Whirr ‐‐Review‐‐

元Deafheavenのギタリストを擁するカルフォルニア州はオークランドのインディ・ギターポップ/シューゲイザー・バンド。

レビュー作品

> Around > Pipe Dreams > Distressor


Around

Around(2013)

 国内盤もリリースされた1stフルアルバム『Pipe Dreams』に引き続き、約1年3カ月ぶりとなる新音源は4曲入りのEP作品。ヴォーカルの女子は、また新しい人に代わってしまったみたいで、本作では3代目(でいいのかな?)のKristina Esfandiariが務めている。作風もPains~等に接近する様な瑞々しい蒼い疾走感のある形では無くて、1st EP『Distressor』期のように、スロウダイヴ風の幽玄でドリーミーなシューゲイザーを聴かせてくれている。全方位に拡散する甘美な音の洪水、そしてあまりにも儚い女性ヴォーカルが折り重なる音像は、シューゲイズ・ファンへの感興をそそるものだろう。ひたすらに物悲しくダークな雰囲気に支配されている#1「Drain」から、仄暗い闇からうっすらとした光をもたらすようなクリスティーナのヴォーカルに安らぎを覚える#2「Swoon」の流れは非常に美しいものがある。霧の様な音像がもたらす恍惚と陶酔。もろにスロウダイヴ直系ではあるが、今時のインディ系ギター・ポップの流れにも迎合した形の1stフルの方向性が好みでは無かった人に応えている内容であると思う。正直に言えば、過去に回帰したというだけで特に目新しい要素は無いが、以前よりもダークで憂いを帯びた感じに少し惹かれる点はある。甘く優しく世界を変えていく#4「Around」で締めくくれられる全4曲28分、ここから彼等がどう進んでいくのか注目したい。


Pipe Dreams

Pipe Dreams(2012)

    なぜかTee Pee Recordsから発売された1stフルアルバム。吹き抜ける春風のように温かく爽快な疾走感、青春の甘酸っぱい響き、そして轟音ノイズによる甘美な陶酔感。ペインズ~やリンゴ・デススターに続くシューゲイザー新世代の挑戦状である。胸がキュンとなるような時が幾度となく訪れるそのサウンドは、前EPに引き続いて好調だ。しかも、ギター・ポップやノイズ・ポップ、USオルタナティヴといった要素が増したことで、多方面にアピールできる作品に仕上がっている。ミドルテンポの曲が中心だった前作よりも蒼く瑞々しい疾走感のある曲が増えているのは、本作の特徴。アレックスの浮遊する淡く柔らかいヴォーカル、可憐なメロディに彩られていて、間口を広げている。7inchシングルとして先行で発表の#2「Junebouvier」を筆頭に、この甘く蒼く眩い音の洪水には抗うことはできそうもない。もちろん、前作での幻想的なサウンド・デザインも受け継がれていて、「Flashback」や「Hide」のような轟音ノイズによる白昼夢は、90年代のシューゲイザー・バンドが浮かんでくる人も多いはず。シューゲイザーに根差してはいるが、あらゆる方面に揺さぶりをかけるような楽曲を取りそろえた本作は、上々のデビュー作品である。


distressor

Distressor(2011)

   またしても胸キュンなインディ・ギターポップ/シューゲイザー・バンドが出てきたなあと嬉しくなるカリフォルニアのWhirrの1st EP。ここのギタリストの一人はDeafheavenの人だったりするのが驚くところ。

 だが、意識が埋もれ行く轟音ノイズと女性Vo.Byanca Munoz(現在はアレックスにメンバーチェンジ)の儚くて愛らしい歌声、メランコリックなメロディのどれもが品質が高く、Pains~やRingo Deathstarrのファンには間違いなくクリティカル・ヒットするほどのクオリティを誇る。でも印象としては、スロウダイヴ寄りの甘美なハーモニーと幽玄なサウンドによって静かに深く堕ちていく感覚が強いかな。SE的な柔らかなギター・インスト#1に続いての#2「Leave」では、3本のギターが織り成す幻想的な音のレイヤーと甘い声にとろけてしまう。そして、より甘美に落とし込まれた音像#3「Blue」へと繋がっていく。短いが、ここまででもかなりの陶酔度。本作は基本的にはミドルテンポの曲調が多く、押し寄せるノイズギターの奔流と女性Voによるドリーミーに組み立てられていて、輪郭をぼかして独特の浮遊感とメランコリアを形成している。もちろん、シューゲイザーらしく男女Voの掛け合いもあるし、本作随一の疾走感を持って青春を駆け抜ける#5ではパッと視界が開けていく。この曲からはPainsにも負けないキラキラ感を味わえるだろう。どこか儚く寂寥感を残していくような#7「Sandy」の終わりもまた何かを予感させる。インディ・ファンのみならずチェックして欲しい逸材。このバンドがヒットするのはおそらく時間の問題だろう。

 本作品発売後の2011年9月にあのTee Pee Recordsから2ndシングル『June』を発表(何であそこから出たの!?)。そこに収録されている「Junebouvier」の甘酸っぱい疾走シューゲ/ギターポップっぷりにはトキメキを覚えざるを得ないので、合わせてbandcampでチェックしておきましょう。

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