イタリアが生み出したハイパー・スペース・スラッジ/ドゥーム/ポストメタル3人組。空間に歪みを起こす破壊的な重量感、宇宙とも交信するスペース感覚、トチ狂った感性を持ち合わせたとてつもないサウンドで世界を沈めにかかる。現在までに6枚の作品をリリースしており、その作品やライヴでの共演がNeurosisに認められてNeurotと契約するまでになった。
レビュー作品
> Oro-Opus Primum > Eve > Idolum > Supernaturals Record One > Lucifer Songs
Oro-Opus Primum(2012)
イタリアの激重魔神の6作目。これまでの作品やライヴでの共演がNeurosisに認められて、ついにあのNeurotからのリリースです。本作は10曲のマテリアルからなる『Oro』の2部作の前編で5曲を収録している。とはいえ、作風はこれまで通りで、スペーシー&アンビエントを処方しながら宇宙へと放り込まれる超人的ドゥーム/ポストメタル。イケナイ電波を放出し続ける様なシンセサイザーの演出に、イケナイ暗黒へとゆっくりとだが確実に突き進む激重リフ、人生を投げ捨てたイケナイ絶叫による神秘的かつ黒々しいエネルギーを持った震撼確実のヘヴィ・サイケデリック絵巻でございます。もはや、この作風では完成に近づいた様な印象も強い。心地よい宇宙遊泳から急に禍々しくも重いサウンドが波動のように押し寄せる13分超の#1からキめ、本作ではより一段とヘヴィさと中毒性に拍車がかかる#2と続き、そのままラストまであらゆる欲望を奪い去る様な無気力な宇宙が広がる。やはり、Lentoと並んで凡百のバンドではまるで太刀打ちできない凄み。初めて耳にする様な人には圧倒的なインパクトを植え付けることだろう。しかし、前作の『EVE』に引き続いて個人的にはやや控えめな印象で、コンセプチュアルなアート性により気を遣っている感じを受けた。2部作の後編、『Oro-Opus Alter』は秋にリリースされる予定だ。
Eve(2010)
イタリアのハイパー・スラッジ/ドゥーム/ポストメタル3人組の2年ぶりとなる5作目。かつて聴いたことあるのは3枚目にあたる『Lucifer Songs』のみだが、震度8クラスの大地震を確実に引き起こすであろう凶悪で超重い大轟音に戦慄が走る。Electric Wizardをも脅かす激重リフと空間を圧す強力なリズムの鳴りが希望の無い宇宙へとずるずると引き摺っていくこの感覚、異様なまでに恐ろしい。徹底的に追求した激遅激重による地獄沼、個人的にはそんな言葉が浮かんでくる。圧の威力の半端なさ、妖気を存分に纏ったサイケデリック、宇宙にも天国にも地獄にもいけそうな危険なトリップ感、どれもが凄まじいインパクトを残す。恐怖心を煽る呪術めいた語りといい、薬と重低音に酔った末のラリった絶叫といい、摩訶不思議な電波を発するシンセといい、意外とアイデアは多彩でHawkwindのようなスペース感覚を有していることも伺えると思う。故にElectric WizardとHawkwindを合体してさらに魔神化したなんて印象も浮かぶほど。時折、Nadjaの吹雪のような轟音や5iveのヘヴィネス大爆音に近しい感触になるときもあるのだが、Ufomammutの音楽から美しいといったイメージは膨らむことはなく、黒々しく破壊的なグルーヴに脳も身体も蝕まれて闇の彼方へ放り込まれる。押し寄せる超大な音の前に抗う事は決してできない。5曲約45分の凶悪な轟音による儀式で確実に圧殺される強力な作品である。
Idolum(2008)
Lentoとのコラボーレション作品を挟んで発売となった4thフルアルバム。そのイケナイ共演がさらに頭のネジを吹っ飛ばしたのか、音そのものが以前にも増して重く凶悪に進化/深化している。
眼球を揺らすほどの尋常ではない異空間の如し音圧、中毒性を増したサイケデリック感覚が強烈な眩暈を巻き起こす。激震のリフの反復、推進力は低いが地鳴りの如し剛胆なリズム、宇宙空間へと解き放つスペーシーなシンセ、奇妙な揺らぎをみせるラリったヴォーカルが聴き手を間違った方向へと引っ張っていく事必至。平衡感覚を破壊するほどの大音圧はSUNN O)))に接近する場面もあるし、激遅激重の悪夢にはElectric Wizard、理知的なポストメタルの意匠はISIS、宇宙系サイケ・トリップ感はHawkwindとあらゆる素養を受け継ぎながら、驚くほどの探究心と表現力で練り上げてドープな重低音世界を築き上げている。それも負に満ちた禍々しいオーラをこれまで以上に作品に注入した形でだ。これまで培ってきた音楽性がここに極まっており、暗黒の臭気と凶悪な重低音グルーヴが渦巻く異空間にひたすら圧倒される。
Lentoとのコラボ作で体現した重低音を徹底追求した#1「Stigma」で危険水域を早くも越え、#2「Stardog」にて窒息しそうなほどの音圧に悶える事になる。本作では、時に浮遊する妖艶な女性ヴォーカルが効果的な目覚めをもたらしたり、#4のようなアンビエント・トラックが背筋を凍らせたりといったアイデアも炸裂。人々を驚くほどの覚醒へと確実に導くのは、それほどの多彩な表現力を有していることだろう。それが何よりもUFOmammutの強みなのだ。そして、マグマがはじけたかのような暴力的で重々しいサウンドを繰り広げる#6で地獄と宇宙を往来し、27分を越えるラスト・トラック#7「Void …Elephantom」で永続的に五感を拡張し続けるサイケの深淵に辿りつく。
積み重なり肥大化する音の集合体が、時空を越えるほどの歪みをもたらす最重量凶悪盤。あらゆる雑音を軽々と葬り去り、奈落と宇宙へのトリップを誘発する極地の音楽がここにある。
Supernaturals Record One(2007)
イタリアが誇る超激重コンビ、UfomammutとLentoによるコラボレーション作品。Electric Wizardをも凌ぐダウナーな激重音楽を創造するこの2組のコラボは予想以上に凄かった。無限宇宙、無限地獄が造形される。
まず冒頭『Infect One』の96秒のインストゥルメンタルから度肝を抜く轟音風景。不穏な電子音を宇宙に飛ばしてシンクロを図る出足から50秒を過ぎた辺りでどす黒い激重リフが全身に襲いかかる。この1分半の攻防で既に茫然自失となった所に対し、続くは#2、#3の奈落を見る巨大な轟音とシンセによる邪悪な宇宙へのトリップ感。時間軸も空間軸をも軽々と歪ませ、聴き手の概念をも塗り替える様な尋常でない音が鳴り響いている。しかも凶悪な中にしたたかにもメロディアスな感性をしのばせている辺りも性質が悪い。エフェクトかけまくりのラリったヴォーカルも相変わらず驚異の音圧の上を気持ちよく泳いでいる。Hawkwindのようなスペーシーな感覚と宇宙への解脱、そこにElectric Wizardの酩酊と覚醒のスラッジ/ドゥーム成分が奇跡の邂逅を果たすこのサウンドは、UfomammutとLentoという2組がドープな線で繋がる事でより破壊力を増している。
#4~#6はLentoが主体となったセッションのようだが、こちらではアンビエント/ドローンのような作りが押し出されていき、より深遠な領域へと突入していく。重厚なリズムの上で揺らめく壮麗なギター・ノイズからは、前半が嘘に思えるほど美しいと伝達したくなるような叙情豊かな一時を演出している。ISISのようなポストメタルもお手の物といわんばかりの思慮深さをみせつけたところで、トドメの#6「Infect Two」へ。これまでの5曲が全てこの1曲に凝縮されたといっても過言ではない阿鼻叫喚のラストであり、ヒトデナシの轟音が最上の地獄へと連れていく。至極圧巻。全6曲40分超、神通力にも似た重低音と中毒性を有した壮絶なコラボレーション作品である。これは間違いなく世界を揺り動かす。
Lucifer Songs(2005)
超絶を体現するイタリアのハイパー・スラッジ/ドゥーム/ポストメタル3人組による3rdアルバム。3人編成とは思えない超重厚な音はこの頃からで、ドープで危険な世界を悪意を持って創り上げている。圧殺&トリップによる快楽陶酔の時間。
Electric Wizard + Hawkwindという音像も既に確立しており、激重リフの反復による酩酊と耳を劈くシンセ音がディープな宇宙へと誘う。しかもその負を引き摺った凶悪な音風景がいずれ異常な快感に変わる奇跡。凄まじいまでの衝撃が全身を駆け抜ける。Ufomammutを初めて聴いた人は間違いなく感覚を塗り替えられることだろう。度を超えたキツさを持っている割に格式高さや神秘性を内包している辺りも恐ろしい。サイケデリックな意匠も施しながらドラッギーな轟音と儀式のような歌声が緊迫感と昂揚感を煽る#2、#4が本作では特に突出した出来栄え。また、エフェクトを過剰にかけまくった唄が脳をぐるぐるとかきまわすこと、シンセ音を始めとしたスペーシーな空間演出の巧さにも舌を巻く。ラスト#5~#6にかけては、不穏な電子音がひたすら妖しい光を放ちながら、漆黒の宇宙空間へと意識を放り投げる。だが、ラスト#6は42分もあるけど、実は冒頭の10分以外は無音のフェイクだったり。というわけで悪意は最後の最後まで垂れ流されてる。凶悪な音塊の表出と共に。
また本作はDVDとセットとなっており、金かかっているのかかかってないのかわからない幾何学な映像が流れ続けて、視覚からもあちら側へのトリップを誘う。とんでもない音楽を創り上げる強烈なバンドは現在でも数多くいるのだが、Ufomammutはその中でも先頭グループを走っているのは間違いないはず。圧倒的な重厚さとトリップ感の組み合わせを奇跡に変える事のできる彼等は間違いなく稀有な存在だ。
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