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人生のピークとはどこか。 角田光代『銀の夜』を読む

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 読んでた時にスマホやSNSという単語が出てこないので舞台は2000年代だとは思っていたが、あとがきによると、書かれたのが2004〜2005年頃だという。その原稿が令和になって突然、見つかった。角田さんは最初、今に合わせて書き直そうとしたそうだけど、登場人物たちがまるっきり変わってしまうので、”なおせない”となった。15年経って物語に入れないというのも大きく、そのまま出版する形をとったそうだ。

 ストーリーは、高校生の時に3人組ガールズ・バンドとして少しだけ脚光を浴びた少女たち(ちづる、伊都子、麻友美)。それから20年近く経ち、35歳になった彼女たちを追ったもの。そのバンドでは大人によってプロデュースされ、そこそこの商品価値と輝きを得た。大学生となる年齢には人気が無くなって解散したが、3人はその後も交流を続けている。

 その頃の輝きを忘れられない者がいて、それが恥だったと思う者がいて、そんなこともあったねえと他人事になってる者がいる。2人が結婚し、1人が独身。夫の浮気をやり過ごすちづる、自分の果たせなかった事を娘に押し付ける麻友美、世間的に有名な母の呪縛に囚われている伊都子。各々に事情は抱えている。日常を漂流し、平凡に埋没。それでも、生きる意味や手応えを模索し続ける。今の自分に満足なんて絶対にないから。

 人生のピークとはどこか。そもそも、それがあったと言えるだろうか。僕なんかは中学生の頃がそうで、あとは余生みたいになってしまってる。情けない人生です。だから、この主人公たちと性別は違うが、少しだけ理解できる部分はある。現在は、本作の3人と同じ35歳ですしね。それに他者から認められたいという思いは、何歳になっても消えることはない。立派よりも自分らしく、その姿勢が何よりも伝わる。

自分の思うままに生きた彼女は、死の瞬間だけは自分のものにできなかった。でも、もし私たちが手に入れるべきそれぞれの人生というものがあるとしたら、それはきっと、そんなようなことなのではないだろうか。いつも何かが思うようにならず、手に入れたと思ったそばから失っていくようなもの(P290)

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