わたしより平凡な人生であれ 角田光代『平凡』を読む

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妻に離婚を切り出され取り乱す夫と、その心に甦る幼い日の記憶(「月が笑う」)。人気料理研究家になったかつての親友・春花が、訪れた火災現場跡で主婦の紀美子にした意外な頼みごと(「平凡」)。飼い猫探しに親身に付き添うおばさんが、庭子に語った息子とおにぎりの話(「どこかべつのところで」)。人生のわかれ道をゆき過ぎてなお、選ばなかった「もし」に心揺れる人々を見つめる六つの物語。

 だれしもが経験しているし、思ったことがあるだろう「あの時、ああしていれば人生違ったのかな」と考えさせる6つの短編集。そりゃあもちろん僕にもある。後悔の連続。選択、振り返っても正しかったかどうかはわからない。ただ、歳を重ねて思うのは、もっともっと行動しておく必要があったということが強いかな。

 でも、いくつかある人生の岐路で、別の選択肢を選んでいたとしても大きな波、ドラマチックな出来事があったとも思えなかったり。結局、自分はそんなんだろうなあという諦念に至るかな。なんだかんだで人生に正解も不正解もなく、自分が選んできたものが最善だったと思って先を生きていくしかない。それに未来はまだ変えられる。その結果によっては過去自体が違った意味合いを持つようになる。

 印象に残ったのは表題作の「平凡」。ある女性が気に入らない人間には不幸を望むという。どれぐらいの不幸かというと「ど平凡』。何も起こらない人生を送るように呪う。起伏なんてものがない直線だけの人生であって。とにかく「私より平凡でいて」を願うってのはわからないでもない気はします。

もうひとつの人生なんかないよ。きっとそんなものはないよ。自分の人生らしきものから、いかなる意味でも私たちは出ることはできないよ。私たちがあるのは、今、とそれ以外、だけだ。(p49)

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