世の中はわかりやすくない 武田砂鉄『わかりやすさの罪』を読む

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“わかりやすさ”の妄信、あるいは猛進が、私たちの社会にどのような影響を及ぼしているのだろうか。「すぐにわかる! 」に頼り続けるメディア、ノウハウを一瞬で伝えたがるビジネス書、「4回泣ける映画」で4回泣く人たち……。「どっち?」との問いに「どっちでもねーよ! 」と答えたくなる機会があまりにも多い日々。私たちはいつだって、どっちでもないはず。納得と共感に溺れる社会で、与えられた選択肢を疑うための一冊。

 武田砂鉄さん『わかりやすさの罪』。朝日新聞出版刊行の『一冊の本』2018年1月号から2020年1月号までに連載されたコラム24本を加筆修正し、書き下ろしを加えたもの。

 わかりやすいことは大切だと教わってきた反面、わかりにくいことはダメだという風潮がある。わかりやすいもの・ことは受け入れやすいし、おそらくは回答としても多くの場合、正しいと捉えられるでしょう。わかりやすいはいろんな意味で都合がいい。山ほどの情報が猛スピードで流れていく現代社会において、世のため人のため明確なものは賞賛される。

 しかしながら、著者はどうして自分にわからせてくれないのか、わかるものだけをわかろうとする人々が多くなったことに警鐘を鳴らす。それこそ”わからないを残す、認めるということが他者の想像や放任や寛容への条件”だとも言う。わからないことや理解できないことは都合が悪いし脅威だから、距離を置く、排除する。選択肢からもともと無かったことにしてしまう。それらに待ったをかける。

著書の中で是枝裕和監督の言葉が引用されていますが、こちらでも紹介。

「世の中ってわかりやすくないよね。わかりやすく語ることが重要ではない。むしろ一見わかりやすいことが実はわかりにくいんだ、ということを伝えていかなければならない(P94)」

 選択肢を疑い、要約で受け入れず、雑に考えることをやめ、正解を欲しない。提示されるわかりやすさよりも、自分で考えることを徹底する。”そもそもあらゆる物事は、そう簡単にわかるものではない(p2)”のだから。

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