The Angelic Process ‐‐Review‐‐

アメリカ・ジュージア州の夫婦デュオによる、アンビエント/シューゲイズ/ドローン・ユニット、The Angelic Process。Nadjaをも凌駕する絶対的音圧とアンビエント/シューゲイズ要素の融合で、圧倒するインパクトを誇るサウンドスケープを構築。その音、その世界観は人類が神聖なる領域にまで達した事を意味するような気さえする。しかしながら、この作品を発表して以降、夫のK.Angylusの右腕はもはや演奏できなくなるほど重病化し、翌08年4月に音楽による表現を失った彼は亡くなった。


Weighing Souls With Sand

Weighing Souls With Sand(2007)

 驚異の音圧が然るべき絶望へと放り込む作品だ。ジョージア州アセンズの夫婦デュオによる2007年発表の3rdアルバムは、とてつもない破壊力と絶望感に苛まれる恐ろしさを誇っている。例えるなら薬漬にしたJesuとNadjaの邂逅か。といっても聴く人はみな、これを聴けばNadjaを思い浮かべることだろう。SUNN O)))やNadjaとタメを張る奇天烈な轟音に、時空は一瞬にして歪む。憂鬱から生まれる絶望感をテーマに、過剰に負の怨念を吹き込んだ吹雪のようなノイズには唖然とする他なく、この世の果てまで吹き飛ばされる。深い悲しみを背負った哀切なイントロから分厚い轟音が問答無用で炸裂する#1が本作の全てを物語っているではないか。超重厚な迫力とスケールで迫りくるこの音像は相当なインパクトを誇る。

 ただ、アンビエントな揺らぎやシューゲイズに寄りそった音色があれど、リフによる細かな息遣い、どっしりとしたリズムの刻み、ささやきと絶叫の交錯と意外とロックしている印象。上下動の蠢きは天国と地獄への往来を表しているようにも個人的には思えるし、ドラマティックな展開で1曲1曲をしっかりと完結しているスタイルも惹かれる点だ。しかもこの手のバンドにしては曲が5~6分とそこまで長く無く、最長でも10分を切っているのも特徴に挙げたい。轟音の裏で祈祷するかのようなヴォーカルは前述したようにJesuを想起させるし、所々にメランコリックな叙事性を含ませたり、仄かに神々しい響きを持っている点は重さの中に浮かび上がる浮遊感の同居にも繋がっているように思う。嵐のようなノイズの奔流による恍惚感は圧倒的。絶望はどこにあるのか?絶望はここにある。ただ、その先には美しさも存在している。

 しかしながら、バンドは既に活動を終了。夫であるK.Angylusの右腕が不自由になったことで演奏ができなくなったからだ。そのことに絶望したのが原因だろう、翌2008年に彼は不思議な死を遂げている。だが、その超人的な音圧が既に伝説化、彼等の存在を僕は決して忘れることはないだろう。

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