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衆愚詰め放題パック、169分地獄巡り。『異端の鳥』鑑賞

2020年、観た中(劇場鑑賞数60本)では一番キツい作品でした。ムゴい作品でした。本作は、ポーランドの作家イェジー・コシンスキが1965年に発表した小説『ペインティッド・バード』を原作に、チェコ出身のバーツラフ・マルホウル監督が11年の歳月をかけて映像化。ベネチア国際映画祭等で退場者が続出するという報が入るほどに、衝撃を与える作品だということでしたが、それが功を奏してか自分の観た回は8割ぐらい埋まっている状態でした。

なんたって冒頭1、2分ぐらいで起こるワンちゃんバーニングで鑑賞者の心折る(もしかしたら犬ではないかもしれないけど)。と同時に覚悟を問います。ここから残りの時間、観続けれるか?お前は生物の本質を知る勇気はあるのかと。人間も動物もこれでもかと暴力に晒される、迫害される、殺される。 とにかく残酷な描写が多く、生と死の狭間を何度も行き交う姿を目にします。それでもなお、生物は生物であるが故に生きるを選択していかなければならないのかと。

ホロコーストから逃れるために疎開した少年が、故郷を求めて行く宛のない旅に出る。9つの章に分かれて、差別と迫害に遭いながらも生きていく彼の姿をモノクロ映像で追っていきます。常に死んでもおかしくないことが連続しておこり、会う人会う人、無慈悲な大人ばかりで搾取と暴力の連鎖。救いがなければ、感動なんてものはまるっきり存在しません。辛いことだけが人生さ、と訴えるかのように。

異物は排除される。それは人間であっても動物であっても同じなのでしょう。原題は『The Painted Bird』ですが、これは同じ種類の鳥だけど、ペンキを塗られて羽根の色を変えられると、群れに帰っても敵とみなされ、集団攻撃にあって撃ち落とされてしまう。タイトルを象徴するそんなシーンが作品の中に登場する。あまりにもわかりやすいシーンですが、こうして見るとハッとします。こんなにも簡単に違う存在は追いやられてしまうんだというのを。

戦時ということは前提にあるかもしれませんが、人間の残忍さと集団心理による暴走は非道なまでの暴力となって表れる。少年を助ける善人は1人か2人ぐらいしか出てきません。恐ろしいまでの現実と恐怖と暴力を、彼はひとりで受け止め続けなければならなかった。不幸な出来事が書かれたスロットマシーンを延々と回し続けているかのよう。あの年齢で100人、1000人クラスの不幸をひとりで味遭わされてしまっている感じです。

衆愚詰め放題パック、169分地獄巡り。これほどずっしりくる映画はなかなかありません。人間の嫌なところ、汚いところしか見せてくれない。そんな中で主人公の少年は、言葉を失えど生きる為に開眼し、人間化していくのだが。人間化していくというのは、おそらく鑑賞すればわかっていただけると思います。前半と後半で彼の行動が明らかに変化していますので。ちなみに宣伝ポスター、実際に登場します。少年が顔だけ出して埋められ、カラスにつつかれているこのシーンが。

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