信じたら世界は歪んだ 今村夏子『星の子』を読む

林ちひろは中学3年生。出生直後から病弱だった娘を救いたい一心で、ちひろの両親は「あやしい宗教」にのめり込んでいき、その信仰は少しずつ家族のかたちを歪めていく…。小川洋子との対談も収録。〔2017年刊に対談を収録〕

 「どんな病気にも効く聖なる水、いらんかね?」 怪しげな団体のそれを手に入れ、病気がちな娘・ちひろの体を洗ったり飲ませたりすることで全快したので、ミラクルな人たちや!とこの団体を信用しきってしまった彼女の両親。その違和を中学3年生の娘・ちひろの視点で描いていく、基本的には家族モノで信仰がテーマとなっています。

 けれども、聖なる水「金星のめぐみ」は家族を清らかに導くかと思えば、崩壊への歩みを進めさせる。「水ごときで世の中の何が変わる、バカじゃん」と両親に嫌気がさし、ちひろの姉は高校生で家から出て行ってしまう。それは洗脳だ!頭おかしい!と親戚のおじさんが水をただの水道水に変えるなどして、購入してる水はただの水だということをわからせようと家族を正しにきたけれど、逆フルボッコで敷居を跨げなくなる。どっからどう見ても異常。それでも信じる者は救われる精神は、決して変わらないから恐ろしいものです。

 そんな両親は公園で、この水をかけ合う儀式を行い続けている。学校の人たちにその光景を見られて噂になってしまい、ちひろは肩身が狭く教室内で過ごすはめに。加えて先生からの残酷な逆襲。学校の先生からあんな仕打ちにあったら、不登校になります。しかしながら、ちひろはいろんなところとの絆を意識しているため、それらの出来事に対して自らアクションを起こしたりはしない。ただ、成り行きを見届けながら、世界が変わることを祈っている。

 映画『花束みたいな恋をした』でフィーチャーされてた今村夏子さん。わたしは子ども視点の作品が多くて、苦手なんですけど、本作はすっと入れました。そして、芦田愛菜さん主演の映画版についての感想はこちらより。映画版、良かったですよ。特に両親が水を懸け合う儀式を大真面目でやっているところなんて、最高です。

あわせて読みたい
あの星に願ったのはなにか。 『星の子』鑑賞 大好きなお父さんとお母さんから愛情たっぷりに育てられたちひろだが、その両親は、病弱だった幼少期のちひろを治した“あやしい宗教”を深く信じていた。中学3年になった...

この記事が気に入ったら
いいね または フォローしてね!

目次
閉じる