多様化・選択肢過多の時代の判断基準 朝井リョウ『スター』を読む

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 スターのくだりはあるにせよ、ものづくり・作品づくりのアプローチや価値観についてが肝となる一作です。大学時代に共作した映画がある映画祭でグランプリを獲得。その2人(尚吾と絋)が各々のやり方で映画監督・映像作家として奮闘する。

 尚吾は有名映画監督の監督補助として、鉱はyoutubeチャンネルやネット番組などの編集として活動。時間をかけて入魂の一本を創り上げる。かたや動画投稿の特性を活かしてフットワークよく動画をアップし続ける。そのような道を選んだとはいえ、進化し続ける世の中。プラットフォームが増え、アプローチの仕方が増え、創る側も観る側も多様化。選択肢過多だからこそ、今の自分は正しいのか?と2人ともに思い悩む。

 そんな2人に対しては様々な人が様々な事を言っていく。それこそ映画は映画館で観てこそという人がいれば、本気の作品は重過ぎてyoutubeがちょうどいいとか。今のは観る側の話だが、創る側の話としてもクオリティについて、アプローチについて多く意見が出てくる。視聴者を飽きさせないために、質はそこそこでも毎日動画を出すのが重要と言えば、片方は本物を産むためにアイデアや時間を妥協なくつぎ込んだり。

 そのどれもが間違いではない。誰もが発信者となれ、かつ多様化する世においては正解がどこにあるのかは、やはり自分の信念で決めていく他ない。それでも情報とコンテンツ量は加速度的に増え、消費スピードも上がり続けていく未来ははっきりしている。

 創作と消費。発信と受信。細分化されていく世界は、それこそオンラインサロンの集合体みたいになると著者は記す。今はいろんな欲求に応える発信があるからこそ、自分自身の判断基準を持って選び取っていく必要がある。”誰かにとっての質と価値は、もう、その人以外には判断できない(p372)”というように。流石の朝井リョウ作品。

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