Steven Wilson ‐‐Review‐‐

説明不要、現代プログレッシヴ・ロックの最重要バンドのひとつPorcupine Treeの頭脳。


Grace for Drowning

Grace for Drowning(2011)

   Porcupine Treeを司るスティーヴン・ウィルソンのソロ・アルバム2作目。ジャズ・ミュージシャンを多数起用し、独自のコンセプトを重視した2枚組の構成で、深い音楽の探究を変わらずに続けている。聴いてて印象に残るのは、静謐と幽玄の美だろうか。キング・クリムゾンを髣髴とさせるような70年代プログレにジャズっぽいアプローチが重なり、さらにはPorcupine Treeの初期の陰鬱な薫りが漂う。メロトロンの揺らぎやシンフォニックな装飾も行いながら、奥行きのあるディープな音像を構築している。間を意識しながら緊張感のある音を並べ、ゆっくりとゆっくりと精神の淵を浸食していく感じ。どんよりとした薄闇の広がる世界に導かれていくようでもあり、独特の時間感覚に巻き込まれていくようでもある。暗欝としている中で、ここまでロマンティックな味わい深さを出せるのはやはり彼ならではだろう。それは、ソロになってもきっちりしている

 ただ2枚組であるがその間に大きな相違はなく、2枚の作品が延長上で流れている感じ。一定の静を湛えたプログレ/ジャズを昇華した演奏に、感傷的なメロディや歌が乗り、時にはアヴァンギャルドな側面を見せたり、ムーディに演出したりと技巧は冴えわたる。前述したようにまったりと聴けることは聴けるが、いつの間にかここではないどこかに飛んで行ってしまってる感覚。また、後半に出てくるサックスとヘヴィ・リフの畳みかけが異様にかっこいいDISC1の#4、しっとりとしたピアノの旋律の上で混沌が拡がる#7、70年代プログレッシヴ・ロックを彼なりの手腕で現代に蘇生させたかのような23分のDISC2の#4など、じっくり聴ける曲調に引きずり込まれる中で覚醒する場面は多い。2枚組にした理由はわからんが(苦笑)、ソロといえどその才覚に唸る作品である。

この記事が気に入ったら
いいね!しよう

最新情報をお届けします

Twitter でGrumble Monsterをフォローしよう!