苦悩と救いが赤裸々に 金原ひとみ『パリの砂漠、東京の蜃気楼』を読む

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一歳と四歳の娘と始めたパリでの母子生活。
近づく死の影から逃れるための突然の帰国。
夫との断絶の中、フェスと仕事に追われる東京の混迷する日々……。
生きることの孤独と苦悩を綴った著者初のエッセイ集。

 金原ひとみさん『パリの砂漠、東京の蜃気楼』。6年間暮らしたフランス・パリ、2018年に帰国後の東京。その前後2年間のウェブ連載エッセイをまとめたものが本著。エッセイというよりかは日記であり、日記というよりは日々を通した小説でもある。エッセイというと軽やかでユーモアに富んだ作品の方が多いが、本著は全然違う。金原さんの苦悩が赤裸々に書かれている。

 自身の日常のこと、日々を通した考察等をメインに、娘2人の話、夫や友人とのことが書かれているが、どこへいても映し出されるのは自分が抱える生き辛さ。フランスにいようが、東京にいようが、苦悩に襲われ、どこか孤独が居座った状態は変わらないという。自己嫌悪や憐憫を頻発させるが、それでも恋愛に救われ、音楽に救われ、小説に救われ、彼女は今までやってきた。

 いつも泣きそうで、それでも幸せだったと綴る。自分のことを書いているのに、どこか他者からの視点で書かれているような感じがあり、かと思えば起伏の激しい感情が表現されてもいる。そこに惹かれます。

ぴったりとウェストマークされたワンピースを脱ぎ、この間フェスで買ったバンTに着替えると、私はストロングのプルトップを開け、死なないために音楽を聴き、死なないために小説を書き始めた(p189)

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