ジェンダーに悩む中で貫かれる恋心 塩田武士『氷の仮面』を読む

小学四年の春、同じクラスになった真壁君の顔を見たとき、翔太郎は恋のきらめきと痛みを知った。小さな希望すらも打ち砕かれる人生。仮面の下、ずっと女の子になりたかった―。終章、二十四年後の春に明かされる優しく美しい秘密とは。生きてゆくことの切なさに共感せずにはいられない感動の青春恋愛小説。

 白水翔太郎から白水蘭へと性別を変える。性同一性障害をテーマにした作品だが、読者にどう生きるかを問いかけるものでもあると思う。生まれた時の性別のせいで、恋愛対象のスタートラインにすら立てない。その辛さとやるせなさ。主人公の視点でずっと書かれているため、辛辣さは余計に加速する。

 本作は1990年代半ば辺りから始まっているので、LGBTQの社会での理解は限りなく低い。それこそ、少し前に復活させて問題になった保毛尾田保毛男のことも出てきます。そう考えると、社会的な理解が進んでいる現代は驚くことなのかもしれない。とはいえ、日本はジェンダーギャップ指数が下から数えた方が早いのですが。

 それでも主人公は己の道を歩む。周りの人に助けられながら。女性になれない苦しみ、性転換をして女性になったあとの苦しみ。その両方が丁寧に掬いあげられている。そして、幼き頃からずっと秘めてる片想い。[女になることが私の人生の前半なら、後半は人として何を残すか(p405)]と力強く語る塩田さんにしては珍しい作風ですが、読み応えあります。

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