The Books ‐‐Review‐‐

アコースティックの音色と電子音を巧みに織り込んだフォークトロニカで、自らの地位を確立したニューヨークのデュオ。その才能はブライアン・イーノ、細野晴臣も称賛を送っている。

レビュー作品

> Lost And Safe > The Lemon of Pink > Thought for Food


Lost & Safe

Lost And Safe(2005)

   2005年発表の3rdアルバム。本作も2011年3月にリマスター&新装アートワークで再発された。これまたブックスらしい特色の出た作品で、染み入る様なフォークな味わいと美しいエレクロトニカの意匠が胸を打つ。前々作、前作の成功に引き続いて、本作でもフォークトロニカの雄としての存在感を大いに発揮している印象だ。これまでよりも幾分かシンプルになった気もするのだが、歌心というのを一番感じさせる内容になっていて、人肌の温もりが引きたった内容。様々なエレメントを集積した豊かな音の広がりはそのままにして、歌に重きを置いていて聴きやすい。もちろん、民族楽器等を巧みに織り交ぜた優雅な生演奏の響きには耳を奪われるし、独特の変相を遂げるリズムもかなり凝っているし、彼等の代名詞といえる様々なサンプリング・ソースの使い方も流石。それを抑揚をつけながらきめ細かくエディットし、心地よくノスタルジックな感傷に浸れる音絵巻へと変えてしまうのをここまで上手く表現できるのは、ブックスを置いて他にいない気がする。全11曲の中で絶えず流転し続ける景色は、ブックスの魔法によるものであり、ブライアン・イーノを始めとしてこのデュオに嫉妬を覚える人が続出するのも無理はない。


Lemon of Pink

The Lemon of Pink(2003)

   2003年発表の2ndアルバム。こちらもPitchforkを始めとして世界各国の専門誌から高い評価を得ている。ファッションブランド「FRAPBOIS」2004春夏時に店内で使用された事もファンの間では話題。前作に引き続いて2011年2月にTemporary Residenceからリマスター&新装アートワークで再発された。

 基本軸はフォークトロニカで変わらないが、前作よりは軽やかな感じになっていて、個人的には優美さとユーモアも増した印象を受ける。爪弾かれる牧歌的なアコースティック・ギターや荘厳なストリングスが琴線をくすぐる生楽器の優しい音色、多彩な声を材料にしたサンプリングのコラージュが本作もまた見事。ハンモックの上で寝てるような心地よさ、それにプラスして不思議なユーモアに溢れた世界を作り出している。素材の選び方に始まり、音の切り貼り/配置の仕方、生楽器とエレクトロニカの融合によるオーガニックさ、美しいノスタルジーとポップ感覚、どれをとっても一級品。隙間の生かし方も上手く、それがシャレた間を作って落ち着いた印象すら与えている。また、本作でいえば、#3「Tokyo」という曲で日本語(「気をつけてくださいよー」、「お父ちゃーん」など)が聴けるのも醍醐味のひとつ。とはいえ、この作品からはアジアンなテイストのみならずもっと多国籍なイメージも浮かび上がってくるのが面白い。優しく郷愁を訴える絵本のような世界へと結実していく本作は、彼等のセンスがさらに鋭敏に研ぎ澄まされた秀作である。


Thought for Food

Thought for Food(2002)

   アメリカ出身のNick Zammutoとオランダ出身の2人組によるThe Booksの1stアルバム。Pitchforkで10年間のBEST200アルバムの一つに選出された注目作である。2011年1月にTemporary Residenceからリマスター&アートワー新装で再発された。

 基本はカントリー/フォーク風のアコースティック・ギターが静かに時を刻み、バンジョーの音色が華やぎをもたらしては、チェロやヴァイオリンが荘厳な色と重たさを持って鳴り響く。そこに様々なサンプリング・ソースがぶち込まれていく形。それが懐かしくもあり、新しくもあるという不思議な感触を持っている。生楽器とエレクトロニクスの絶妙なバランスでの融合が本当に見事。ブライアン・イーノ御大からも称賛の言葉が届くのも納得がいく。サンプリングの大半を占めているのが様々な人の声(普通に喋っていたり、笑い声があったり、叫んでいたりと本当に多種)なんだけれども、効果音も色々と満載で聴き手をユーモア一杯に楽しませてくれる。#1を聴いたときからおもちゃ箱を開けた時のようなワクワク感があり、そのアイデアの豊富さと展開の凄さに驚きの連続。リズムも表現するのが難しいほど独特な変相を遂げるし、実験的でありながらも楽曲としてきっちりと昇華している。このセンスは凄い。第1作目にして早くも完璧な個性を確立しているといっても過言ではない。リズミカルな展開の弾け方とサンプリングの効果が絶大な#3や華やいだ空気を醸し出すあまりに美しい#7が個人的に本作では印象に特に残る。また、太いベースラインが牽引していく異色な#8も面白い。郷愁とメランコリックな味わい、それをユニークに統括したとても魅力的な作品ですね。

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