永遠に抗えないもの 遠野遥『破局』を読む

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 今年頭に文藝賞受賞作となる『改良』を発表。男性が極度に美しさを追い求めていくことを描いたという『改良』を先に読もうとしてたのに、芥川賞受賞という報を聞き、やはりこちらを先に手に取ってしまった(後ほど、改良も読了)。

 就職間近(公務員)の元ラグビー部員、体をかなり鍛え上げている大学4年生の陽介が、元恋人である麻衣子と新彼女の灯(あかり)のもとで揺れ動く。いや、揺れ動いてはいないのか。彼女たちへの執着を見せるけど、それは強すぎる性欲によるもの(性描写はかなり多い)。陽介自身は聡明なスポーツマンで、親のいいつけもしっかりと守る、はたから見たらできた人間。リア充と言えるかは不明だが、唯一といえる親友と大学生活では幾人かの彼女がいたようで、不足のない生活をしている。規律は遵守し、年齢ごとに変わっていく正しいレールの上を外れずに走っている。

 そんな抑圧された日々の中で、女性との交わりが慰めの勝気や解放の虚しさを呼ぶ。その上で自分にしろ、他人にしろ、ものにしろ、機械に思えるぐらいに冷静に観察している。かなり緊迫したラストシーンの描写ですら、自分の状況を置いといて、出来事を正しく冷静にとらえており、そこが不思議。人間味はあるともいえるし、人間味がないともいえる主人公は、読み進めても読者との距離が全く縮まらなさそう。

 彼のような人間でさえも、定期的に押し寄せる抗えない強い欲望と快楽に己を絡めとられる。「私を阻むものは、私自身にほかならない」は終盤にて。破局は確実に忍び寄る。

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