Tycho ‐‐Review‐‐

サンフランシスコのScott Hansenによるドリーミー・シューゲイズ/エレクトロニカ・プロジェクト。

レビュー作品

> Awake > Dive


Awake

Awake(2014)

  昨年にはTAICOCLUBで初来日を果たした、ティコの約2年ぶりとなる3作目。前作では、Scott Hansenによるソロ・プロジェクトとして、チルウェイヴに接近した優美なエレクトロニカを創り上げたのをよく覚えている。

 しかしながら、本作はさらに飛躍すべく、昨年のTAICOCLUBで披露したバンド編成そのままで制作されたという。そのため、リズミカルで骨太なベースとドラムを中心に生音の占める割合が増え、ポストロック色が濃くなっている印象。確かにミニマルな展開が高める昂揚感は、個人的には前作以上の心地良く感じられた。それでいて上品さと親しみやすさを備えたカラフルな電子音が、絶妙なバランスで絡まってくる。表題曲#1「Awake」におけるトロピカルな南国気分の味わいは格別であるし、幾つもの電飾を重ねたように一層の煌びやかな彩りをみせる#3「L」もまた本作を代表する曲だろう。反復で快感を誘いながら、ノスタルジックに訴えかけるメロウな音作りはもはや職人技。

 それに淡いシューゲイズ模様は変わらずだし、#2「Montana」や#5「See」のような4つ打ちのダンス・チューンもしっかりと機能。アコースティックな音色も交えながら、夏の終わりを告げる様な風情ある#8「Plains」という感傷的な曲をラストトラックに据える辺りも良いですね。本作を聴いて、ティコはこの界隈だとずば抜けて好きだなあと改めて思った次第だ。国内盤にはAmetsubによるリミックス・トラックを収録しており、煌びやかな電子音の瞬きと温かい春の海が広がっていく様に、思わず感動する。


Dive (ボーナス・トラック収録/正方形紙ジャケット仕様)

Dive(2011)

   サンフランシスコのScott Hansenさんによる5年ぶりとなる3rdアルバム。これは本当にメロウでドリーミーなエレクトロニカ/IDM。懐かしく胸に染み入り、清涼感のある音が鼓膜を伝って全身を癒していく。四つ打ちも交えたゆったりとしたビートに、柔らかなシンセやギター等をメランコリックに重ねて、非常にまろやかな味わい。エフェクトをかけて霧のような拡がりを見せたかと思うと、明確なメロディが顔を出してきて、鮮やかにかつ幻想的に交わっていく。Boards of CanadaやUlrich Schnaussと形容されるのも納得の音響である。優しく体を包み込むような温かさ、メロウで懐かしい感触はとても親しみやすい。曲によっては強く打ちだされるビートがダンサブルな昂揚感を煽ることもあるが、The Fieldのようにシューゲイズを取り入れて白昼夢のような時間を提供したりもする。また最近のチルウェイヴとも賢く親和しており、時代を読みながらの構築はなかなかのもの。先行シングルとなった#2「Hours」は本作でもキーとなっているし、続く#3「Daydream」で聴かせるアコギの旋律を交えたオーガニックなエレクトロニカには思わず涙腺が緩む。シューゲイズ・テクノ風味を効かせたアブストラクトで昂揚感ある#4「Dive」、それに本作では一番温かくノスタルジックな締めくくりの#10もいい味を出している。全12曲約60分(国内盤ボートラ2曲含めると)、ゆらめき、きらめき、まどろむ柔らかな音響がピュアに胸打つ良作。

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