いつもよりユーモラス 村田沙耶香『丸の内魔法少女ミラクリーナ』を読む

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36歳のOL・茅ヶ崎リナは、オフィスで降りかかってくる無理難題も、何のその。魔法のコンパクトで「魔法少女ミラクリーナ」に“変身”し、日々を乗り切っている。だがひょんなことから、親友の恋人であるモラハラ男と魔法少女ごっこをするはめになり…ポップな出だしが一転、強烈な皮肉とパンチの効いた結末を迎える表題作ほか、初恋を忘れられない大学生が、初恋の相手を期間限定で監禁する「秘密の花園」など、さまざまな“世界”との向き合い方を描く、衝撃の4篇。2013年作『丸の内魔法少女ミラクリーナ』『秘密の花園』、2014年作『無性教室』、2019年作『変容』。

 表題作を読んでいるときは笑えてしょうがなかった。子どものころに変身していた魔法少女に、コンパクトを使って30代半ばになっても変身し続けるリナ。ストレスとそうやって向き合ってるからか、仕事は順調で後輩にも慕われる。そんな最中、かつて一緒に変身ごっこしていた友人の女性・レイコが結婚相手である彼氏・正志とうまくいってないと知る。正志がいろいろと悪いということがわかり、罰ゲームのつもりで彼とリナは一緒に変身ごっこをすることになるが、それが発展して街中を正義のパトロールをするようになり・・・。

 予想以上に笑いのアクセル踏みまくりで、読んでるときはニヤニヤしてしまった。芸人が考えそうなコントレベルじゃないか。それでも中二病で紡いだリナとレイコの友情は末永く。そこから一気に落とす『秘密の花園』。女子大生がかつての初恋相手の男性を監禁するのだが、ただ単に彼が恋しいからという理由にとどまらず、本当の理由がある。

 村田さんらしいと思うのが『無性教室』と『変容』。『無性教室』は、性別が禁じられた学校を描いたもので、性別のない教室で過ごす何人かの生徒を描いている。体系や見た目を均一化してわからなくはしているものの、男性であるのか女性であるのかわかる人もいるし、本当にわからない人もいる。さらには性別なんてないとして生きていこうとする人間もいる。それでも他人がどちらかは気になるわけで。学校を出れば、もちろん性別のある世界に戻るのだが、性別よりもこの人だからという友情や愛情への拘りを感じさせる描き方。のちの作品にも繋がっていく世界観がある。

 『変容』は本作中では一番新しい2019年作。若者を中心に「怒り」の感情が無くなった世界の表現。とはいえ、書かれているのは世代ごとの人間の性格のロールモデルみたいなものがあるということ。若者はあまり怒らなくなったからか、今の20代はこの性格がスタンダードです、30代、40代はこうでしたというように、ファッションの流行のように性格だって流行の型があると示しているのが新鮮でした。さすがに村田さんの作品らしく、今の常識が正しいのかと振り回す力を感じる。

性別をいくら奪われても、私たちは恋をする。恋は性別の中にあるわけじゃないからだ(P141:無性教室)

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