【アルバム紹介】Wires Under Tension『Light Science』

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アルバム紹介

Light Science(2010)

   Slow SixのヴァイオリニストでありコンポーザーであるChristopher、Slow SixのドラマーのTheo Metzによるポストロック・ユニットのデビュー作。

 Slow Sixはポスト・クラシカルな趣があり、静けさと美しさが蒼白い幽玄な炎を紡ぎ出していますが、こちらのユニットでは自由度は高く、より攻撃的な姿勢を打ち出しています。

 基本的にはヴァイオリンのだ旋律が大空を駆け、多彩なリズムパターンの精微なドラムが曲の中でぶつかり合う。そこにカラフルな色と温かみを加味する鉄琴や電子音が絡むことで、より立体感のある作風に仕上げています。

 トランペットが入る事でジャジーな佇まいもみせているしのもポイント。曲調は落ち着いていますが、時に雄々しいダイナミズムがきっちりと感じられるし、反復の中で練り上げられる美しさもまた気品高い。

 特にバンドのアイデアが存分に花開いた9分超の#5は、ヴァイオリンや鉄琴の音色が厳かなリズムに乗せられながら中盤で圧倒的な昂揚感を運び、そこからゆるやかに叙情的なエピローグを紡ぐ佳曲。

 ストリングスが追加されたTortoise(トータス)などと表現されていたりもしますが、Slow Sixから一歩足を踏み出した先にこんな前衛的な世界が広がるとはと驚きを与える作品です。

お読みいただきありがとうございました!
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