SlipKnoT ‐‐Review‐‐

世紀末に登場し、あっという間に世界を飲み込んだ猟奇趣味的激烈音楽集団、SLIPKNOT(スリップノット)。1999年に1stアルバム『Slipknot』、2001年に2ndアルバム『Iowa』をリリースして、立て続けに大ヒットを記録して不動の地位を築く。その後は、メンバーそれぞれのソロ活動が活発になる中でマイペースに活動を続け、3rdアルバム『Vol. 3: The Subliminal Verses』、4thアルバム『All Hope Is Gone』を発表してさらに巨大な存在へ。2010年にベーシストのポール・グレイの死去、また2013年にドラマーのジョーイ・ジョーディソンが脱退という困難もあったが、それを乗り越えて2014年10月に待望の5thフルアルバム『.5: The Gray Chapter』をリリースした。

レビュー作品

> .5: The Gray Chapter > All Hope Is Gone > Vol. 3: The Subliminal Verses > Iowa > Slipknot


.5 : The Gray Chapter (2Cd Special Edition)

.5: The Gray Chapter(2014)

 

 ポール・グレイの死去、そしてジョーイ・ジョーディソンの脱退とリズムの両要を失っての6年ぶりとなる5thアルバムである。10数年経っているので、いまさらそんな怪物クラスのエネルギーが生まれるわけはないが、もちろん1stや2ndの怒りや衝動はここにはない。ポールに捧げた#1「XIX」というオリエンタルな色調の楽曲からスタートする本作は、流れとしては3rdや4thを汲んだものであり、多彩な表情を持つメロディアスなヘヴィロックという印象である。

 しかしながら、前作よりも初期衝動の揺り戻しがあるというのは確かに感じるところ。如実に感じるのが#11「Custer」や#13「The Negative One」辺りで、初期を彷彿とさせる業火の激音に見舞われるもの。スラッシーな展開と重厚なグルーヴ攻めでここまでやってくれるとは、正直驚いた。それに#3「AOV」、#4「The Devil In I」にしてもリフやビート、シャウトに強烈な破壊衝動を注ぎながら、美しい歌やメロディへと巧みに切り替えてインパクトを残す。一撃の殺傷力よりも展開でしっかりと魅せられる辺りも良い。リズムの核は変わっているのだが、違和感を持つものではないと思う。

 そして、いつも通りに騒がれるStone Sour化だが、本作にしてもクリーンヴォイスを多用して歌い上げることやメロディが引き立つ場面が多いから致し方なし。今の彼等はどうしたって、SlipknotとStone Sourが交錯したものになる。#5「Killpop」は確かにStone Sourっぽい楽曲だ。ただ、#8「Requiem」に関しては陰鬱な緊迫感と重音が被さってくる歌もので、スリップノットらしい感じを受ける。彷徨える感情を吐露したようなミドルチューンで鬱蒼と重厚に本作を締めくくる#14「If Rain Is What You Want」もそうだろう。大所帯が分厚いサウンドを奏でているのは関係しているが、意図して変化をつけている。

 「リズムの要を失ったけれども思ったよりも本作は悪くない。けれども、スリップノットに求めているものとは違う」みたいな意見はやっぱり多くなりそうな気がする。受け入れらない人は、これはスリップクノットに改名した別のバンドの作品だと思えばよろし(笑)。個人的には、本作は前作よりは気に入りましたし、予想以上の作品には仕上がっていると思います。まあ、もちろん初期派ですけどね。


 

All Hope Is Gone [Explicit]

All Hope Is Gone(2008)

 

 前作から4年ぶりとなる4thアルバム。1stアルバム『Slipknot』と2ndアルバム『Iowa』では、極限の憎悪が渦巻く激烈混沌ヘヴィネスで全世界を制圧。解散寸前までいった前作の3rd『Vol.3』ではリック・ルービンの元で、脳髄をぶった切る強烈なサウンドを少し減退させ、新境地といえるメロディアスな面を強調して世界の度肝を抜いた。

 そして、”All Hope is Gone = 全ての希望は消え去った” と名付けられた本作のリリースである。なるほど、やっぱりこういう作風できちゃったか、という感じのSlipknotとStone Sourが中和したようなものであり、前作の路線を推し進めた作品といっていいかもしれない。Stone Sourの要素は前作でも感じられたが、美しく響き渡るバラードの#11「Snuff」でもお分かりの通り本作はそれ以上の混成具合といっていいだろう。もちろん Slipknotお約束である#2「Gematria」、#12「All Hope Is Gone」のように凄まじいまでの音圧と暴走した狂気が支配する激烈曲は健在だ。

 だが、それら2曲を除けば暗黒的な雰囲気を醸しだしたヘヴィロックといった印象が強い。9人が生み出す独特の有機的グルーヴに引きずり込まれるし、さらに歌を重視するようになったヴォーカルにも熱きものがこみ上げくる。特に#8「Gehenna」ではダークな質感とメランコリーの両端が際立った楽曲に仕上がっていておもしろい。しかし、これまでの作品に存在したスバ抜けた名曲というものが存在しないこと、以前のように9人が掛け算して生まれる凶暴なエネルギーがやや弱いのが少し寂しく思えてしまうところ。Slipknotであればもっとできるはず!と物足りなさを感じる人間はいると思う。

 これまでの過程を踏みしめて多様な音楽性を披露し、グルーヴを重視したような作風は前作以上に賛否を分けたと思う。まあ、僕自身も正直なことをいえば、「SlipKnot から “すりっぷのっと”」へ表記が変わった印象すらある。ここまでに発表された4枚のアルバムの中で、一番聴いてないというのが実際のところだ。


 

Vol. 3 The Subliminal Verses

Vol. 3: The Subliminal Verses(2004)

 

 

 解散の危機を乗り越え、約2年9ヶ月ぶりとなった3rdアルバム。今回はロス・ロビンソンの元を離れ、新たにスレイヤーなどを手がけるリック・ルーピンにプロデューサーを変更。それ故に、この新たな出会いが彼等の叙情性にフォーカスを当てて、見事な化学反応を引き起こしている。Stone SourやMurderdollsなどでメンバーが個々にソロ活動をしたというのもプラスに働いているのだろうが、ここまで多彩・多様な面を持つバンドであったのかという事に、本作を聴いて改めて気付かされた。

 その象徴となるのが#8「Vermilion」だろう。摩訶不思議なイントロから美旋律と切ないヴォーカルワークが光る名曲である。さらに続編となる#11「Vermillion Pt.2」では哀愁のアコースティック・ナンバーとして機能し、#4「Duality」も感情豊かに歌い上げるコリィが印象的で、歌ものヘヴィロックとして完成度は高い。Stone Sourでの活動を還元し、スリップノットでもその美声を響かせている。もちろんそれを活かす演奏隊のバランス感覚も見事なものだ。ここまでメロディを立たせることに成功するとは、やはり器用なバンドだ。

 一方で十八番の激烈ナンバーは暴風のように吹き荒れる。#2「The Blister Exists」から#3「Three Nil」への進撃、テクニカルなドラムからスタートして中盤のギターソロが強い印象を残す#7「Welcome」、興奮必至の#9「Pulse Of The Maggots」と抜かりはない。ギターやドラムはテクニカルな演奏を聴かせるようになったし、ギターソロを大胆に導入したことにも驚きは大きかった。当然、それが新しいインパクトを生むわけだが、解散危機にもあったらしいバンドが今までにないアイデアを取り入れながら積極的に変化することで、「これから」を強く意識していることが伺える。轟音ヘヴィネスから哀愁バラードまで驚異の落差を聴かせる#12「The Nameless」、国内盤ボーナストラックである#15「Scream」にしても強烈なものだ。

 前作『Iowa』は極限のヘヴィネスを轟かせて、ある意味一つの到達点となった作品だった。対しての本作は、リック・ルービンと共に新たなスリップノットの音像を追求し、成果を上げた作品と言えるだろう。確かに当初は賛否両論が渦巻いたが、こうしてリリースから経ってみると良い変化だったなあと捉えている人が増えている。安直にメロディアスになったわけでは決して無い。意義ある変化を遂げ、スリップノットは確かに前進したのである。


 

Iowa [Explicit]

Iowa(2001)

 

 

 1stアルバム『Slipknot』で世界中の話題をさらったグロテスクマスク&つなぎ集団の2ndアルバム。タイトルは自分達の出身地より。これが全米初登場3位、日本でもオリコン初登場4位を記録した、とんでもない作品である。売れたということは幾分か聴きやすくなっているのか・・・と思いきや、ここに存在したのは1stアルバムを凌駕する凶悪無比な音の塊。重戦車のごときギターリフと非道なブラストビート、怒りの咆哮が地殻変動を起こす#2「People=Shit」からして残忍さの極みだ。スカウターで戦闘力を図ったら、間違いなく壊れる。

 前作の時点でも怪物のような音であったが、怒りや憎悪をエンジンにここまで激烈な音楽へと昇華してみせるとは驚きである。暴虐のスクリームと怒涛の重低音が鼓膜を押し潰す#3「Disasterpiece」、 #6「The Heretic Anthem」も本当に聴く者に対して容赦がない。完全にリミッターが外れて、一面を焼け野原にでもせんとばかりの破壊力である。それだけでなく、キャッチーな面も整合性の取れるギリギリで生きており、「近づきすぎたらお前を殺してやる」と歌ってるわりに耳馴染みの良い#8「Left Behind」はその典型だろう。もちろん、獰猛さを損なわずにメロディアスな要素を上手く織り交ぜる事ができる辺りが、スリップノットが他と一線を画す理由でもある。

 しかも#7「Gently」や#14「Iowa」といった曲では、Toolを思わせる暗黒プログレッシブで重苦しく精神を攻撃。あらゆる方面から苛烈なエクストリーム・サウンドを志向していることを伺わせる。全体を通して緩急をつけながら、極みの激烈音楽を鳴らす。音楽的な成功も商業的な成功も収めた2000年代のモンスター・アルバムの一枚に間違いないだろう。何度聴いても、この作品に衝撃を受ける。

 最後に僕個人のお話をさせていただくが、この『Iowa』が洋楽で初めてまともに聴いたアルバムである。最初にこれを選ぶ時点でおかしいとは思うが、#2「People = Shit」にしろ#6「The Heretic Anthem」にしろ今までにない稲妻のような衝撃が体中に走った。それはそれは壮絶な音楽体験になったのである。


 

Slipknot [Explicit]

Slipknot(1999)

 

 

 猟奇趣味的激烈音楽集団の記念すべき1stアルバム。完全にふざけている格好・風貌からは、まるで想像もつかない驚愕の作品である。ヘヴィメタルやオルタナティヴ、ヒップホップ等を飲み込んで圧倒的なエネルギーを吐き出す彼等のサウンドは、かつてはニューメタルとも呼ばれたが、新種のラウドロック/ミクスチャーとして世界に与えた衝撃は大きい。

 奇怪に揺れ惑う#1「742617000027」で背筋を震わせ、超絶ドラミングと激重ヘヴィネスが超弩級のインパクトを与える#2「(Sic)」で完全にぶっ飛ばされるだろう(「へっこんだペー」は言っちゃいけないよw)。ヴォーカルにツインギター、ベース、ドラムという編成にとどまらず、2人のパーカッションにDJ、さらにはサンプラーを擁する9人もの大所帯。そこから放たれる過激猛烈サウンドは、あまりにも壮絶なものだ。#3「Eyeless」や#5「Surfacing」、#8「Liberate」にしても破壊力は抜群。特にコリィ・テイラーの鬼気迫るヴォーカルは、初期のスリップノットの一番の武器になっていた。

 当然ながら、凶悪なまでのヘヴィネスを生み出す楽器隊も凄まじい。パーカッションまで交えたリズムの分厚さは特筆すべきものだし、スクラッチやラップ調の歌なんかも入ることでの変化のつけ方も巧い。こういった軽妙さがヘヴィネスの限りを尽くしたサウンドに良いスパイスとして効いているのは間違いないだろう。ポップな面も引き立たせて彼等のアンセムとして君臨する#4「Wait And Bleed」、ヘヴィ・リフとラップで捲したてながらサビはキャッチーに仕上げる#6「Spit It Out」辺りは、実にスリップノットらしい。おおよそ平均して3分台というコンパクトな楽曲設計もまた、アルバム全体のスムーズさに繋がっている。

 いずれにしてもこの9人が提示した激烈な本作は、革新的なものだ。それに加えて、ヘヴィネスの限りを尽くす獰猛なサウンドに対しての奇抜な見た目、このギャップが世界で支持された要因のひとつだろう。100万枚以上を売上げ、想像以上の成果をあげた1stアルバムとなっている。「マジでリアルにヤバイから!」by 出川哲朗、ここから全ての混沌は始まったのである。

この記事が気に入ったら
いいね!しよう

最新情報をお届けします

Twitter でGrumble Monsterをフォローしよう!