Tera Melos ‐‐Review‐‐

アメリカ・サンフランシスコはサクラメント出身のマスロック・トリオ。とめどなき音符の五月雨を堅牢な構成力で制し、スリリングな展開とハードコアのアタック感で攻めまくるマスロックは数々の人々から称賛を浴びている。現在までに2枚のフルアルバムを発表、ここ日本にも2度の来日経験があり、2010年には朝霧JAMにも出演を果たした。

レビュー作品

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パタゴニアン・ラッツ

Patagonian Rats(2010)

   スプリットアルバムを挟みつつ、なんと5年ぶりに発表となった2ndフルアルバム。軸となっているのは鬼のような超絶的演奏が支える理知的でアタック感の強いマス系のサウンドだが、本作ではスプリットの時よりも歌やメロディにさらに意識が向いている。

 冒頭から柔和な歌が響き渡るこの衝撃。無機質で金属的だったのが嘘のように歌いまくっていて(ついでにいうと、豊かなコーラスワークも披露している)、彼等の経過をしっかりと追ってない方はさぞ驚くことだろう。歌やメロディを巧みにポップの潤滑油とすることで、激しく混沌とした世界に柔らかさや麗しさを加えることに成功。加えて、エレクトロニカ/アンビエント要素もジャンクに混合して、浮遊感と奥行きも感じさせる。

 インディー・ロックの匂いやザック・ヒルのようなアヴァンさまでが意識に飛び込んでくるこの作品は、多ジャンルの柔軟な取り込みと吐き出し、それに足し算も引き算も掛け算も割り算も自由に駆使していて、これまでにない彩りがあるといえるだろう。眼の覚めるようなスリリングなサウンドと晴れやかな歌の鮮烈なる交錯はこれまでと違う興奮へと導かれる。鮮やかに叙情性を引き立たせているのはもちろんだが、根幹をより引き締しめて、鋭角さやスリルが瞬間の切れ味を存分に増しているのも聴き逃せない。緊張感溢れるダイナミズムや独特のエモーショナルに貫かれているのもまた刺激的。

 だた、個人的にはもっと超絶的で激昂するようなインストを彼等に研究してもらいたいという気持ちが強いのは事実。やっぱり首をかしげてしまう部分はあるなあ。カオスなひねくれ具合に明快な歌を乗せてメランコリックに仕上げるのはとてもセンスがいることだとは思うんだけども・・・。マスロックに歌やメロディを上積みして彼等なりのポップ化を目指したこの成果、評価が分かれるところだろう。


Drugs / Complex

Drugs / Complex(2009)

   現在は廃盤となっているEPの6曲とテキサスのマスロック・バンドBy The End Of Tonightとのスプリット盤に提供した5曲を1枚にまとめた編集盤。

 最初に収録されているEP(発売時期がよくわからないのだけど)の6曲は、これまでのTera Melosを踏襲したような楽曲が揃っていて、キャッチーな要素を孕みつつも全身に昂揚を行き渡らせる猛烈なマスロックが非常に強力である。無人の荒野を走る様な独創性。キレのあるリフにタッピングを用いたピロピロギター、変則的展開をものともしない痛快なリズム隊からは、ジェットコースター的なスリルと快感が満ちている。ただ、スプリットの方の5曲からは少し様子が違う。ギターが一本になったことで鮮烈なるギターバトルはなくなり、若干サウンドも大人しめになっているのだけど、本格的に導入した”歌”が叙情の揺らぎを巧くもたらしている。変拍子をふんだんに用い、テクニカルなギターが炸裂しながらも陽性の強い歌が情感をつつく#8のような楽曲がその中でも特に目立つ曲かな。

 とはいえ、#10のようにエフェクティヴな音づくりが宇宙空間へと誘う曲もあって、エレクトロニカとの親和もスムーズ。この柔軟性で自由なスタイルはやはり魅力的に感じ、混沌とした中でもキャッチーに整理できる音作りの巧さを証明している。そんな本作は企画ものではあるが、バンドの可能性を押し広げたと認識できる作品だと思う。


Tera Melos

Tera Melos(2005)

   発売当時はSleeping Peopleと並んで新たなマスロックの光とされていた、奇天烈マスロック・バンド、テラ・メロスの1stフルアルバム(本作の発表当時は4人編成だった)。

 プログレッシヴ・ロックを超越する構成力と演奏力にまず度肝を抜かれることだろう。暴風雨のように音符を乱れ打ちしながら、凄まじい狂騒の展開を見せてくれる。Don CaballeroにHellaを加えてもっとユニークに脚色したらこんな異形な形に仕上がるのだろうか。ハードコアのアタック感とプログレの構築性、それにフリージャズやインプロの閃きにエモ、パンクといった要素までを落とし込んだめくるめくインストゥルメンタル。火花が散るような楽器陣のスリリングな連携には、痺れを覚えること必至だろう。転調に次ぐ転調が全身に電撃を走らせ、奇天烈に乱舞する旋律と変則リズムは激流となって心身を飲み込んでいく。まさにバンド・アンサンブルの極致、ジェットコースターのような音楽といわれるのも納得の混沌具合だ。音符を詰めるだけ詰め込んで、けれども算段しながら配置することでアグレッシヴさと構成力の両方が引き立っている。

 しかしながら、混沌に光をもたらすポップなメロディの挿入が甘い調味料となっていて、複雑でありながらも不思議な中毒性をもたらしているのも特徴的。超高速で行われる解体と構築の連続が肝でありながら、アヴァンギャルドかつキャッチー、そんな言葉で表現されることが彼等の人気を物語っているように思う。一番キレてる#2「Melody2」は何度聴いても最高にアガってしまうし、その他の曲も口あんぐり。最初にして最高傑作を創り上げたといっても過言ではないだろう。このマスの嵐は奇跡の処女作だからこそ。

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