異国の地で惹かれ合うふたり 李琴峰『星月夜』

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あらゆる縛りから逃れたいと願う二人の女性は、異国の地で出会った。両親の反対を押しきり日本で日本語講師の職についた台湾人・柳凝月。新疆ウイグル自治区出身で、日本の大学院を目指す留学生の玉麗吐孜。二人は惹かれ合い恋人同士に。玉麗吐孜の日本語習得を陰で支える柳は、一緒に日本で暮らす将来像を思い描く。しかし玉麗吐孜の心は決まらない。共通の言語を持ち、幾夜も語り合ったはずなのに、柳は玉麗吐孜が背負うものの重さを知らずにいたことに気付く―。今、注目の新日本語文学の旗手が描く、静かな祈りの物語。

 ほしづきよではなく、ほしつきよる。李さんの作品は『ポラリスが降り注ぐ夜』に続いての2作目です。『ポラリス~』は今年上半期に読んだなかで印象的な一冊で、さまざまなセクシャリティを持った人々(主に女性)の愛の形を連作短編でまとめあげており、美しい文体とともに深く響く作品でした。

 『星月夜』は150ページほどの作品で、異国(日本が舞台)で暮らす2人の女性が出会い、惹かれ合う。台湾とウイグル自治区出身というバックグラウンドに、ムスリム、家族からの圧力、異国の地での暮らし、それによる理不尽。読んでいくと各々が持つ苦しみが浮かび上がってくる。それに言葉は美しくはあっても万能ではない。異郷の人が見つめる視点。僕自身にも新鮮な感覚を与えてくれる。

 過去の積み重ねで人間は成り立ち、言葉のやりとりで理解は生まれる。言葉が届かないということは、過去が伝わらないということでもあります(P134)

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