2004年1月~2017年7月まで13年間、音楽サイトとして運用。4年ぶりに形を変え、2021年6月より再始動。

饒舌な語り口と愛のスパーク パク・サンヨン『大都会の愛し方』

光と影が渦巻く大都市ソウル。最低賃金のバイトをしながら、くずみたいな文章を書きなぐって暮らす“俺”は、どれだけ派手に遊んでも、消せない孤独を抱えている。そんな日々のなか、梨泰院のクラブでバーテンダーとして働くギュホと出会い、愛を分かちあう。しかし“俺”には、人に言えない“秘密”がある…。(「大都会の愛し方」)喧騒と寂しさにあふれる大都会で繰り広げられる多様な愛の形。さまざまに交差する出会いと別れを切なく軽快に描く。韓国で新時代の文学として大きな話題を呼んだベストセラー連作小説。

 パク・サンヨン氏著、オ・ヨンア氏訳『大都会の愛し方』。前投稿に引き続き韓国文学。こちらもTBSラジオ『アフター6ジャンクション』で翻訳家の斎藤真理子さんがオススメしていた1冊です。

 主にはソウルを舞台にしたクィア文学、ゲイの恋愛を描いた4つの連作短編集。作家+他の仕事で生計を立てる主人公・ヨン。貞操観念が希薄で、自由奔放に相手を見つけては寝まくっている。収録された中では、ルームメイトの女性・ジェヒとのやり取りや友情を描くひとつめの「ジェヒ」だけは毛色が違う。あとの3篇はヨンが恋をした二人の男性との恋愛をロマンチックでもあり、生々しくも感じる語り口で綴る。背景にある韓国社会も手堅くフォロー。兵役やキリスト教との関わりなんかも書いてる。そして、カイリー・ミノーグの曲を本著のテーマソングのように登場させ、アクセントとして機能。 

 マイノリティの苦しさみたいなことよりも、恋愛スパーク状態の語りがやたらと饒舌で、それが終わりし時の悲哀と喪失も見事に描いてる。長い時を経ても消えない想い人への執着がまた儚さを醸し出す。その記憶や経験を頼りに人生を進めていくのが、きっと美しいことなのでしょう。

俺にとって愛は、めいっぱい燃え上がり抑えきれぬままそれに捕らわれて、やっと相手から抜け出せたときに最も醜悪に変質してしまう刹那の状態に過ぎなかった(p138)

目次
閉じる