Ulver ‐‐Review‐‐

ノルウェイジャン・ブラックメタルの異端児Ulver。1stからその異端な姿勢を発揮しており、ブラックメタルにフォークやトラッドといった叙事性を根付かせて、大陸的なスケールを持ったサウンドを創造。近年ではトリップホップやエレクトロニカといった方面の音楽を追求しており、アイデアの枝葉を限りなく広げている。

レビュー作品

> War of the Roses > Bergtatt


War of the Roses

War of the Roses(2011)

   07年発表の『Shadows of the Sun』より約4年ぶりとなる10thフルアルバム。ブラックメタルから異形の進化を遂げていったUlverの記念すべき10作目は、”ポスト・プログレッシヴ”を提唱するあのKscopeよりリリースされた。自分は、ポスト・ブラックの源流と呼んでも差し支えない1st以降は、アルバム通して聴いてない若輩者ですが、レビューさせていただきます。

 前述したようにブラックメタルを出自に、フォーク/トラッド、エレクトロニカ/音響エクスペリメンタル、現代音楽と作品を発表するごとに前衛的な挑戦をし続けてきた彼等。いい意味でも悪い意味でも聴き手を裏切って、己の哲学に基づいた音楽を追い求めてきたわけだが、本作はkscopeから発売されるということで、確かにポスト・プログレッシヴという言葉に接近している感はある。とはいえ、ポーキュパイン・トゥリー等の薫りは少し漂うだけで、徹底してダウナーでアーティステックなサウンドの意匠が施されている感じ。全体的に静謐で緊張感のある雰囲気が蔓延しており、そこに不穏な冷気と独特のロマンといえるようなテイストが落とし込まれている。聴いてないけれども、その辺りは近作のUlverの作風を象徴しているんじゃないだろうか。息が詰まるほど繊細でアヴァンギャルド、稀有な音楽体験ができる場がここに存在している。

 ピアノや電子音をまぶした#1のようにアップテンポなロックを入り口としてわかりやすく持ってきているけど、それ以降は本当に実験的な曲が並んでいる印象。緊張感に縛られるような荘厳なサウンドの中で楽曲を繊細に編み上げている。ギターとストリングスの相乗でゴシック・サイケデリアを築き上げてハッとさせり、クラシカルな重たい空気の中で女性ヴォーカルをフィーチャして背筋をピンとさせたり、アダルトな魅力を振る舞うダンディな歌声で魅了してくれたり。また、北欧の冷気のみならず中近東風の風情を感じさせることもある。さらには、エレクトロニカ、アンビエントの差し挟み方、インダストリアルやトリップホップといった効能、フォーク/トラッドな感性、そして現代音楽にヒントを得てるだろうアイデアなどが多様な音楽性を支えており、ブラック・メタルの要素は皆無になったが、kscopeと共振する様な新しい感性を持った存在である事は作品を通して実感できることだろう。シリアスで幽玄な音空間を見事なまでに造形しており、これから先もUlverの世界はさらに深部へと発展していくはずだ。


Bergtatt

Bergtatt(1995)

   ノルウェイジャン・ブラックメタルの異端児Ulverが放つ衝撃のデビュー作品(1995年発表)。MayhemやBurzum、Emperorといったブラックメタルを一大勢力に持っていった存在からすると、若干、地味に扱われている気がするのだが、フォークやトラッドといった音楽が持つ柔らかい叙情性をブラックメタルと違和感なく配合させた前衛性は、現在でも当然のように高く評価されている。

 美と醜が神秘的なまでのコントラストを描く本作は、後に発売される2ndと3rdとで形成する三部作の第一作。前述した用にノイジーで狂気的な部分をフォーキーな叙情性で包むことで、優しい耳触りと幻想性を実現。インナーサークルに代表されるサタニックとか悪魔崇拝いうイメージからは程遠い音楽となっており、北欧の寒々しさや暴虐の中に崇高なるロマンが落とし込まれた温かみすら覚えてしまうような作品である。それこそブラックメタルという範疇で語るべきではないのかもしれない。邪悪な力を存分に解放する絶叫リフ、ツーバスの猛進など血の匂いがする過激な部分を包むように、アコギの幽玄な響きと物悲しいクリーン・ボイスやコーラスが流れ、切ないフルートやピアノの音色にゆったりとしたリズムが感情にさざ波を立てていく。無慈悲に陰惨なサウンドもやはりの威力があることはある、だが物悲しい余韻を残しながら心の奥底を滴り落ちていくメロディが特に絶品だ。幻想的かつドラマティックに、また大陸的なスケール感と北欧の空気を持ち込んだアトモスフェリックなブラックは、まるで狼と妖精が同居しているかのような世界観を醸し出している。

 どこまでも儚げに揺れる蒼白い炎が眼前を照らす、幽玄の世界がここに存在する。ブラックメタル界隈に留まらず歴史的な作品として評価されるべき一枚。全5曲で約35分という時間でここまでの表現力を発揮するGalmのセンスは半端じゃない。既にこの頃からGarmの比類なき創造力と前衛性は、究極ともいえる美を手にしていたといっても過言ではないだろう。

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