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偽りの司祭がもたらす赦し 『聖なる犯罪者』鑑賞

過去を偽り聖職者に成り済ました男の宿命に迫る、実話を基にした人間ドラマ。前科者の主人公が、ひょんなことから別人として生きることになる。信心深くて聖職者に憧れる20歳の青年・ダニエル。彼は少年院上がりの前科者ゆえに聖職者になることが本来ならできないはずだった。っが、仮出所後に訪れた田舎町で、司祭のコスプレ道具を持っていたことで神父と勘違いされ(させ)、初のお祈りで人々の心をつかむことに成功。聖職者として町に尽くすようになります。

一方でその町では死者7人を数える交通事故があり、その遺族たちが悲しみにくれていた。ダニエルは人々の心に寄り添いながらも事件の本当の解決に動く。それこそが今を生きる主題かのように。

実話を基に製作された作品であり、神父へのなりすましもポーランドではよくあることだという。それを成功させたのはダニエルの言動です。僕たちは神の視点で映画を観ているから、彼は聖職者でないことを知っているが、教会での彼を見ていると疑いもなく、救いを生み出す司祭に見えてしまう。正解のない職種だけに完コピというのはないけれど、人の心を動かす言葉や振る舞いを上手く使っている。好きこそものの上手なれとはいうが、彼の出自と司祭への憧れと研究によって偽りの聖職者を見事に演じ切っています。

司祭の衣装をまとうと憑りつかれたように聖人モードのトマシュとなり(町では偽名を使っている)となり、服を脱げば懲りずに酒やドラッグでイっちゃってる悪青年のダニエルとなる。その違いを生み出す主演のバルトシュ・ビィエレニアの目と表情は、アップが多いこともあるけれどもインパクト大。

赦しとは何かを信者に語りかける。”赦しとは忘却ではなく、赦しとは愛ではある”というのは本作に出てくる一説。一方で、自身は同じ少年院で過ごした人間に出くわしてしまって全てをバラすと脅される。以降の緊迫感はなかなかで、バラされるという不安の中で聖職者として目覚めた本能が彼を突き動かす。犯罪者であろうと人を救うことができる。ただ、やり方が間違っていただけだ。

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