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正常の変容 村田沙耶香『消滅世界』を読む

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セックスではなく人工授精で、子どもを産むことが定着した世界。そこでは、夫婦間の性行為は「近親相姦」とタブー視され、「両親が愛し合った末」に生まれた雨音は、母親に嫌悪を抱いていた。清潔な結婚生活を送り、夫以外のヒトやキャラクターと恋愛を重ねる雨音。だがその“正常”な日々は、夫と移住した実験都市・楽園で一変する…日本の未来を予言する傑作長篇。

 単行本時に読んでますが、文庫化されたのをようやく再読。10人産んだら1人殺せるというセンセーショナルな『殺人出産』後の作品ですが、こちらは常識をハンマーで殴り倒していきます。

 世の中は人工授精が当たり前となり、夫婦間の性行為は近視相姦となり、夫婦は夫婦であってもそれぞれに家の外に別の恋人をつくる(その行為自体をお互いに応援するのが正常なこと)。実験都市へといけば男女問わない人工授精が行われ、生まれた子どもは一元管理されて誰それの血筋の子とはならず、名前も戸籍もなく”子供ちゃん”として地域全体で育てられる。そして決まった母親はなく、地域の成人全てが”おかあさん”として子供ちゃんの成長を促していく。

 最初に読んだときはめちゃくちゃ衝撃的でしたが、読み返してもその衝撃は衰えず。恋は無くならずとも、結婚や出産や家族は今この世界にあるものとは、まったく別のものに変わってしまっている。個は全て人類のものだと均一化されていくのに恐怖。しかしながらそれが極めて合理的にも思えたり。正しさは世界とともに変化する。

正常ほど不気味な発狂はない。だって、狂っているのに、こんなにも正しいのだから(p248)

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