The Caution Children ‐‐Review‐‐

アメリカ・フロリダの激情ハードコア/ポストハードコア・バンド。Tokyo Jupiter Recordsより2008年に1stアルバム『Vacations』をリリースすると、2009年にはThe Black Heart Rebellionと共に日本ツアーを敢行し、好評を博した。2011年には2ndアルバム『Unknown Lands』を発表。更なる飛躍を遂げていった2014年2月には3rdアルバム『And Baby / Safe Crusades / No Judgements』をリリースした。

レビュー作品

> And Baby / Safe Crusades / No Judgements > Unknown Lands > Vacations


tcc3rd

And Baby / Safe Crusades / No Judgements(2014)

 新たにギタリストを迎えて5人体制で完成させた約2年半ぶりとなる3rdアルバム。レコーディングに、Deafheavenを手掛けるComadreのJack Shirleyを起用。国内盤はもちろん歩みをともにしてきたTokyo Jupiter Recordsからで、レーベルの記念すべき第30弾リリースを飾っている。

 アトモスフェリック/シューゲイザー的なアプローチを取り入れ、他とは一線を画すロマンチックな激情系ハードコア/ポストハードコアで、人々の涙腺を緩ませてきた彼等。本作でも土台となる音楽性は、これまでの継続で揺るぎないものだが、なお一層自身のあるべき姿を徹底して追い求めているように感じさせる。一大トピックのひとつである、ギタリストの追加によって、音像の厚みや空間的なアプローチはさらに説得力は増した。それでも小奇麗にまとまることはなくて、ラフで荒削りな感触は健在。Jack Shirleyが助力していることもあってか、Deafheaven『Sunbather』のように激情系のアグレッシヴさを保ちながら、甘美さと光への推進を強く感じさせる。それを本作のほとんどを占める3分未満の曲で実現しているのだから、余計に驚かされてしまう。

 作品を通しても全10曲約28分とこれまでのオリジナル作品で一番の短さながら、スケール感やダイナミズムは過去最高の仕上がりのように個人的には思える。なかでも#2「Psalms」は、初期衝動そのものの猛ラッシュをかけながら、持ち前の美麗さや浮遊感が大いに際立っている佳曲だろう。体の芯から熱くする多様性を持ったエモーショナルなハードコアを標榜し、それが見事に研ぎ荒まされているのがわかる。また、掠れた声でピュアな感情一杯に泣き叫ぶヴォーカルもいつも以上に心に刺さる。

 安らぎをもたらすアコースティック・ナンバー#7「Moon Museum」以降の終盤を飾る3曲では、さらに芸術点を高めていく。澄んだ星空の世界が広がるかの様な美しい旋律から、性急で力強いハードコアを繰り広げる#8「Knowing About Bombs」は、彼等を代表するエモーショナルな楽曲に仕上がっているし、ついにenvyやDeafheavenばりのスケールを聴かせることに成功したように思うラスト#9「Superb Lyrebird Recording」~#10「Letter to My Child」の流れには、思わず涙腺が緩む。ブラックメタル系の要素は無いとはいえ、”コンパクトSunbather”的な感触すら覚えてしまうキャリア屈指の力作に仕上がっており、一層の高みへと飛躍することを予感させる一枚だろう。繊細でいて壮絶なハードコアの結晶。


unknownlands

Unknown Lands(2011)

   アメリカ・フロリダの4人組激情ハードコア/ポスト・ハードコアバンドによる3年ぶりの2作目。その間の09年にはThe Black Heart Rebellionと共に初来日公演も敢行した。リリースはその招聘も行ったTokyo Jupiter Recordsから。レコーディング/ミキシングにPianos Become The TeethのMike Yorkを起用している。

 思わず”誕生”という言葉が浮かんでしまったSE的な#1に続き、悲痛な叫び声と情熱を叩きつけるような演奏が炸裂する#2で一気に持ってかれた。浮遊感も湛えたアトモスフェリックなアプローチも取り入れながら、繊細なメロディを掻き鳴らし、刹那に激情がスパークするそのサウンドが執拗に胸を熱くする。リリース元のTokyo Jupiterのオーナーは、本作を初めて聴いたときに迷わずenvyの最新作『Recitation』を思い浮かべたと語っていたが、激情と叙情を湛えながら勇ましく推進していくポストハードコアに、自分も心を強く動かされてしまった。

 確かにenvy色は凄く感じる。一筋の光が差していくようなメロディや展開、静と動のコントラストの生み出し方、全身から魂削って絞り出す絶叫など共振する部分は多いからだ。生を肯定する強さがある事も含めても。しかし、あそこまでのスケール感を獲得するには至っていないが、折り重なっていく感情と共にコンパクトに引き締まった楽曲群のインパクトは大きい。もっとハードコア的なスタンスをベースにしているし、焦燥感や初期衝動も滲み出ている。前述した#2を含め、繊細な蒼さも醸し出しながら眩い光の海に突き進んでいく10分近い#6、涙腺刺激型ポストハードコアで畳みかける#7、展開を重んじながら壮大なクライマックスを鳴らす#10と彼等の魅力が十分すぎるほど堪能できる事だろう。

 特に感じたのは、作り手の想いや浪漫といったものが真っすぐに伝わりすぎること。ここまでダイレクトにストレートに熱くするのは、その様々な情念の蠢きを細部にいたるまでパッケージングした点が大きいように思う。そんな美しく壮絶な一枚である。必然のエモーショナル。


vacations

Vacations(2008)

 The Black Heart Rebellionに続いて、Tokyo Jupiter Recordsの第2弾リリースとして発売されたThe Caution Childrenの1stアルバム。音楽的には初期衝動に任せた激情系ハードコアをベースに、ポストロックやシューゲイザーを取り入れたアプローチで耽美性や浮遊感といったものを突き詰めた作風が特徴となるだろう。憂いを帯びたメロディやシューゲイズ風ギターで奏でるドラマティックな楽曲群は、予想の斜め上を行くほど叙情的である。envyやフレンチ激情系ハードコア等のバンド達を想起させる音像ながら、彼等の場合はもっとエモくてナイーヴ。

 その美しいギターの音色が光輝く世界へと連れ去る#1「Separate Fears」から、破壊衝動を叩きつけるだけのサウンドからはかなりの距離がある事が伺える。また、そこに乗るヴォーカルの極度に枯れた絶唱が非常にエモーショナルで、バンドの特色を大いに決定づけているように思う。#2「Lion Eating Poet In The Stone Den」や#7「Our Movement In Squares」等のわりと長尺な曲では豊かなスケール感、少し甘酸っぱい哀愁を感じさせてくれたりもするし、ユーロ激情系の激しさとスリリングさを感じさせる#4「Slippery Strange」では、ハードコアの情熱を端々に迸らせている。そんな堂々たるデビュー作となった本作は、リリース元のTokyo Jupiter Recordsの流れを決定づけていく役割も果たした貴重な一枚だ。リリース翌年には、The Black Heart Rebellionと共に日本ツアーを敢行。待ちわびた日本のファンを大いに沸かせてくれた。

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