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生き辛さを抱え、境界線を越え 李琴峰『ポラリスが降り注ぐ夜』を読む

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 李琴峰さんの『ポラリスが降り注ぐ夜』を読み終えました。新宿2丁目の女性専用バー「ポラリス」を舞台に、日中台の国境を越えて様々なセクシャル・マイノリティを持つ女性7人の物語が描かれる。

 LGBTを扱った作品は小説にしろ映画にしろ、いろいろ触れてはきましたが、ここまで多様性をもって書かれた作品は初めてかも。アセクシャル、パンセクシャルなど聞いたことがなかった言葉が出てくるが、そういったジャンル分け/線引きに救われる人間もいれば、そうではないと拒む人間もいたり。女性が女性を愛するということを主に捉えた中で、悪いことではないはずなのにその生き辛さや苦しみを描き、自らのアイデンティティと対峙する。男女という最も単純な区分けの中で、そこからはみだしてしまう人たちの疎外感は想像以上のものであるのだと。

 自分が印象に残っているのは、第五章「深い縦穴」の終盤における香凛と路上人生相談屋の男とのやり取り。人間が自分自身を変えることについて考察する中、男がある学者の言葉を引用して、香凛がますます思考の迷路に陥っていく。答えなんて簡単に出るものではないが、それでも吹っ切れて前へと進む。

 そして、第六章の「五つの災い」。ある男性が女性となっていくストーリーですが、男性だけども女性として見られないことへの苦悩。時を経て見た目も戸籍も含めて完全に女性になったものの、その新生活においての元男性であることへの苦悩。両方が本章では十二分に伝わる。

歴史を知るのは郷愁に浸るためではなく、自分のよって立つところを確認するためである。それが確認できれば、今ここにいる自分の存在にも意味が見出せる(p259)

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