Swans ‐‐Review‐‐

80年~90年代中期にかけてアンダーグラウンド界に衝撃を轟かせたニューヨークのヘヴィ/オルタナ・バンド。中心人物、マイケル・ジラを中心にとてつもなく硬質で重たいサウンド、悪魔をも飲み込む禍々しいオーラは今でも現存のバンドに影響を与え続けている。バンドは1997年に解散の道を辿るが、2010年に14年ぶりとなる復活作(通算12枚目)『My Father Will Guide Me Up A Rope To The Sky 』をリリース。そして、2012年には全世界を驚愕させた傑作『The Seer』を発表した。

レビュー作品

> The Seer > My Father Will Guide Me Up A Rope To The Sky


The Seer

The Seer(2012)

   世界を震撼させ続ける年季入ったオッサン達の復活2作目。前作も十分すごかったけど、それを軽々と上回るほどに本気の本気。CD2枚組、LPだと3枚組の11曲120分にも及ぶ超大作である。さらに元メンバーのJarboeを始め、LowのAlan Sparhawk と Mimi Parker、Karen Oなどの豪華ゲスト陣が参加。

 円熟期を迎えたSwansというフィルターを通した楽曲の数々は、フォークからオルタナ、ノイズ、プログレ等をごった煮しながら一大暗黒巨編としてそびえ立つ。「このアルバムはこれまでリリースしてきた Swansの作品および、私が作り、関わり、そして想像した音楽すべての頂点だ。」とGira先生が仰る通りに、30年余の経験がここに結晶化されている。鼓膜から精神を磨り潰していくような悪徳のノイズ、近年の滋味深い哀愁を漂わせるフォーキーな歌、不穏さを煽るトライバルなビート・・・。そして、エクスペリメンタルな姿勢と独自の黒美的感覚に支えられた多彩な曲調が作品をより濃密にしている。特にタイトルトラックの「The Seer」は32分にも及び、徐々に力強さを増していく呪術的なビートに引っ張られて煉獄の炎を召喚。後半からラストにかけては暗黒のフォークでシリアスに心の内をえぐる楽曲に仕上がっている。

 Karen Oがメインヴォーカルを務める「Song for a Warrior」から始まるDISC2も圧巻だ。渋い歌と重いサウンドを軸に緊張感を増幅させながら展開し、最後の最後で悪夢のような轟音が噴出する「Avatar」、Jarboeの聖歌のごときコーラスとストリングスが哀しみや孤独感を増幅させる前半10分から一転、後半の9分ではあまりにもドラマティックかつメランコリックな色調に染められた天地反転の「A Piece of the Sky」、Swansらしいエクスペリメンタルなロックを貫いたラスト曲「Apostate」という流れに、有無を言わさず飲み込まれた。

 音楽のひとつの究極を示したとも感じさせる本作は驚異という他ない。この深遠なる境地に達することができるのは、おそらく今のSwansにおいて他にいないだろう。2012年の必聴すべき傑作。


My Father Will Guide Me Up a Rope to the Sky

My Father Will Guide Me Up A Rope To The Sky(2010)

   『Swans Are Dead』という言葉を残して解散したスワンズがまさか復活の道を辿るとは。オリジナルアルバムとしては『Soundtracks For The Blind』から14年ぶりとなる通算12枚目の作品は、決して半端な気持ちで再結成を選んだわけではない事を鋭敏に感じさせる力作である。

 個人的にスワンズは、神秘的な力を持った女性ヴォーカルJarboeがいた頃の作品しか聴いたことないのだが、その彼女は本作には不参加。しかしながら、悪魔がほほ笑むような不穏で重苦しい雰囲気と独特の深みを持ったこの復活作は紛れもなくスワンズ印の妖しい暗闇を湛えている。背筋を凍らせるほどの暗黒ミュージックをここまで容易に示すとはさすだ。負の情感を巻きこみながらヘヴィにうねるギター、荘厳な重みを持ったリズムの上を悪意も哀愁も孕んだヴォーカルがジャケットのような藍色のグラデーションをつけていく。反復を生かしながら刻まれる身が軋むような音色はさらにオルガン、ハープ、マンドリンなどを加えることで、人間の深層心理まで激しくかき乱していき、圧倒する。迎合の意識はまるで無い、彼等なりの構造の美学に基づいて組み立てられていくスピリチュアルな世界は、戦慄を覚えるには十分すぎるほどだ。

 また、本作の特徴といえば曲調の豊かさ。立ち込める音の濃霧と呪文のような歌でひたすら深遠な闇を召喚する#1に始まって、男の哀愁で勝負するダーク・フォークから、圧殺のオルタナ・ロック、ラディカルな尖鋭性を見せつける実験的な曲、無へと還っていくようなアンビエントまで様々な形を内包することで、底なしの深さと痛烈におぞましい情感をもたらしている。全編を通してネガティヴなフィーリングに包まれながらも、この独自のドラマの描き方が本作に引き込む要素といえるだろうし、退廃の陰りもまた中毒性ある薫りとなって鼻腔をつく。繊細さとダイナミズム、弛緩と緊張のバランス感も素晴らしく、聴けば聴くほどにのめり込む人は多いだろう。

 無二の感性はやはり健在。スワンズたる存在意義にその後の活動(Angels Of Light)における培いを還元した作品に仕上がっており、ファンには納得のいく作品であるだろう。渾身の復活作である。なお、本作は2枚組の限定版も発売しており、その2枚目のボーナスディスクにはワントラック46分という荘厳な曲が収録されていて、凄く評判になっている。っが既に入手困難な模様。

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