This Will Destroy You ‐-Review-‐

テキサス出身の轟音インスト・ポストロックバンド。流麗な叙情性と有無を言わさぬ轟音が交錯する音の世界は人々を確かに魅了する力を持っている。05年のデビュー作『Young Mountain』が海外紙の”Top 50 Instrumental Albums of 2005″を得たのをきっかけに一気に世界的評価を高めると、08年発表のセルフタイトルの2ndもまた高評価を獲得。ライヴパフォーマンスにおいても称賛されることが多く。世界各地のフェスにも数多く出演している。2011年にはSuicide Squeezeに移籍しての3rdアルバム『Tunnel Blanket』をリリース。轟音ポストロックの海峡を超えた映像性と物語性の高いインストゥルメンタルでさらに多くのファンを獲得しそうである。

レビュー作品

> Tunnel Blanket > This Will Destroy You > Young Mountain


Tunnel Blanket

Tunnel Blanket(2011)

   HellaやRussian Circles等が在籍するSuicide Squeezeに移籍しての約3年ぶりとなる3rdアルバム。単純に轟音ポストロックと表現することが畏れ多いバンドになったなあというのが聴いてみての率直な印象である。バンド名にある破壊性が一番強い作品に仕上がっているといえるのではなかろうか。正統派ともいうべき美麗な静パートと猛々しい轟音ギターによる動パートのクレシェンドを軸としていたが、本作では息が詰まるほどの緊迫とした空気の中で荘厳で重たいサウンドスケープを丹念に織り上げている。降り注ぐノイズや陶酔感あるドローンといった要素を強めて、一段上の領域へ。GY!BEやMONOのような重たい終末観と心が痛むほどの悲劇的な美しさを表出し、さらにはTim HeckerやYellow Swansを思わせるノイズの表現力にも勇ましく足を踏み入れている。ゆえに作品の持つ深度が圧倒的に違う。

 ギターの鳴らす一音一音、ドラムの一打一打が精神的な意味で格段に重たくなっており、細かく配置されるエレクトロニクスやグリッチ・ノイズなどもまた悲壮感に拍車をかける。そんな荘厳で厳粛な響きが軸となっているがゆえに悲哀と絶望が作品を通底しており、この音世界は陰りのある美しさや儚い破壊性を内包しているように思う。彼等の持っていた純度の高いメロディやわかりやすい静と動のアプローチによるカタルシスは存在感を薄めたが、作品の持つ映像性や物語性は過去の2作と比べてもかなり高いレベルに至っている。各曲が別れてはいるものの地続きの壮大なストーリーを1時間超かけて奏でているようなそんな印象も強い。本作はまさしく深化と表現すべきものだろう。聴き手の精神の奥深くに問いかける様な作品に仕上がっている。

 物静かな導入部から堰を切ったかのように冷たい吹雪の様な轟音が延々と身も心も締め付ける12分超の#1に始まり、まるでTim Heckerとリンクした美しいノイズ・ミュージックを展開する#2、MONOのような荘厳かつ重厚なストーリーを繰り広げていく#3と序盤でその世界に呑まれていく。絶望の真ん中で悲壮な轟音を鳴らし続ける#7もまた精神の深くまで音に支配されていくような感覚。正統派のポストロックからの脱却を試み、TWDYは違う境地に確実に至っている。その中でピュアな音色が色めきだつ#5のような曲に安心感を覚えたりも。

 正直に言えばこの変化は従来のファンに簡単に受け入れられるものではないように思う。だが、ポピュラーな部分よりもインストゥルメンタルの深淵に踏み込んだ本作を評価されるべきだろう。前述したようにGY!BEやMONOのように荘厳かつ重厚な世界観を打ち立てるバンドに惹かれる人は、雄弁さと破壊性を持って迫るこの音世界に入りこむ人はきっと多い。哀しみの底から浮かび上がる生命力を表現したかのようなインストゥルメンタルは、彼等の表現力がさらに高まった事の証明だ。


S/T

This Will Destroy You(2008)

   轟音インスト・ポストロックバンドThis Will Destroy Youの1年半ぶりとなる2ndアルバム。流麗な叙情パートでグイグイと心を引き込めば、雲上を突き破る圧巻至極の轟音パートで一気に理性を奪い、迸る情熱の濁流に飲み込まれる。凄まじい轟音タペストリー。静から動へと順当に移行するその様は王道ポストロックそのものであり、Explosions In The Skyや初期Mogwai、それに日本のMonoやOvum等の正統派のバンドとイメージは重なる。そして、彼等の音楽もまた人々を引き付けて止まない魅力に溢れている。その切ないメロディはノスタルジックな感情を奥底から呼び覚まし、悠然としたリズムの波は昂揚を高め、猛り狂う轟音の嵐は恍然とした感覚に陥れていく。そこに絡む詩情のエレクトロニカや壮麗なストリングス、荒いノイズもまた見事な輝きを放っている。惑うこと無い壮麗なる轟音ポストロックには好みであるがゆえに、物凄く引き込まれてしまう。淡々とした曲の展開から炸裂する激情が悲壮ムードを吹き飛ばし、脳髄をこれでもかというぐらいに揺さぶる。特に#1の雄大でダイナミックな音の渦は圧巻で、本作の中で抜きん出てかっこ良いと思える曲。そして、コンパクトながら珠玉の恍惚感に包まれる#3も素晴らしい。ただ、もうちょっと緊迫感があった方が良かったのと手堅いといった印象が拭えないのが難点に思うのだが、正統派の奏でる叙情と轟音のコントラストにはやっぱり真っ直ぐな感動があって美しい。


Young Mountain

Young Mountain(2006)

   テキサス出身の4人組による1stアルバム。真っすぐに人々の胸を打ち抜く轟音インスト・ポストロックである。御多分に漏れず、彼等も初期モグワイや同郷のExplosions In The Skyのように静から動へと徐々に転換していくインストゥルメンタルを身上としているのだが、気の衒った事のないシンプルさで昂揚感を煽る様が特徴といっていいだろう。可憐な鍵盤による装飾を挟むものの、純度の高いメロディやノスタルジックな旋律が折り重なり、圧力を高めながら美しい轟音へと発展していく。丁寧に縫い合わせていくアンサンブルの妙は繊細さと力強さを浮かび上がらせ、泰然としたリズムの脈動やフィードバックの壮麗さも強烈に感情を煽ってくる。このドラマティックな楽曲群は美しさ、心地よさ、昂揚感が半端ない。何より単純に真っすぐに心を射抜いてくれる。静→動への王道アプローチが蔓延る昨今においても、彼等が繊細かつ大胆に造形するストレートな音像は、凡百のポストロック・バンドを凌駕するまでに至っているといっていいだろう。とてもスマート、そしてシンプルな構成力を持ってして圧倒的な昂揚感を運んでくれるのはEITSと遜色ないかも。特に5分にも満たない短い振り幅で激しく美しい音楽の神秘を体感させてくれる#1「Quiet」が素晴らしい。静と動のクレシェンド、そして風景を奏でるかのような物語性の高い曲の数々、テキサスからまたひとつ凄いバンドが現れたのであった。

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