あの星に願ったのはなにか。 『星の子』鑑賞

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大好きなお父さんとお母さんから愛情たっぷりに育てられたちひろだが、その両親は、病弱だった幼少期のちひろを治した“あやしい宗教”を深く信じていた。中学3年になったちひろは、一目惚れした新任のイケメン先生に、夜の公園で奇妙な儀式をする両親を見られてしまう。そして、彼女の心を大きく揺さぶる事件が起きる――。(C)2020「星の子」製作委員会

何冊か読んでますが、自分には合わない作家である今村夏子さんの唯一、好きな作品の映画化(といっても『むらさきのスカートの女』はまだ読んでない)。再読を済ませて鑑賞に臨みました。

基本的には原作に忠実。とはいえ、幼少期からの時系列順ではなく、主人公・林ちひろが中3になった頃を軸に据えて、小学校時代の出来事が入り込む(ゆうぞうおじさんによる水の入替事件、姉・まーちゃんの家出等)。いつも病気がちの娘が良くなった!これは神様がもたらした奇跡の水や! とある団体が売り出している水『金星のめぐみ』の効能を信じ切ってしまった両親(永瀬正敏&原田知世)。それがきっかけで両親は、その団体にのめり込んでいくことになる。

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しかし、宗教への心酔は一要素ではあるが、基本的には少女の思春期を描いたもの。主演は、やしろ優がモノマネできないぐらいに成長した芦田愛菜さま。授業中だろうと関係なしのお絵かきハッピータイムに、面食いお嬢として君臨。ちひろが見る・感じる・信じる世界。そこに絶対に存在するのが両親。もちろん、両親もちひろに対しては惜しみない愛を注ぐ。その純粋さゆえに何も疑わない両親は、だからこそあちらに歯止めがきかなくなってしまうのだが。

フジロッカー岡田将生が演じる南先生に「狂ってる」と言わしめた、上下・緑のジャージで頭に水を懸け合う儀式は、映像でみるとさらなる威力を持って襲い掛かる。そのシーンを見て笑ってしまったのだが、永瀬さんと原田知世さんが大真面目に演じていることを考えると余計にそうならないか(笑)。

それにしても、小学校までは家族でわりと立派な一軒家に住んでいたのが、ちひろが中3になったころには借家で暮らすようになっている。小説では引っ越し4回となっていたが、お金はどこへ消えていってるのか。小さくなっていく家を映像で目の当たりにすると、かなり衝撃を受ける。食事にしろ服にしろグレードダウンし、下がり続ける生活水準の中で、奇跡をもたらす水である”金星のめぐみ”だけは唯一変わらずに林家のスペシャルワンであり続けてる。

傍から見るとおかしい両親を見て、数年前に家から出ていったまーちゃんは正しいのか、正しくなかったのか。成長するにつれて、いろいろなことを知れるようになったちひろだが、こんな親もう嫌!となることはなく、お互いを信じて一緒に暮らし続けているし、多分これからもそうであろうことを物語は示唆する。片思いの教師に両親を不審者と断罪されようともだ。

そんなわけで映画の方は家族のつながりが、さらに強く感じられる作品になっていたように感じた。特別な場所で流れ星を家族3人で観るラストシーン。信じることに揺らぐちひろは、あの星に何を願ったのか。

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