消せない痛みが積み重なる 桐野夏生『路上のX』を読む

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幸せな日常を断ち切られ、親に棄てられた女子高生たち。ネグレクト、虐待、DV、レイプ、JKビジネス。かけがえのない魂を傷めながらも、三人の少女は酷薄な大人たちの世界をしなやかに踏み越えていく。最悪な現実と格闘する女子高生たちの肉声を物語に結実させた著者の新たな代表作。

 炙り出すというよりは、ナイフでバッサリ切り開いて痛みの部分をまるごと社会の闇として見せる。行き場のない少女たちの過酷な日常。それを商品化したり、食い物にする主に大人の男性たち。彼女たちが失い、傷ついていく様は読んでいて辛いが、仕方ないよねと許容する社会は未だに変わらない。

 近い内容である畑野智美さんの『神さまを待っている』はもう少し上の年齢の貧困女子を描いていた。本作は高校生から20歳ぐらいまでの女性数名が登場するのだが、この頃に受けた痛みは決して消えることはない。社会全体の在り方を問うような桐野作品。仁藤夢乃さんの解説にもあるが、桐野さんの丹念な取材もあって非常にリアルだ。

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