Triptykon ‐‐Review‐‐

スイスが産んだブラックメタルのオリジネーターCeltic Frost。その中心人物であったトム・ガブリエル・フィッシャーが新たに結成した新バンドがこのトリプティコンになる。Celtic Frostの終作『Monotheist』の路線をさらに推し進め、デス/ブラックメタルの深部までもをさらす彼等の音楽性からは、非常に鮮烈な覚醒と常軌を逸した恐怖に苛まれる事が必至。

レビュー作品

> Shatter > Eparistera Daimones


Shatter-Eparistera Daimones

Shatter(2010)

   暗黒のヴェールを脱いだデビュー作から早7ヶ月というスピードでリリースされた待望の5曲収録のEP。6月のEXTREME THE DOJOにおける衝撃的なパフォーマンスが未だに印象深いのだが、このEPもデビュー作のおぞましい世界観と暗黒神としての威圧感を受け継ぎ、強力な内容となっている。

 まずは冒頭を飾る#1「Shatter」でぐうの音も出ないほど不穏を掻き立て、痛めつけ。どす黒いリフとうめくようなトムのヴォーカルが閉塞的な世界を汲み、艶めかしい女性ヴォーカルが背筋をさするように切りこんでくるこの曲で本作の出来を確信することだろう。実はデビュー作の国内盤のボーナストラックとして収録されていたりするけども(私は1カ月発売が早かったこともあって輸入盤を購入)。そして、未発表だった#2、#3へと突入していくわけだが、#2は邪悪なる炎にじわじわと焼かれていくようなミッドテンポの長尺曲で、#3は神経をミクロレベルで威嚇するような不穏なSE。

 続く#4、#5はライヴ音源で2曲共にセルティック・フロストの曲をセルフカヴァー。#4「Circle Of The Tyrants」はもはやセルティック・フロスト時代からお馴染みの名曲で、Roadburnフェスのパフォーマンスを収録。骨身を削るその威力はまるで衰えてないどころか凄みを増している。#5「Dethroned Emperor」はDarkthroneのヴォーカルを迎えて凶度が高まっているこちらも凄い。デビュー作がフロック出なかった事を証明する好盤であり、5曲ながらもこの禍々しさと重厚さは、独特の闇の美意識を貫きつつも身をキリキリと痛めるような力が備わっている。


Eparistera Daimones

Eparistera Daimones(2010)

   ついにヴェールを脱いだ元Celtic Frostの首領トムによる新バンドの1stアルバム。強烈すぎるアートワークは、セルティック・フロスト『TO MEGA THERION』に続いて25年ぶり二度目のコラボレーションとなるH.R.ギーガーによるもの。

 オープニング曲のやけに長いイントロから『ヴッ!』でスタートした時は変わってねえと思って笑ったものだが、作品を聴く限りトム・ガブリエル・フィッシャーの業火は未だにどす黒く邪悪な色で燃え続けている。Celtic Frostの最終作『Monotheist』の延長戦上にある作品であることは間違いないのだが、大作志向が強まり、10分を超える2曲を始めとして9曲約72分という重たい構成。故に憎悪・怨念の濁流は超肥大化し、おぞましい世界が構築されている。曲調もミドル/スロウを中心としたドゥームに近いものが多く、重厚すぎる鈍色のリフと地を揺らす強靭なリズムが破壊的グルーヴを支え、修羅を潜り抜けてきたトムの歌いまわしも相変わらずの存在感で、曲に怨念を吹き込む。一音一音の鳴りはとにかく強烈で、脳髄を軽く粉砕してしまう。

 彼らしい特徴はしっかりとトリプティコンにも受け継がれており、この生々しい狂気と地獄の質感は闇に漬かってから帰還したのかと思えるほど。速さと重さの精度を生かして11分に渡っておそるべきインパクトを与え続ける#1の始まりからもはや圧巻だが、危険な雰囲気プンプンの重圧的サウンドの中で時に耽美なフレーズが差し込む#2も凄い。陰惨で悲劇的な雰囲気は実にエグイ。そんな中でも、血みどろの悲惨な情景を構築する爆撃ブルータルデスラッシュ的な#5にはぶったぎられるし、死霊が天へと昇っていくかのようなインスト#4、女性ヴォーカルを起用してミステリアスな浮遊感をかもし出す#8などのアクセントもよろし。しかしながら19分にも及ぶラストの#9では圧殺の地獄ドゥームで完全に息の根を止めにかかる節操の無さ。闇の深さを雄弁に物語る一枚となっている。

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