Torche ‐‐Review‐‐

アメリカはマイアミ出身の4人組バンド。ストーナー・ポップなどと評される彼等の音楽は重量感とポップネスが程よく中和されており、ノリやすい。アメリカではISISのアーロンが主宰するハイドラヘッド、ヨーロッパではMogwaiのロック・アクションからリリースと業界から現在注目されているバンドだ。

レビュー作品

> Harmonicraft > Songs For Singles > Meanderthal > In Return


Harmonicraft

Harmonicraft(2012)

 再び4人体制となって制作された、フルアルバムとしては4年ぶりとなるストーナー・ポップ・バンドの3rdアルバム。実に彼等らしさをつきつめている。当然、今回もアーロン・ターナー総帥が表現したとおりに『笑顔でヘッドバンキングできる』 陽気さと爆裂さを備えた仕様。その重戦車のごとしサウンド武装から、小回りの効いたフックを盛り込み、口ずさめる歌メロと共に感情を巻き上げていく。がっちりとした筋肉を思わせるヘヴィネスを下地にしたパワフルなグルーヴ、その上でポップにコーティングしていく術はやはり独特。見た目からしても汗臭いはずなのに(笑)、変に爽快感があるのは伸びやかな歌があるだからだろう。ギターの音色も陽性の光を放つことが多く、キャッチーさにはさらに磨きがかかっている。ブルージーな泥臭さを表現したり、ハードロック風のギター・ソロも放り込んできたり、歌を除けばMars Volataも思わす#7みたいな変態テクニカルな曲を挟んだり、さらには#11のように薄靄のかかったスペーシーなサイケ曲までもが次々と飛び出してくるので、これまでの作品と比べてもアイデアと構成は練られているように感じられた。重量感と躍動感に秀でた恐ろしきインスト#12からBorisを意識したようなドゥーム・メタル#13のラストの流れは特に印象的。捩じ伏せるようなヘヴィネスはあるにせよ、ここまで聴きやすいのは他にない。フー・ファイターズやQOSTAのファンを取り込んでいけそうな音楽なんで、もっと振り向いて欲しいよなトーチに。


Songs for Singles

Songs For Singles(2010)

   ガラガラの08年の来日公演(汗)を挟み、2年半ぶりに投下される音源は8曲で約22分という潔く締まったEPでごわす。その間にはギタリストの一人が大喧嘩の末、追い出されて3人体制となっている。

 まさに日本語解説に付いている行川和彦氏の”ウルトラポップでありながらウルトラヘヴィなサウンド”、これが彼等の音楽を物語っているではないか。キャッチーなメロディを配しながら号砲のように轟くサウンドをベースにして高速で畳みかける。それも驚くようなフックを交え、ヘヴィにうねりながら。#1~#3の陽気なストーナー・ポップの爆進で昂揚を誘い、#4でパワフルな旋回を挟みつつ、#5以降は再び重く厚いサウンドを纏いながら疾走。全体としても確実に陽の因子を帯びながら構成されていて、息苦しさは無い。むしろコンパクトな構成も手伝って、ノリノリで一気に駆けていく。気がかりな点と言えば、ギタリストが抜けたせいで内臓にずっしりと響く圧の威力は以前の作品ほどではないし、スラッジ・ナンバーが本作では披露していないところか。ただその代わりにシューゲイザーっぽい薄霧のようなギターが印象的な#7やいつも以上にポップにビルドアップされた6分超の#8が新要素として華を添えている。現代のシーンと共振しつつも、彼等はストーナー・ポップの方に磨きをかけてきたことが如実に示されたことが本作でわかると思う。あっという間に終わってしまう作品ではあるが、本作もまた笑顔で頭触れ、汗臭さにまみれることのできる一枚だ。


Meanderthal

Meanderthal(2008)

    ライブで日々鍛錬に勤しむTorche(トーチ)の2ndアルバム。いきなり率直な感想をあげて申し訳ないが、これはかっこいい! 初めて聴いてみたときに覚えた稲妻が駆け抜けるような衝撃は忘れられない。約100秒の超絶インスト#1「Triumph of Venus」で聴かせる強烈なフックと強靭なグルーヴの渦に飲み込まれ、続いての#2「Grenades」のぬくもりのあるポップなサウンドとのギャップに驚きを隠せない。頭の2曲を聴いただけで早くもTorcheのテリトリーに引き込まれている自分がいた。

 彼等の音楽はヘヴィでラウド感のある剛力サウンドで地盤を固め、その上にポップなメロディを上乗せしている”魅惑のヘヴィ・ミュージック”といえるだろう。”ストーナー・ポップ”なんて表現されている通り、パワフルなサウンドに加えて思わず弾けるようなノリの良さが感じられ、全体を通してコンパクトでキャッチーな作品に仕上っている。圧巻の圧力で攻め立てる#3,#5を筆頭核に、#6,#11のようにパンクの疾走感と親近感も加味させた楽曲であったり、ラスト2曲(#12、#13)ではドゥーム・ストーナー直系の超重量級の音塊をぶつけるといった幅広いアピールポイントが素晴らしい。Queen of the Stone Ageに近いものを彼等から感じられる。さすがに発売前から評判になっていただけのことはあり、MogwaiやIsisが非常に気に入って、それぞれ自分のレーベルからCDを発売させたというのも凄く納得できる。弱冠、男の汗臭さが目立つが、Isisのアーロンの発言にもある『笑顔で頭を振れる』この作品、おススメでごわす。


In Return (W/CD) [12 inch Analog]

In Return(2007)

   2007年に発売された7曲入りEP。ポップなエキスを多分に注入したストーナー・ポップの2ndアルバム「Meanderthal」から入った人には驚きを与えるだろうこのEPは、漆黒の爆弾があちらこちらで爆発する激スラッジコア。如何ともしがたいパワフルなサウンドはとにかく重くて遅くてド迫力! 全然ポップなところなんてなく(強いていえば、空間的な音使いをする#3が優しいぐらいか)、問答無用で爆音の宴を続けるので重苦しさに秀でた作品といえる。鉄壁のアンサンブルによって猛る音の迫力・衝動には一心不乱で頭振ってしまうし、徹底してこだわったヘヴィなサウンドで作りあげたダイナマイトが終いには脳みそをぶっ飛ばしてくれることだろう。ただ、既存のドゥーム・スラッジと違う点といえば2~3分台で1曲を完結させていること。そのおかげで7曲約20分というトータルタイムで収めている。かといってそれが悪いわけではない。むしろ曲を短かくするのなら酩酊を味あわせるよりも、五感に一発かましてやろうといった強烈な衝動を重視してのことだといえる。十万馬力で豪快に爆走する#2、#4のインパクトは本作でも特に強烈だし、ラスト3曲の激重スラッジ地獄も恍惚への轟音を奏でており、ファンならずとも必聴の内容だ。

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