Thou ‐‐Review‐‐

アメリカ・ルイジアナのドゥーム/スラッジ・バンド。現在までに4枚のアルバムをリリースし、殺気と重さに満ち満ちた痛烈なサウンドで信者を増やし続けている。

レビュー作品

> Heathen > Summit


heathen

Heathen(2014)

 ルイジアナの極悪無慈悲スラッジ・バンドの約4年ぶりとなる4thアルバム。筆者は、延々の地獄めぐりが続いた前作『Summit』で彼等を知ったわけだが、それは言葉も出なくなるぐらいに衝撃的な作品であった。人を人と思わない激遅激重サウンドはひたすら精神をズタズタにし、乱発するキチガイじみた絶叫も後に続いて細胞破壊。三途の川を渡らせにかかる”キタなスラッジ”として、他のバンドとは一線を画す強烈な個性を彼等は持つことを証明したのである。

 しかしながら、本作はバファリンでも飲まされたのか、優しい一面が顔を出すようになっているのにまず驚く。もちろん、前作でもそういった叙情的な要素が無かったわけではない。だが、『Summit』のジャケ通りの赤黒さを保つほどの配分に抑えられていた。それが本作では、怒りと憎しみの裏側で溜めていた哀感や悲愴感を孕んだギターの音色が結構な頻度で鳴り響く。冒頭を飾る14分の大曲#1「Free Will」、#3「Feral Faun」と相変わらずに徹底したスロウテンポ、地面をのた打つ激重音の反復がもたらす地獄の中で、渋いメロウさと泣きの表現がなんともドラマティックに楽曲を彩っている。

 そして、この界隈では避けて通れない芸術性に関しても、以前に増して意識高く取り組まれており、不気味なSEやチェルシー・ウルフっぽい女性歌唱を交えた10分半にも及ぶ重音葬送歌#9「Immorality Dictates」は、その筆頭曲といえる。効果的に配されている短尺のSEもまた感傷的な余韻を残しながら、次曲へと橋渡し。このように作品としての流れを強く感じさせる点も本作の大きな強みといえる。

  ただ、ここまでの語り口だとThouもついにヒヨったかと思われそうだ。けれども、憎悪が積み上げる音の壁は劇薬になりかねないものであるし、呪い殺すと言わんばかりに怨念を込めるだけ込めたヴォーカルの残虐な濁声は、精神錯乱というプレゼントを送りつけてくる。濁り、強度、重量感と超一級品の持ち味は全く失っいない。それは、これまでのThou節が貫き通された#4「Into the Marshlands 」や#7「In Defiance of the Sages」を聴けば、問答無用で首を縦に振るはずだ。

 それでも、やっぱり引きの部分にフォーカスをあてることで、壮絶な混沌の中に構築美すら感じさせるようになったのが、自身の評価をさらに高めそう。底なしの深淵へ。全10曲約75分にも及ぶあまりに長大で禍々しい魔物語。


Summit

Summit(2010)

   アメリカ・ルイジアナのドゥーム/スラッジ・バンドの3rdアルバム。ひたすら暗く重い音色が五感を覆い尽くす内容に震撼!6曲52分(1曲は短いSEになるので実質5曲)は、アングラな低音がひたすら地面に亀裂を走らせる痛烈な一作である。

 #1の出だしこそブラックメタルのような電光石火の猛進を見せるのだが、その後は激遅激重の無慈悲なサウンドで執拗に引き摺り倒す。悪夢のようなヘヴィなリフ、常軌を逸した獣の絶叫を響かせて終わりなき地獄へと進行。まるで光など存在しないといわんばかりの徹底した重低音での攻めに、体も精神もヨレヨレでどん底に叩き落とされる。同じルイジアナ出身のスラッジコアの伝説・Eyehategodにも驚きを与える圧殺スラッジっぷり。その EyehategodをNeurosisや黒魔法でどっぷりと味付けし、ドープな音像を造形しているのが彼等の特徴といえるだろう。ドゥームばりの分厚い重量感は凄まじいし、Voを始めとして余りに生々しい殺気が渦巻いているのも背筋を凍らせる。けれども驚くのは、Pelicanのようなオリエンタルな艶めきを時に感じさせ、Hydra Head系の要素が地味な割合で入ってる点だ。Southern Roadがリリースする最近のブラックメタル/ハードコア系の匂いを感じ取れる不思議さもある。

 音はめちゃくちゃ凶悪といえるレベルだし、激重リフの反復による重たく巨大なグルーヴが肝だけど、どの曲もじわじわと時間をかけて追い詰めて終盤で展開を見せるところがまたエグい。#2辺りは重く凶悪な音色の中に Neurosisっぽい暗黒精神がしのばされていて、闇の深淵に堕ちていくような感覚も味わえるし、激ヤバの重さと最後の畳みかけが印象的な#4は強烈に効く。管楽器が不穏さを煽る#5は逆にエグさを助長しているし、重たいを基調にしながらも隠していたかのように緩急変幻自在に展開していく#6という驚きの結末もいい意味で期待を裏切ってくれているように思う。ラストのラストでオルガンと哀愁あるコーラスで静かに締めくくるのも悪意に満ちているからこそできること。黒いマグマのように煮えたち、流れた赤黒い血によってできた濁流のような彼等のサウンドは絶対的なインパクトがある。鼓膜をすり潰しては痛烈に体を抉る本作を前に、自分はただただ打ちのめされるばかりであった。

 生々しい悪意と殺気に満ちた重いサウンドを体感したい方は是非。

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