Trachimbrod ‐‐Review‐‐

スウェーデンの激情エモーショナル/ポストロック5人組。メンバー全員が1990年代生まれという期待の若手。

レビュー作品

> Split (with Sore Eyelids) > A Collection Of Hidden Sketches > Eating People Is Easy


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split -with Sore Eyelids (2013)

 Trachimbrod、Sore Eyelidsのスウェーデンの同郷同志による、胸熱スプリット作品。共に2曲ずつの提供でリリースは、Tokyo Jupiter Recordsより。

 まずは先手のTrachimbrod。5人編成となり、心機一転で制作された昨年の2ndアルバムではソリッドなサウンドと美メロを掻き鳴らし、体中から絞り出すようなエモーションやドラマティックな構成は維持しつつもだいぶシャープになった印象を受けた。そこからこのスプリットの2曲となるわけだが、妙に情感をつつくフックがあり、より明快な歌とメロディがあったりで 軸はかなり陽性といえる。前作を1曲にギュッと凝縮したような哀愁エモの#1から当然のように惹かれてしまったが、躍動感あるドラムに牽引され、伸びやかなヴォーカルが視界をパッと明るくしていく#2「Efect Eyes Closed」みたいな青春時代の昂揚感に溢れた楽曲が彼等から聴けるとは驚き。狙いすぎな気はしないでもないが、この明快さとエモの絶妙な混合は、不思議な爽快感となって表れている。まだまだ若い(確かまだ22歳)からこその挑戦、後ろを振り返るよりも力強く前進する彼等の活躍にはこれからも期待大だ。

 そして後攻となるSore Eyelids。北欧の激情ハードコアの雄、Suis La LuneのHenningとKarlを擁する3人組バンドである。こちらでは本隊で携えるメロディセンスはそのままに、轟音シューゲイズ方面へと舵切った音楽性が魅力的。近年ではシューゲイザーを資本として見事に取り込んでいるバンドは多いが、ここまでエモとの冴え渡ったコンビネーションを聴かせてくれるバンドは多くない。Constants辺りが頭をよぎる独特の浮遊感と重さ、美的感覚が融合した#3、それにインディロックっぽい序盤から、シューゲイズ・ギターと煌びやかなメロディが冴えわたり、セクシーなファルセットも混ぜてくる#4という2曲だけだが、満足する人は多いはず。

 今後の展望を知る上でもチェックしておきたいスプリット作品といえるだろう。


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 A Collection Of Hidden Sketches(2012)

   5人編成となり、”Come Across Trachimbrod”から新名義”Trachimbrod”へと変貌を遂げたスウェーデンの激情エモ/ポストロック・バンドの1stフルレングス。これまでの作品と同じくリリースはTokyo Jupiter Recordsより。

 昨年2月に発売されたTokyo Jupiterのコンピでも変化は顕著だったが、EITS系の壮大な轟音ポストロックをソリッドに激情化。同郷のSuis La Luneを思わせる哀切メロディと蒼き感情が迸る絶叫の応酬が胸に刺さり、熱くする。繊細なアルペジオを中心とした美旋律で引き込む辺りは、前作から通じているものだが、鼓膜をぶち抜くような荒々しいパートが表面化してきたのは頼もしい。メロディアスな印象は変わらずに強いが、中核を成すようになった魂のこもった絶叫と叙情的なサウンドのエモーショナルな合算は胸を焦がすことだろう。哀愁を噛みしめさせるようなギターと小気味良い疾走感が絶妙な#1から、途中からのあまりにもドラマティックな展開が涙腺にくる#3までの流れは、特に強力。緩急や強弱を上手くコントロールしながら、豊かな情緒の振れ幅を楽曲に落とし込んでいる。

 それでも表面的には剛ではなく柔というイメージの方が強く、その優しい旋律は心の内側を包み込んでいく力を兼ね備えている。そして、エモ~ポストロック~ハードコア界隈を越えて引き込んでいけるメロディの良さも確実に強み。鍵盤の調べが艶めく#5や牧歌的な印象すら残す#8のような小ぶりな美麗インストゥルメンタルにしても説得力が大きい。こうした小曲で昂揚感を高めつつ迎えるラスト#9は、envyやGantzを思わせる壮絶なまでのドラマ性に満ちた9分超の楽曲で、大きな感動と共に締めくくる。瑞々しくピュアなエモーションの結晶が見せるクライマックスは、儚く美しい。

 さらにボーナストラックとして、ファニーな電子音を基調としたエレクトロニカよりの#10、そしてまるでFenneszやTim Heckerを思わせる#11といった本作曲のリミックスを2曲収録。こういった試みもまた非常におもしろい。


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Eating People Is Easy(2009)

   まだ”Come Across Trachimbrod”名義であった2009年に発表した7曲入りEP(+この頃はまだ4人編成)。国内盤はTokyo Jupiter Recordsより。激情のエッセンスを細かく塗しながらも、Explosions in the Skyのような叙事的で物語性の高いサウンドスケープがキラリと光る一枚である。とことん激しく絶叫するヴォーカルを除けば、この音は間違いなくポストロックの領域。前述したEITSやEfにCaspianといった面々が思い浮かぶほど、端正で綺麗な音使いを効果的に盛り込んだ轟音ポストロックを繰り広げている。

 クリアなギターフレーズ、アルペジオ、トレモロ等はあまりにも美しく、それらが連動しながら叙情の大海を奏で始め、屈強なドラムの殴打と数多の修羅場を潜り抜けてきた感のある激情型の絶叫ヴォーカルを伴ってラストにバースト。envyが見せる様な荒涼とした風景へと発展していく。ポストロック的なアンサンブルの重ね方や耳を傾けざるを得ないメランコリーが肝ではあるが、要所での豪快なダイナミズムはかなりのものだし、体の芯から熱くするような絶叫には他バンドとの差異になりえる個性も備えている印象。10分近い#2、#6にみられる徹底してドラマティックに練り上げていく様も魅力的だし、出足の#1や#3のようにコンパクトな楽曲にも洗練された美と心を焦がす激情が完璧に調和していて引き込まれる。キレイめなインストゥルメンタルは聴き手の耳を掻っ攫っていくだろうし、情熱を持って吹きつける轟音も強烈。スウェーデンから登場した彼等もまた大いなる可能性を秘めている。

 先日レビューしたV.A.『Tokyo Jupiter CompirationⅡ』に彼等も参加しているが、こちらでは新名義”Trachimbrod”となって激情型ポストハードコア~ポストロックの中間部をソリッドな楽曲に仕上がっている。5人編成となって初の音源でもあることからチェックは必須でしょう。

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