死と雨 フリオ・リャマサーレス『黄色い雨』を読む

時間はいつもさまざまな傷を消し去る。時間は執拗に降りつづく黄色い雨であり、それが燃えさかる火を少しずつ消し去って行く(P59)

名著を読んだという強い気持ちにさせられる。スペインの詩人&作家であるフリオ・リャマサーレス氏による『黄色い雨』。本著は表題作に加え、短篇「遮断機のない踏切」「不滅の小説」の訳し下し二篇を収録した文庫オリジナル。

スペインの山奥にある廃村を舞台に、ひとり残されて暮らす男の独白が延々と続く。村人はひとり残らず去り、男は妻と犬と残される。だが、妻は寂しさに耐えられずに自死。それ以降は自身が抱える孤独、近いうちにある死を真正面に捉えながら、朽ちていく村を見つめ続ける。その滅びゆく風景と比例するように老いていく自分。それに男の存在を圧倒的に矮小化していく自然の描写。

孤独に抗いながらも、やがて肉体と精神が地に還っていくことに諦めを覚える。死の雰囲気に支配される中で、詩情豊かな文章が消滅の美しさを浮かび上がらせている。滅びゆく、朽ちていくものに美を見出す。そして、圧倒的な孤独をこれほどまでに美しく描いた作品を私は知らない。

死が私の記憶と目を奪い取っても、何一つ変わりはしないだろう。そうなっても私の記憶と目は夜と肉体を越えて、過去を思い出し、ものを見つづけるだろう(p141)

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