相対性理論 ‐‐Review‐‐

2008年に発売された「シフォン主義」でマニアックな人気を獲得し、翌2009年に発売したフルアルバム「ハイファイ新書」がオリコン7位を記録するなど一気にブレイクした不思議ちゃんなバンド。

レビュー作品

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シンクロニシティーン

シンクロニシティーン(2010)

   1月に発表した渋谷慶一郎とのコラボ『アワーミュージック』も記憶に新しい中での2ndフルアルバム。同日には”やくしまるえつことd.v.d.”というユニットの初作も発表になっており(ついでにいうとジム・オルークのバート・バカラックトリビュートにもやくしまるは参加)、4月7日はちょっとした相対性理論DAYとなった。

 第1回CDショップ大賞に輝くなど周囲の盛り上がりから一線を置いての独特のスタンスでの音づくり、確固たるスタイルみたいなのは固持されている。本作においてもやくしまるえつこの耳をくすぐるようなウィスパーヴォイスが主導権を握っているのは変わりない。けれども本作では、その声を生かすために控えめだったバンドサウンドが前作よりも顔を出している。前作でシンプルに徹して淡色だったギターが特に活躍しており、様々なフレージングを響かせながら楽曲の表情を細かく色づけ。やけに主張の強いベースラインも含め、ヴォーカルを殺さないバランスできっちりと癖のあるフィールドを形成している。演奏はそんなに上手ではないけど、ツボをついたつくりをするのが相変わらず巧く、計算高い。荒削りすぎた『シフォン主義』のダイナミズムと『ハイファイ新書』のキュートでしっとりとした魅力が危いバランスの上で重なりあったのがこの『シンクロニシティーン』といえるのではないだろうか。っていうかアップテンポの曲からハウス寄りのゆるい曲、ミステリアスな楽曲が豊かに並ぶこの作品は早くも集大成といえる内容かも。ロック寄りになったとはいえ、ゆるいようでリズミカル、遊び心ある展開の妙、シュールな歌詞のリフレイン、それらによって彼等のポップ性は高まっている。脱力するような空気の中でも癖になるキャッチーさはやっぱり魅力として輝いており、インパクトは無くても愛らしい引力を有しているのが良いところ。特に癖の強い#2はもちろんのこと、#3や#9のようなアッパーな曲も煌いているし、中華風のフレーズを挟みながらゆるい空間を醸成している#5も引き込まれる。新境地となった最後の6分超え#11″ムーンライト銀河”の存在感も心強い。正直、メディアや人々の絶賛っぷりが前作・前々作聴いててもそこまでピンとこなかったけど、この作品でようやく彼女等の良さが理解できた。


ハイファイ新書

ハイファイ新書(2009)

    「ポストYouTube時代のポップ・マエストロ」と公言している相対性理論の1stフルアルバム。メディアに一切顔を出さない戦略ながら、オリコン7位を記録するなどネットを中心に人気が爆発しているこのバンド。

 まず、前作と比べると格段に音が良くなってるのが嬉しいところ(前のは録音環境が悪いのか、音のバランスが異常に悪かった)。楽曲にしても前作のようなアップテンポな曲は無くなり、落ち着いたジャズやハウス系の雰囲気を携えたミドルテンポでほぼ固められている。それが前作には無い奇妙でユニークな味を出していて、癖になる。起伏は全く無いのだが、遊び心が効いた語感のよい言葉としっとりとしたメロディがキャッチーに響き、ゆるゆる脱力系ポップスの魅力を存分に引き出しているように思う。最初の「テレ東」から最後の「バーモント・キッス」までの33分間、不思議かつ多彩な魅力を振りまいてくれる。唄に重点を置いた曲作りにシフトしても、淡く儚げで切ないやくしまるえつこのヴォーカルは相変わらず低熱。だが、キュートな不思議ちゃんオーラ全開で、思わずときめいてしまう。素朴な少女のようで女性らしいフェロモンを所々で出しているところも惹かれる要因だろう。

 ずいぶんと磨かれた個性。淡々と過ぎ去っているようで、耳にするすると入り込んで神経に流れていく謎の毒素。無垢な声に宿る愛らしさ。聴いてても名盤とは思わないんだけど、間違いなく記憶に強く残るタイプの作品だと思う。いつの間にか歌詞を口ずさんでいるし(笑)、繰り返し再生ボタンを押させる魔力が存在してる。「シフォン主義」では完全に騙されたけど、今思うとこのバンドは確信犯的にここまでのことやってるだろうな。


シフォン主義

シフォン主義(2008)

   自主制作で2006年に発売して廃盤となっていたEPをリマスターした再発盤。相対性理論という高尚な理論をバンド名に宿したのに飽き足らず、資本主義を「シフォン主義」ともじったタイトル。それらを見ただけで小難しい内容を想像してしまうが、聴いてみたら驚いた。“素朴でいたって普通”なんだから。紅一点のヴォーカルを擁する4人組のポップロック、 それ以上でもそれ以下でもない。さらに言えばどこにも凄みを感じない、演奏も上手くない。失礼だけど無い無いづくし。だけど、どことないレトロな質感とノスタルジックなメロディ、ゆるくてだるい感じが不思議ちゃんを醸し出している。それがバンドの特徴として人々の心を掴んでいるのだ。やくしまるえつこのキュートな歌声も妙に愛らしいので、魅力的なのも理解できる。あれで「ラブ ラブ ラブずっきゅん」なんて歌われると確かにヤバイ(笑)。このダルダルな感じも余計に耳を引いている。歌詞はとてもシュールで、響きがよく頭に残るその言葉の数々は、おもしろいことは確か。

 全体的に歌にしろ曲の展開にしろうまくツボを外している感があり、聴く側までもどうでもいい気にさせてしまう。ここまで無垢だからもろ天然だと思うが、これを確信犯でやっていたとしたら、相当な曲者。今までにいなかったタイプのおもしろいバンドであることは間違いないだろう。それにしてもこのバンド、なんでこんなにベースの音量がでかいのかが気になる(汗)。

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