを記録! その追い風に乗って発売された4thフルアルバム。とてつもない上昇カーヴを描いて人気を獲得している北海道発の5人組は、本作でも前作の路線を踏襲し、進化。前作で見せた近未来感溢れるエレクトロと硬質なロックとの融合は研ぎ澄まされ、密な交わりを見せている。地方人の都会人化がさらに進行したと表現できるかもしれない。音の粒子を掻い摘んでみるとかなり非常に洗練されている。それでいて、ポップやメロディをより明確に突き詰めた鮮度の高い音色を次々と鳴らすことで、フィジカル的な心地良さや開放感はアップ。緻密かつ濃厚な音像を巧妙に紡いでいく様は彼等のセンスを十二分に発揮しているといえるだろう。

 大仰な合唱が入ることで大きな幕開けとなっている#2″潮”からスタートし、チャート3位を記録したアッパーな4つ打ちと昂揚感溢れる歌メロで引っ張る”アルクアラウンド”、明確なメロディラインを持ちながらも入り組んだ展開で独自の世界を描く#12″目が明く藍色”まで粒ぞろいの起伏に富んだ12曲を突き進んでいく。銀河を駆け抜けるような爽快感に溢れたナンバーから、4つ打ちのダンサブルな揺さぶりはもちろんのことだが、不思議な包容力と北国の土着性や郷愁が滲み出たゆるやかな唄モノまでグッと手応えを感じさせる。低音部からグイグイと体をもちあげていくエレクトロなインスト#6″21.1″、独特なリズムから広大に開けていく展開が魅力の#8″シーラカンスと僕”といった曲も個人的には好み。これまでの自分達を踏まえ、本作でしっかりと昇華できている。大衆に訴えかけるキャッチーな感性とアレンジ力が光る作品、それがこの『kikUUiki』であるのだと。


シンシロ(通常盤)

シンシロ(2009)

 約1年ぶりとなる3rdアルバム。壮大なコーラスワークと打ち込みが印象的な#1での幕開けにまず驚かされる。4つ打ちによる揺さぶりに、きらきらな電子音、心に寄り添うような歌メロ、研ぎ澄まされたアンサンブルの妙は実にらしい。持っているひんやりとした空気感というのも前作とさほど変わってないように思えるのだが、よりダンスミュージックに近づいてさらに聴きやすくなった印象だ。それも哀愁を漂わせる歌謡曲チックな部分は変にそぎ落とすことなく。ポップなニュアンスも加味され、自然と口ずさんでしまう良さも残っている。エキゾチックなメロディに酔いしれるニューウェイヴ風#2「ライトダンス」、銀河を走り抜けていくような開放感がある先行シングル#3「セントレイ」、前作の泣きの要素とオリエンタルな部分が見事にマッチした#4「ネイティヴダンサー」の序盤は特に凄い。この時点で完璧にやられちゃって頭の中は真っ白い素敵な世界に羽ばたいている。けれどもインストの#5を挟んでからはミディアムテンポばかりが続き、やけに歯切れと足回りが悪くなっちゃうのがもったいない。#6「雑踏」と#8「enough」では前作でみせた憂いと詩情をたっぷりと表現しているが、「ナイトフィッシング」ほどは響かずといった印象が残ってしまう。ただその後の煌びやかな4つ打ちで快楽を生む#10「アドベンチャー」、中華風のエッセンスが加味された#11「human」の盛り返しが凄い。結局、最後には楽しませてもらったなという思いが包み込んでくれる。全体を通してもおもしろいアルバムだと思うし、化学反応を起こして弾けたバンドの個性をじっくりと堪能できるはず。独自のエッセンスを育みながら前進した本作は、個人的に前作よりも好みです。


NIGHT FISHING

NIGHT FISHING(2008)

   札幌在住の男女混成5人組ロックバンドの2ndアルバム。憂いを帯びた哀愁が漂うメロディラインを持つフォークの味と昂揚感を高めるダンスミュージックのフロア感覚が混ざった感じというのが第一印象。Vo.山口の詩情ある歌を全面に出しながらも、四つ打ちビートと空間に光を与える打ち込みを多用して直に揺さぶりをかけてくる感じだろうか。だが、踊れるという感覚よりも歌が心にしみじみと染みてくるのでしっかりと”聴く”という感覚を強く持っている。くるりに似ているという声があがっているが確かにそんな感じのスタイリッシュな作品だろう。その中で、特徴的なのはひんやりとした空気感。これは北海道の空気をそのまま醸造して音に詰め込んでいるからなのか、打ち込みの裏に隠れた素朴な感じと湿っぽい歌がそういう雰囲気を醸し出している。キラキラとした装飾を施しながらも、心に寄り添ってくれる感じがこの作品からは感じられるのだ。タイトルに似合わず北海道の土と空気の匂いが感じ取れる詩情に溢れた「ナイトフィッシングイズグッド」や「うねり」辺りがサカナクショノの本質なのだろう。センチメンタルな感傷をしとしとと掻き立て、涙腺を刺激してくる。けれども個人的にはチープな打ち込みがやけに耳に残る「雨はきまぐれ」、「哀愁トレイン」の方が好きだったりする。

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